日々の恐怖 11月11日 校庭を通る人達
生前小学校の教員をしていた祖父が大学生だった頃の話です。
ちなみに場所は宮城県です。
先に学校を卒業して県内の小学校に勤めていた先輩に、
「 年末年始の宿直を代わってほしい。」
と頼まれた祖父は、先輩の頼みをバイト感覚で引き受けました。
その小学校は村外れに建っていて、学校の西の方には村の人たちの作業場(木を切ったりとか何かしていたそうです)があり、
学校を挟んで、東の方には村の人たちの家がありました。
学校の北側に作業場と村の人たちの家をつなぐ道があって、校舎はその道の南側に建っていました。
ところが、日が暮れると村の人たちは、西の作業場から東の自宅まで、校舎の北の道ではなく、
校舎の南側、つまり校庭の中を通って帰っていたそうです。
宿直係の祖父としては校庭に勝手に入られると困るんですが、村の人たちは、
「 北の道は験が悪いから。」
と言って校庭を通りたがります。
祖父は、よく分からないけど仕方がないと思い、
” 西門から入ってきた人影が東門から出ていく姿を確認できたらヨシ。”
と思っていました。
そんな風に何日か過ごして、年が明けました。
その日は雪が降っていて、夜だけど変に明るかったそうです。
いつも通り宿直室で過ごしていた祖父は、東門(村の人たちの家がある方)から西門(作業場がある方)へ抜ける人影を見ました。
いつもと方向が逆なのでおかしいと思ったそうです。
夜に作業場に行くのも変な話ですし、そもそも新年早々です。
不思議に思った祖父が外に出てみると、雪に残っているはずの足跡がついていません。
ぞっとしましたが、まあ敷地から出ていったからいいかと思い、部屋に戻って普通に寝ました。
その後、戻ってきた先輩にその話をしましたが、先輩も、
「 へーそうなんだ。」
という感じで特に変わった反応はなく、無事にバイト代をもらって帰りました。
ところがその数カ月後、先輩から連絡がありました。
先輩は、
「 東から西に行った人の顔は見なかったな?」
と確認してきました。
そして、
「 お前は卒業したら地元(群馬です)に帰って就職するんだろ?
もうこの村には来るなよ。
特に西側の作業場には絶対に行くな。」
と念押ししてきたそうです。
祖父は、
” 言われなくても特に用ないし行かないけど・・・。”
と思ったそうです。
祖父の昔話はそれだけです。
その小学校はとっくに廃校になりました。
私が、
「 昔は宿直の仕事があったんでしょ?
何か怖い話ないの?」
とねだった時にしてくれた話ですが、オチもないし、父も祖父からこの話を聞いたことはないそうです。
なんだかよく分からない話です。
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