日々の恐怖 12月26日 ガキの頃の話 (2)
ただ毎日賽銭にありつけたわけじゃない。
最初に書いた通り寂れた神社だ。
寧ろ賽銭がある方が謎なくらい。
それでも、毎日通えば2週間に1回くらいのペースで数百円の賽銭を見付けることが出来たし、
運が良ければ千円札の時もある。
ガキの頃の話だから曖昧で、賽銭箱があったかどうかは定かではないが、賽銭はいつも箱には
入っていなかったように思う。
無造作に置かれていて、簡単に盗めたと記憶している。
賽銭箱をほじくったり何か道具を使ったり苦労して盗んだ記憶もない。
それも盗みを働いてる罪悪感を薄めた要因のように思う。
そんな日が続いてしばらくは遊び場にも困らず美味しい思いをしていたが、急にパッタリと賽
銭にありつけなくなった。
「 今週は外れや。」
から、
「 今週も外れや。」
に変わり、
「 今月はアカンのちゃう?」
からとうとう、
「 もうアカンな。」
に変わるのは案外早かった。
その頃の小学生にとっての一ヶ月は、大人が長い年月を経て何かを諦める事に等しかった。
「 もう、ここはアカンな。
他の場所探すか、何か他の遊びしようや。」
とリーダー格のSを先頭に、その日は早々に山を下りた。
近くの駄菓子屋で、それぞれ親から貰った小遣いで駄菓子を買い、近くの公園で次なる悪
巧みを練っている中、Sが急に思い出した様に言った。
「 絶対、あのおっさんや!」
突然の言葉に、俺とKとMは、
” どのおっさん・・・・?”
と言わんばかりの顔で、互いの顔を見合わせた。
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