日々の恐怖 1月22日 ガキの頃の話 (5)
帰り道の途中、どちらかが言うわけでもなく公園に立ち寄り、俺とKはブランコに腰をかけた。
「 Mがチクったんやろ?」
最初に口を切ったのはKだった。
「 何でや?
自分も一緒に居て、Sにお菓子買って貰って食べた癖に。
しかも、Sは兄ちゃんやぞ。」
とKはつづけた。
「 だいたい、誰にチクったんやろ?」
そんな話をしながら何も答えもでず、Mは裏切り者ということだけが延々と繰り返された。
それからしばらくしてSは学校に登校してきたけど、何となく俺もKもあの日以来、SとMに
近寄ることを避けた。
放課後に4人で帰ることも遊ぶこともなく、自然と俺・KとS・Mという組み合わせで別々に
帰る日が続いた。
喧嘩をした訳でもないから、気まずいまま数週間が過ぎた頃、担任から呼び出しをくらった。
体育係だった俺とKが、放課後活動で体育館周りの草むしりをしていた時だった。
最初は掃除サボれてラッキーだったはずが、別室に呼ばれてドアを開いた瞬間にS、Mも呼
び出されたメンバーだと分かると鼓動が跳ね上がるのを感じた。
今更だがSは1学年上。
俺とKは同い年同じクラス。
Mは1学年下。
それぞれの担任が俺たちの前に座り、これから裁判が始まるかのような重々しい空気が流
れていた。
「 お前ら、最近、放課後に悪さしよるんと違うか?」
最初に口を開いたのはSの担任。
俺たちは誰も何も言わず俯いたまま。
「 立ち寄り禁止場所にフラフラ上がって行きよるの見たって学校に連絡があったんやが、どう
じゃ?
お前らか?」
つづいて俺たちの担任が追い打ちをかけて、更に鼓動が早まりながらも一様に黙秘を続けた。
Mの担任は女。
ただ黙ってその場に居たが、圧力だけはヒシヒシと感じるくらいのベテラン女教師だ。
俺たちがいつまで黙秘権を行使できるか見物と言わんばかりにしばらく教師も口を開かないで
いた。
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