日々の恐怖 2月23日 ガキの頃の話 (8)
Sは雨の降る中一人、あの山に出掛けた。
さすがに一人で神社へ近づくのは怖かったらしく、しばらく周りを散策しながら当てもなく山道
を歩いていた。
それらしい家も見つからず、飽きてきて帰宅するために山を降りるはずだった。
いつも通りに山を下れば数分で民家へ繋がるような何てこともない山道を、その日は何故
か違うルートで下った。
このルートも大したことはない。
何度か俺たちも通ったことはあるが、単にたどり着くのが自分たちの住む村の反対側だから遠
回りという理由で滅多に選ばないルートであるだけ。
その別ルートを下ったさきに数件の空き家があることも、俺も含めみんな知っている。
ただ、知らなかったのは、その空き家がSの隠れ家として使われていたこと。
これは俺もK、Mも誰も知らなかった。
その日、中々戻らないSを心配したMがKに電話をかけていた時に、妙にハイテンションな
状態でSが帰宅した。
「 M、ええもん見せてやるから来い!」
と誘われたMは、Kにも来るように言ったがKは、
「 俺が行かないなら行かん。」
と答えたそうだ。
Mは俺にも電話をしたらしいが、俺宅は不在だったのだろう。
連絡が取れなかったことを再度Kに電話すると、
「 それなら、やっぱり行かんとく。」
とKは答えた。
Kによると空き家にはSとMだけで行き、その翌日からSは学校を休み始めたそうだ。
そこまで話しを聞いても俺には全く要領が掴めないでいた。
「 それが何や?
何で、それを俺に隠す必要があったん?
ええもん見付けたって?
何・・・?」
問い詰めた俺にKは言いにくそうに口を噤んだまま下を向いている。
「 そこまで話したんやから話せや!」
と俺が苛立ちをぶつけ渋々Kは、
「 ここからは、後からMから聞かされただけやから・・・・・。」
と続きを話し始めた。
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