一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『残業ゼロの仕事力』

2008-02-25 | 乱読日記

過労死の原因は明らかに過度の残業ですが、正規の勤務時間における仕事の密度をいくら濃くしても、それが過労死につながることは絶対にありません。

トリンプの社長を10年以上にわたってつとめ、「毎日ノー残業デー」にしながら業績を伸ばし続けた吉越浩一郎氏の本『残業ゼロの仕事力』
最近のソフトカバーのビジネス書の例に漏れず、キャッチーなタイトルと読みやすく整理された内容です(一日の通勤時間の往復で読了。多分講演メモをライターが整理したのではないかと。)。

若手ビジネスマンや中間管理職以上に経営者にとって示唆に富む本です。

内容は今の日本の企業の常識には反しますが非常に論理的です。

  • 残業ばかりしていると、一日のうち睡眠時間・通勤時間を除くとほとんど自分のための時間がない。
  • 人生の自由時間でいえば、60歳の定年以後が圧倒的に多い。それをどれだけ豊かに暮らせるかは、働いているうちに自分の人生における関心や優先順位をつけられるかにかかっている。
  • したがって残業は個人の人生にとってマイナスである。
  • 一方残業は会社にとってもホワイトカラーの「効率的に仕事をする能力」をスポイルしているという意味でマイナスである。
  • 残業をなくすには勤務時間内の仕事の効率をギリギリまで引き上げるとともに、社員に「こんな思いをするなら残業なんてしないほうがましだ」と思わせるまで(トリンプでは部門毎に反省会を義務付けたりのボーナス原資を減らした)社長が断固たる決意で踏ん張り続けなければいけない。
  • 人間の仕事のキャパシティは「能力×時間×効率」で決まる。前2者に制約があるのであれば効率を上げるしかない。
  • 効率を上げるには「大きな問題を細分化する」「デッドラインをつくる」ことが大事
  • 優先順位などつけている暇があったら少しでも小さな問題から解決すべき。そこで新たな課題が見つかればその問題に対してデッドラインをつくって解決すればいい。
  • デッドラインは相手を見て決めるのでなく「会社にとって何が正しいか」で決める。
  • 会議には担当は徹底的に吟味したたたき台を持ち寄る(小さな問題に分ければそれは可能)。そうして、ひとつの問題に対して短時間で結論を出すことでひとつの会議でさまざまな意思決定が効率的にできる。そこで新たな問題が明らかになれば、またデッドラインを設定する。
  • 問題が整理されていれば情報の共有や議論は容易で、会社が下すべき結論は短時間でしぼれるはず(「会議は発表会でもなければ、わかりきったことを確認するために行うものでもありません。」)。

著者は強引に進める手法を「ワンマンだ」という批判に対して、つぎのように反論します。

  • ピラミッド組織では情報がトップに行くほど集中するのは当然。
  • その情報を抱え込むのが「ワンマン」(「俺しかわからないのだから黙って俺の言うことを聞け」)
  • 強い「リーダー」は集まってきたすべての情報を部下にオープンにし、さらに決断に至るプロセスまで含めてトップダウンで部下に伝える(「今こういう問題が起きているからこうやって解決するぞ」)。そうすれば反対意見を生み出すことができる。

ではトップが部下と同じ情報しか持っていないのに「俺に従え」と言えるのは

何が会社にとって正しいのかを論理的に考え、なおかつ判断に至るスピードが速く、決断する勇気を持ち、責任を取る覚悟がある。そして、その判断が圧倒的に正しい。
トップは、これらすべての点で組織内の誰よりも秀でていると証明して見せなければならないのです。

つまり、冒頭の「経営者への示唆に富む」という表現は、より正確に言えば「経営をすること」に意義を見つける人には示唆に富むが「経営者であること」に意義を見つける人にはあまり役に立たない、ということですね。

 





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