「関節リウマチ発症に関わる9つの新規遺伝子領域を発見」
この成果は、理化学研究所・東京大学・京都大学・東京女子医科大学およびハーバード大学を中心とする欧米研究グループとの国際共同研究グループによるものだ。
関節リウマチは、関節に炎症が続くことにより関節破壊を起こす自己免疫疾患である。その発症の原因が完全に判明している訳ではないが、免疫系(細菌などから体を防御するシステム)に異常があることは知られている。この異常は、遺伝子異常か、感染した微生物(ウイルス、細菌)の影響か、あるいは両者の組合わせによるものではないかと考えられている。これまで、GWAS(genome-wide association study:ゲノムワイド関連解析)によって疾患発症に関わる遺伝因子が報告されてきたが、個々の遺伝因子が疾患発症に与える影響は非常に小さく、それぞれの研究では明らかにできていない遺伝因子が多くあると考えられてきた。
今回発見したのはリンパ球の活動に作用する”B3GNT2"など9種類の遺伝子である。関節リウマチ患者(9351人)と非患者(3万8575人)の遺伝子を分析し、発症しやすい遺伝子領域を持つ人は病気になる割合が1.1~1.2倍だった。
既に報告されていた36遺伝子領域について再評価した所、新規発見の9領域と合わせて23遺伝子領域が日本人の関節リウマチ発症に関与していることが判った。このうち15領域は欧米人と共通であり、8遺伝子は欧米人の関節リウマチ発症とは関連性が認められなかったとの事、人種差があるかもしれないと研究チームは見ている。
★自己免疫疾患
自己免疫疾患とは、自己が持つウイルス・細菌などの外来からの異物を排除するために働く免疫システムが、様々要因により自己を構成する成分に対しても攻撃(自己免疫反応)して起こる疾患である。関節リウマチが代表例であるが、甲状腺の機能異常によるバセドウ病、1型糖尿病、全身性エリテマトーデスなどもこの疾患である。
★遺伝因子
同一種の生物でも個々のゲノムの塩基配列は多種多様である。その多様さに、病的影響がある場合とない場合があり、後者で1%以上の頻度で存在する遺伝子変異を遺伝子多型と言う。
関節リウマチに関与する遺伝子多型の多くは、疾患者も健常者も普通に保有するありふれた遺伝子多型である。このわずかな違いでも、疾患となるかは環境要因と共に影響すると考えられている。
★関節リウマチの患者数
関節リウマチの患者数は、国内に約50万人と言う(厚生労働省資料より)。
発症の多い世代は30歳代~40歳代で、性別では女性に多い、男性に比べ数倍の発症である。しかし、60歳代からの発症(高齢発症関節リウマチ)も多い、この場合男女の発症率に差はない。15歳未満で発症する場合(若年性関節リウマチ)もある。