大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 1月13日 ガキの頃の話 (4)

2025-01-13 10:16:39 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 1月13日 ガキの頃の話 (4)






 風邪の割には中々登校してこないSを、俺もKも心配して何度もMに、

「 Sの風邪、大丈夫か?」

と尋ねても、

「 Sは熱と言ってもそんなに高熱じゃないし、咳も出よらん。
元気にしとるけど、体にブツブツが出来て、それが引かんから登校出来んだけ。」

と聞かされた。
 医者に行ったけど伝染病の類いでもないし、蕁麻疹と診断され大事をとって休
んでるとのことだった。
それを聞いて安心した俺とKは、

「 うつる病気じゃないなら会いに行けるし、今日、一旦家帰った後お見舞いに
行く。」

とMに伝えた。
 放課後、見舞いに行くとMから聞かされた通り、Sは元気そうな様子で俺らを
迎えてくれた。

「 悪いな。
大したことないんやけど、おかんが外に出してくれんのや!」

と、ふて腐れたようにベッドに座りながら、俺が親から手渡された差し入れに手
を伸ばすSは、本当に病人なのか疑わしいレベルで、我先にチョコレートケーキ
を選んで食べた。
 しばらく談笑したり漫画を読んだりして楽しみ、そろそろ帰る流れになった
頃、Kが元気付けの意味も込めて、

「 そんなけ元気なら明日には学校来れるやろ?
お前が休みよったら退屈。
はよ、おっさん探し行こう!」

と言ったのを機に、Sが黙り込んだ。
何となく踏み込んでは行けない場所に踏み込んだ気がして、気まずくなった俺た
ちは、早々と切り上げるかの様に、

「 とにかく、早よ治せよ。」

と言い、腰を上げようとした時、

「 チクったやろ?」

とSがボソっと言った。

「 俺が賽銭盗んだの、チクったのお前らか?」

とまた俯きながら呟いた。
俺がKを見ると、Kは頭を横に振り否定のポーズをとった。
 勿論、俺も誰にも話してなどいない。
Mをみると、Mは俯いて黙り込んでいた。
明らかにMが犯人だと分かったが、誰もその場では何もかも云わなかった。
 微妙な空気に耐えられなくなった俺もKも、

「 何のことか分からん。
誰もチクったりせん。
チクったら自分らもグルやのに、そんなアホなことする奴おらん。
気のせいやろ?」

とだけ言い残して、逃げるようにSの家を後にした。







 
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