大阪大学太陽エネルギー化学研究センターの白石康浩准教授、平井隆之教授らの研究グループは、太陽光照射下、海水と窒素ガスを原料として、常温・常圧下において非常に高いアンモニア合成活性を示す光触媒技術を開発した。本研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版にて日本時間2020年4月3日(金)0時(米国時間4月2日(木))に公開された。
アンモニアは化学肥料の原料として重要な化学物質であるほか、近年では、再生可能エネルギーの貯蔵・輸送を担うエネルギーキャリアとしても注目されている。従来のアンモニア合成は、非常に高い水素圧力と温度下で行われている。これに対して光触媒反応では、太陽光エネルギーにより水と窒素ガスからアンモニアを製造する(1/2N2 + 3/2H2O → NH3 + 3/4O2)ことが原理的には可能であり、省エネルギープロセスとして期待されている。しかし、通常の光触媒では、水の四電子酸化(2H2O → O2 + 4H+ + 4e-)と、N2の六電子還元(N2 + 6H+ + 6e- → 2NH3)を進めることは難しく、新しい反応技術の開発が求められていた。
研究グループでは、ビスマスオキシ塩化物半導体に表面酸素欠陥を形成させたBiOCl-OVs光触媒を、海水などの塩化物イオン(Cl-)を含む水溶液に懸濁させ、窒素ガス流通下で太陽光を照射することにより、太陽エネルギー変換効率0.05%以上と、一般植物による天然光合成(~0.1%)に匹敵する効率でアンモニアを生成する光触媒技術を開発した。金属オキシ塩化物半導体は合成が容易であるため、今回の技術を応用することで、さらに高活性なアンモニア合成光触媒が創製できるほか、豊富な天然資源である海水を用いる人工光合成反応を創製できると期待できる。
研究成果のポイント
〇アンモニアは再生可能エネルギーのエネルギーキャリアとして有望視されているが、多量の水素ガスを原料とする高温・高圧プロセスで合成されており、常温・常圧下、安価な原料からアンモニアを合成する光触媒技術が期待されていた。
〇本研究開発において、常温・常圧下、太陽光エネルギーを用いて、光触媒としては最高レベルのアンモニア合成性能を示す光触媒技術の開発に成功した。
〇ビスマスオキシ塩化物半導体を“海水”に懸濁させて太陽光を照射する方法により、水を電子源として効率よく窒素ガスからアンモニアを合成する光触媒技術を開発した。
〇海水を原料としてアンモニアを合成する小型アンモニア製造デバイスの実現が期待できる。
研究の内容
研究グループではこれまで、光触媒によるアンモニア合成に注目した技術開発を進めてきた。今回、ビスマスオキシ塩化物半導体に表面酸素欠陥を形成させたBiOCl-OVs光触媒を開発した。この粉末光触媒を、海水などの塩化物イオン(Cl-)を含む水溶液に懸濁させ、窒素ガス流通下で太陽光を照射することにより、極めて効率のよいアンモニア合成が可能となることを見出した。
本触媒が紫外線を吸収することにより電子と正孔を生成する。触媒表面の酸素欠陥はN2の還元サイトとして働く(N2 + 6H+ + 6e- → 2NH3)。一方、正孔は、触媒層間のCl-を酸化してCl2を生成する(2Cl- → Cl2 + 2e-)。この反応は、水の酸化反応(2H2O → O2 + 4H+ + 4e-)よりも極めて進行しやすいため、光触媒反応が効率よく進む。生成したCl2は速やかに次亜塩素酸(HClO)となる(Cl2 + H2O - HClO + H+ + Cl-)。生成したHClOは紫外線を吸収することによりO2とCl-に分解される(HClO → 1/2O2 + H+ + Cl-)。これらの一連の反応により、結果的に水の電子がN2還元に使われ、水を電子源とするアンモニア合成が可能になる。正孔による酸化反応により触媒層間のCl-は失われるが、溶液中のCl-がそれを補填することにより構造を維持し、光触媒活性は保たれる。
これらの、①正孔による層間Cl-の酸化、②生成したHClOの光分解、③Cl-の補填による触媒構造の維持、により安定的にアンモニアが生成する。本反応では、海水を反応溶液に用いた場合にも太陽エネルギー変換効率0.05%以上と、一般植物による天然光合成(~0.1%)に匹敵する効率でアンモニアが生成する。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換は古くから研究されているが、水の酸化は極めて進行しにくい反応であり、高効率変換の妨げになっていた。本研究で開発した、①正孔によるオキシ塩化物層間Cl-の酸化、②生成したHClOの光分解、③Cl-の補填による触媒構造の維持、を組み合わせる反応技術を用いれば、水の酸化を促進することが可能である。オキシ塩化物は合成が容易であり、化学的に安定であるため、多くのオキシ塩化物半導体が合成されつつある。そのため、今回の技術を応用することで、さらに高活性なアンモニア合成触媒が創製できるほか、豊富な天然資源である海水を用いる人工光合成反応を創製できると期待できる。
◆用語説明
〇エネルギーキャリア
エネルギーの輸送・貯蔵のための化学物質。特に、アンモニアや有機ハイドライド、ギ酸、H2O2など、海外など再生可能エネルギーが豊富な地域で得た電気エネルギーを化学的に変換して消費地まで貯蔵・輸送するのに用いられる化学物質を指す。
〇光触媒
光を吸収することにより生ずる正孔と電子により、それぞれ酸化・還元作用を示す物質。代表的な光触媒として、二酸化チタン(TiO2)が知られている。
〇太陽エネルギー変換効率
太陽光または疑似太陽光により照射した光エネルギーのうち、化学エネルギーに変換された割合。
今日は5月3日、憲法記念日。日本の国民の祝日の一つ。国民の祝日に関する法律(祝日法、昭和23年7月20日法律第178号)では「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」ことを趣旨としている。なお、日本国憲法の公布日である11月3日は、文化の日となっている。法案を審議した参議院文化委員会の委員長を務めた山本勇造議員(作家の山本有三)は、「この日は、憲法において、如何なる國もまだやつたことのない戰爭放棄ということを宣言した重大な日でありまして、日本としては、この日は忘れ難い日なので、是非ともこの日は残したい。そうして戰爭放棄をしたということは、全く軍國主義でなくなり、又本当に平和を愛する建前から、あの宣言をしておるのでありますから、この日をそういう意味で、「自由と平和を愛し、文化をすすめる。」、そういう「文化の日」ということに我々は決めたわけなのです。」と説明している。(出典: フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」より)
先日(4月26日)に、”ギョイコウ(御衣黄)”の開花をお知らせした。あれから1週間、そろそろお花も終わりかな。
”ギョイコウ(御衣黄)”の花は花弁数が十数枚(10~15位)の八重咲き。花色の初めは白~淡緑色で、中心に紅色の条線が見える。これが、次第に中心部から赤みが増し(紅変)、散る頃にはかなり赤くなる・・写真を見比べて。花の大きさは数cmであるが、場所・時期により大きさや色合いなどに大きな差があると言う。
ギョイコウ(御衣黄)
学名:Prunus lannesiana cv. Gioiko
バラ科サクラ属
オオシマザクラ系のサトザクラ
落葉高木
開花時期は4月下旬
花色の初めは白~淡緑色、中心に紅色の条線が見える。これが、次第に中心部から赤みが増し(紅変)、散る頃にはかなり赤くなる。
アンモニアは化学肥料の原料として重要な化学物質であるほか、近年では、再生可能エネルギーの貯蔵・輸送を担うエネルギーキャリアとしても注目されている。従来のアンモニア合成は、非常に高い水素圧力と温度下で行われている。これに対して光触媒反応では、太陽光エネルギーにより水と窒素ガスからアンモニアを製造する(1/2N2 + 3/2H2O → NH3 + 3/4O2)ことが原理的には可能であり、省エネルギープロセスとして期待されている。しかし、通常の光触媒では、水の四電子酸化(2H2O → O2 + 4H+ + 4e-)と、N2の六電子還元(N2 + 6H+ + 6e- → 2NH3)を進めることは難しく、新しい反応技術の開発が求められていた。
研究グループでは、ビスマスオキシ塩化物半導体に表面酸素欠陥を形成させたBiOCl-OVs光触媒を、海水などの塩化物イオン(Cl-)を含む水溶液に懸濁させ、窒素ガス流通下で太陽光を照射することにより、太陽エネルギー変換効率0.05%以上と、一般植物による天然光合成(~0.1%)に匹敵する効率でアンモニアを生成する光触媒技術を開発した。金属オキシ塩化物半導体は合成が容易であるため、今回の技術を応用することで、さらに高活性なアンモニア合成光触媒が創製できるほか、豊富な天然資源である海水を用いる人工光合成反応を創製できると期待できる。
研究成果のポイント
〇アンモニアは再生可能エネルギーのエネルギーキャリアとして有望視されているが、多量の水素ガスを原料とする高温・高圧プロセスで合成されており、常温・常圧下、安価な原料からアンモニアを合成する光触媒技術が期待されていた。
〇本研究開発において、常温・常圧下、太陽光エネルギーを用いて、光触媒としては最高レベルのアンモニア合成性能を示す光触媒技術の開発に成功した。
〇ビスマスオキシ塩化物半導体を“海水”に懸濁させて太陽光を照射する方法により、水を電子源として効率よく窒素ガスからアンモニアを合成する光触媒技術を開発した。
〇海水を原料としてアンモニアを合成する小型アンモニア製造デバイスの実現が期待できる。
研究の内容
研究グループではこれまで、光触媒によるアンモニア合成に注目した技術開発を進めてきた。今回、ビスマスオキシ塩化物半導体に表面酸素欠陥を形成させたBiOCl-OVs光触媒を開発した。この粉末光触媒を、海水などの塩化物イオン(Cl-)を含む水溶液に懸濁させ、窒素ガス流通下で太陽光を照射することにより、極めて効率のよいアンモニア合成が可能となることを見出した。
本触媒が紫外線を吸収することにより電子と正孔を生成する。触媒表面の酸素欠陥はN2の還元サイトとして働く(N2 + 6H+ + 6e- → 2NH3)。一方、正孔は、触媒層間のCl-を酸化してCl2を生成する(2Cl- → Cl2 + 2e-)。この反応は、水の酸化反応(2H2O → O2 + 4H+ + 4e-)よりも極めて進行しやすいため、光触媒反応が効率よく進む。生成したCl2は速やかに次亜塩素酸(HClO)となる(Cl2 + H2O - HClO + H+ + Cl-)。生成したHClOは紫外線を吸収することによりO2とCl-に分解される(HClO → 1/2O2 + H+ + Cl-)。これらの一連の反応により、結果的に水の電子がN2還元に使われ、水を電子源とするアンモニア合成が可能になる。正孔による酸化反応により触媒層間のCl-は失われるが、溶液中のCl-がそれを補填することにより構造を維持し、光触媒活性は保たれる。
これらの、①正孔による層間Cl-の酸化、②生成したHClOの光分解、③Cl-の補填による触媒構造の維持、により安定的にアンモニアが生成する。本反応では、海水を反応溶液に用いた場合にも太陽エネルギー変換効率0.05%以上と、一般植物による天然光合成(~0.1%)に匹敵する効率でアンモニアが生成する。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
太陽エネルギーの化学エネルギーへの変換は古くから研究されているが、水の酸化は極めて進行しにくい反応であり、高効率変換の妨げになっていた。本研究で開発した、①正孔によるオキシ塩化物層間Cl-の酸化、②生成したHClOの光分解、③Cl-の補填による触媒構造の維持、を組み合わせる反応技術を用いれば、水の酸化を促進することが可能である。オキシ塩化物は合成が容易であり、化学的に安定であるため、多くのオキシ塩化物半導体が合成されつつある。そのため、今回の技術を応用することで、さらに高活性なアンモニア合成触媒が創製できるほか、豊富な天然資源である海水を用いる人工光合成反応を創製できると期待できる。
◆用語説明
〇エネルギーキャリア
エネルギーの輸送・貯蔵のための化学物質。特に、アンモニアや有機ハイドライド、ギ酸、H2O2など、海外など再生可能エネルギーが豊富な地域で得た電気エネルギーを化学的に変換して消費地まで貯蔵・輸送するのに用いられる化学物質を指す。
〇光触媒
光を吸収することにより生ずる正孔と電子により、それぞれ酸化・還元作用を示す物質。代表的な光触媒として、二酸化チタン(TiO2)が知られている。
〇太陽エネルギー変換効率
太陽光または疑似太陽光により照射した光エネルギーのうち、化学エネルギーに変換された割合。
今日は5月3日、憲法記念日。日本の国民の祝日の一つ。国民の祝日に関する法律(祝日法、昭和23年7月20日法律第178号)では「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」ことを趣旨としている。なお、日本国憲法の公布日である11月3日は、文化の日となっている。法案を審議した参議院文化委員会の委員長を務めた山本勇造議員(作家の山本有三)は、「この日は、憲法において、如何なる國もまだやつたことのない戰爭放棄ということを宣言した重大な日でありまして、日本としては、この日は忘れ難い日なので、是非ともこの日は残したい。そうして戰爭放棄をしたということは、全く軍國主義でなくなり、又本当に平和を愛する建前から、あの宣言をしておるのでありますから、この日をそういう意味で、「自由と平和を愛し、文化をすすめる。」、そういう「文化の日」ということに我々は決めたわけなのです。」と説明している。(出典: フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」より)
先日(4月26日)に、”ギョイコウ(御衣黄)”の開花をお知らせした。あれから1週間、そろそろお花も終わりかな。
”ギョイコウ(御衣黄)”の花は花弁数が十数枚(10~15位)の八重咲き。花色の初めは白~淡緑色で、中心に紅色の条線が見える。これが、次第に中心部から赤みが増し(紅変)、散る頃にはかなり赤くなる・・写真を見比べて。花の大きさは数cmであるが、場所・時期により大きさや色合いなどに大きな差があると言う。
ギョイコウ(御衣黄)
学名:Prunus lannesiana cv. Gioiko
バラ科サクラ属
オオシマザクラ系のサトザクラ
落葉高木
開花時期は4月下旬
花色の初めは白~淡緑色、中心に紅色の条線が見える。これが、次第に中心部から赤みが増し(紅変)、散る頃にはかなり赤くなる。