神戸大学分子フォトサイエンス研究センターの立川貴士准教授のグループは、赤錆の光触媒作用によって太陽光と水から水素を製造する際の効率を飛躍的に高める構造制御技術の開発に成功した。本研究成果は、令和2年4月30日(現地時間)にドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で公開され、表紙デザイン(inside cover)にも採用された。
立川准教授らは、安全・安価・安定で、可視光を幅広く吸収できるヘマタイト(赤錆)のメソ結晶(5nm程度の超微粒子の集合体)を透明電極基板に焼き付けるだけで、極めて高い導電性を有する光触媒電極を作製できることを見出した。この光触媒電極では、光照射によって生成した電子と正孔が速やかに分離すると同時に、粒子表面に正孔が高密度に集まることで水分解のボトルネックである水の酸化反応が高効率に進行することがわかった。
今後は、開発した世界最高性能の光触媒電極をさらに高効率化するとともに、本技術を様々な材料や反応系に適用することで、太陽光水素製造や人工光合成の実用化を産学連携で進めていく。
ポイント
〇10ナノメートル未満の光触媒超微粒子を配向を揃えて集積、焼結することで、粒子内部に酸素空孔注5)を高密度に形成できる。
〇酸素空孔の付与によって光触媒電極の導電性が向上するとともに、粒子表面に大きな電位勾配が生じ、電子と正孔の分離が促進される。
〇同時に多数の正孔が粒子表面に移動し、水を高効率に酸化分解することで、ヘマタイト系電極で世界最高の光水分解性能を達成した。
〇本技術は、太陽光水素製造をはじめ、幅広い用途に向けた光触媒の開発に応用できる。
研究の内容
メソ結晶技術光触媒反応における効率低下の主要因は、光照射によって生成した電子と正孔が基質分子(本研究では水)と反応する前に再結合してしまうことである。立川准教授らは、光触媒の超微粒子を配向を揃えて三次元構造化した「メソ結晶」をソルボサーマル法によって合成し、さらに、メソ結晶を透明電極基板に集積・焼結することで、導電性と水分解性能に優れたメソ結晶光触媒電極を開発した。
光触媒性能と原理チタンを含むヘマタイトメソ結晶を透明電極基板上に塗布し、700℃で加熱することで、メソ結晶光触媒電極を作製した。メソ結晶表面に助触媒を付着させ、アルカリ水溶液中で擬似太陽光を照射したところ、1.23Vの電圧印加の下、5.5mAcm-2の光電流密度で水分解反応が進行することがわかった。これは、光吸収特性とコストの両面において理想的な光触媒材料のひとつであるヘマタイトにおける世界最高性能である。また、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極は、100時間に渡る繰り返し実験においても安定に動作することがわかった。
高効率化の鍵は、メソ結晶を構成する微粒子のサイズである。5nmまで小さくし、粒子同士の接触面積を増やすことで、焼結する際に生成する酸素空孔の量を飛躍的に増やすことができる。それにより、電子密度が飛躍的に増加し、メソ結晶の導電性が大幅に向上する。
電子密度の増大は、メソ結晶表面に大きなバンドの曲がりを形成する。それにより、初期の電荷分離が促進されるとともに、表面に正孔が集まりやすくなる。この効果は超微粒子からなるメソ結晶において最大化され、水分解のボトルネットとされる水の酸化反応が高効率に進行することがわかった。
今後の展開
今回、メソ結晶技術によって効率低下の主要因である再結合損失を大幅に低減することに加え、水の分解反応自体を飛躍的に促進できることがわかった。本技術は、ヘマタイトだけでなく、他の金属酸化物へも適用できると期待される。
今後は、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極の更なる高効率化と太陽光水素製造システムへの導入を産学協働で進めると同時に、人工光合成を含む様々な反応系への応用展開を図っていく。
◆用語解説
〇光触媒
光を照射することにより触媒作用を示す物質。光触媒を基板上に塗布し、電極化したものを光触媒電極といい、光電極とも呼ばれる。本研究では、水を酸化分解し、酸素を生成する反応に光触媒を用いている。
〇ヘマタイト(α-Fe2O3)
酸化鉄のひとつ。ヘマタイトは安全・安価・安定(pH > 3)であるとともに、広域の可視光(約600nm以下)を吸収できる。太陽光エネルギー変換効率の理論上限値は約16%(光電流密度 13mAcm-2)である。
〇メソ結晶
ナノ粒子が規則正しく三次元的に配列した多孔性の構造体。数百ナノメートルからマイクロメートルのサイズで、ナノ粒子間の空隙に由来する2~50ナノメートルの細孔を有する。
〇人工光合成
光合成を人為的に行う技術のこと。太陽光を利用して、地球上に豊富にある水を分解して水素ガスやその他の有用化合物を作ることができる。
〇酸素空孔
結晶格子中の酸素が欠損し、生じた空孔。ヘマタイトでは、酸素空孔が生成すると電気的中性条件を満足させるためにFe3+がFe2+に還元される。
〇光エネルギー変換効率
入射する光子の数に対して、反応に利用された光子の割合。
〇ソルボサーマル法
高温、高圧の溶媒を用いて固体を合成する方法。
〇助触媒
光触媒と組み合わせることで触媒反応を促進する物質。本研究では、酸素生成を促進する助触媒として、リン酸コバルト(Co-Pi)を用いた。
〇バンド
半導体中の電子と正孔が取り得る幅のあるエネルギー準位で、伝導帯と価電子帯がある。伝導帯内の電子密度が増加すると、表面に向かって上向きの湾曲が生じる。
〇フォトコンダクティブAFM
原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて試料の電気的特性をナノスケールで分析する手法。本研究では405nmの波長のLED光を照射しながら個々のメソ結晶粒子上での電流測定を行った。
今日の天気、午前は小雨~曇り、午後から晴れ・・雲がとても多い。気温は、最高気温20℃・最低気温14℃とか。
畑の野菜も元気に成長している。もうじき収穫できそうなのが、春ダイコン・・径数cm程だ。
”絹さや”も花が咲きだしている。白花と赤花だ。
エンドウのうち、サヤを食べるものを総称して”サヤエンドウ(莢豌豆、英:podded pea)”と呼び、”絹さや”のほか”スナップエンドウ””オランダエンドウ””砂糖エンドウ”などがある。”絹さや”は豆が大きくなる前のサヤを食べるのに適した品種である。絹さやを成長させてもスナップエンドウはできないし、スナップエンドウを早採りしても絹さやにはならない。
サヤエンドウ(莢豌豆)
英:podded pea
マメ科エンドウ属
開花・収穫時期は3月~5月頃
原産地は中央アジア~中近東地域
数千年前からあり、古代のエジプト・ローマ・ギリシャでも栽培されている
日本には、インド・中国を経て8~10世紀頃に渡来したとされる
サヤエンドウを食用するようになったのは江戸時代と言われる
立川准教授らは、安全・安価・安定で、可視光を幅広く吸収できるヘマタイト(赤錆)のメソ結晶(5nm程度の超微粒子の集合体)を透明電極基板に焼き付けるだけで、極めて高い導電性を有する光触媒電極を作製できることを見出した。この光触媒電極では、光照射によって生成した電子と正孔が速やかに分離すると同時に、粒子表面に正孔が高密度に集まることで水分解のボトルネックである水の酸化反応が高効率に進行することがわかった。
今後は、開発した世界最高性能の光触媒電極をさらに高効率化するとともに、本技術を様々な材料や反応系に適用することで、太陽光水素製造や人工光合成の実用化を産学連携で進めていく。
ポイント
〇10ナノメートル未満の光触媒超微粒子を配向を揃えて集積、焼結することで、粒子内部に酸素空孔注5)を高密度に形成できる。
〇酸素空孔の付与によって光触媒電極の導電性が向上するとともに、粒子表面に大きな電位勾配が生じ、電子と正孔の分離が促進される。
〇同時に多数の正孔が粒子表面に移動し、水を高効率に酸化分解することで、ヘマタイト系電極で世界最高の光水分解性能を達成した。
〇本技術は、太陽光水素製造をはじめ、幅広い用途に向けた光触媒の開発に応用できる。
研究の内容
メソ結晶技術光触媒反応における効率低下の主要因は、光照射によって生成した電子と正孔が基質分子(本研究では水)と反応する前に再結合してしまうことである。立川准教授らは、光触媒の超微粒子を配向を揃えて三次元構造化した「メソ結晶」をソルボサーマル法によって合成し、さらに、メソ結晶を透明電極基板に集積・焼結することで、導電性と水分解性能に優れたメソ結晶光触媒電極を開発した。
光触媒性能と原理チタンを含むヘマタイトメソ結晶を透明電極基板上に塗布し、700℃で加熱することで、メソ結晶光触媒電極を作製した。メソ結晶表面に助触媒を付着させ、アルカリ水溶液中で擬似太陽光を照射したところ、1.23Vの電圧印加の下、5.5mAcm-2の光電流密度で水分解反応が進行することがわかった。これは、光吸収特性とコストの両面において理想的な光触媒材料のひとつであるヘマタイトにおける世界最高性能である。また、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極は、100時間に渡る繰り返し実験においても安定に動作することがわかった。
高効率化の鍵は、メソ結晶を構成する微粒子のサイズである。5nmまで小さくし、粒子同士の接触面積を増やすことで、焼結する際に生成する酸素空孔の量を飛躍的に増やすことができる。それにより、電子密度が飛躍的に増加し、メソ結晶の導電性が大幅に向上する。
電子密度の増大は、メソ結晶表面に大きなバンドの曲がりを形成する。それにより、初期の電荷分離が促進されるとともに、表面に正孔が集まりやすくなる。この効果は超微粒子からなるメソ結晶において最大化され、水分解のボトルネットとされる水の酸化反応が高効率に進行することがわかった。
今後の展開
今回、メソ結晶技術によって効率低下の主要因である再結合損失を大幅に低減することに加え、水の分解反応自体を飛躍的に促進できることがわかった。本技術は、ヘマタイトだけでなく、他の金属酸化物へも適用できると期待される。
今後は、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極の更なる高効率化と太陽光水素製造システムへの導入を産学協働で進めると同時に、人工光合成を含む様々な反応系への応用展開を図っていく。
◆用語解説
〇光触媒
光を照射することにより触媒作用を示す物質。光触媒を基板上に塗布し、電極化したものを光触媒電極といい、光電極とも呼ばれる。本研究では、水を酸化分解し、酸素を生成する反応に光触媒を用いている。
〇ヘマタイト(α-Fe2O3)
酸化鉄のひとつ。ヘマタイトは安全・安価・安定(pH > 3)であるとともに、広域の可視光(約600nm以下)を吸収できる。太陽光エネルギー変換効率の理論上限値は約16%(光電流密度 13mAcm-2)である。
〇メソ結晶
ナノ粒子が規則正しく三次元的に配列した多孔性の構造体。数百ナノメートルからマイクロメートルのサイズで、ナノ粒子間の空隙に由来する2~50ナノメートルの細孔を有する。
〇人工光合成
光合成を人為的に行う技術のこと。太陽光を利用して、地球上に豊富にある水を分解して水素ガスやその他の有用化合物を作ることができる。
〇酸素空孔
結晶格子中の酸素が欠損し、生じた空孔。ヘマタイトでは、酸素空孔が生成すると電気的中性条件を満足させるためにFe3+がFe2+に還元される。
〇光エネルギー変換効率
入射する光子の数に対して、反応に利用された光子の割合。
〇ソルボサーマル法
高温、高圧の溶媒を用いて固体を合成する方法。
〇助触媒
光触媒と組み合わせることで触媒反応を促進する物質。本研究では、酸素生成を促進する助触媒として、リン酸コバルト(Co-Pi)を用いた。
〇バンド
半導体中の電子と正孔が取り得る幅のあるエネルギー準位で、伝導帯と価電子帯がある。伝導帯内の電子密度が増加すると、表面に向かって上向きの湾曲が生じる。
〇フォトコンダクティブAFM
原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて試料の電気的特性をナノスケールで分析する手法。本研究では405nmの波長のLED光を照射しながら個々のメソ結晶粒子上での電流測定を行った。
今日の天気、午前は小雨~曇り、午後から晴れ・・雲がとても多い。気温は、最高気温20℃・最低気温14℃とか。
畑の野菜も元気に成長している。もうじき収穫できそうなのが、春ダイコン・・径数cm程だ。
”絹さや”も花が咲きだしている。白花と赤花だ。
エンドウのうち、サヤを食べるものを総称して”サヤエンドウ(莢豌豆、英:podded pea)”と呼び、”絹さや”のほか”スナップエンドウ””オランダエンドウ””砂糖エンドウ”などがある。”絹さや”は豆が大きくなる前のサヤを食べるのに適した品種である。絹さやを成長させてもスナップエンドウはできないし、スナップエンドウを早採りしても絹さやにはならない。
サヤエンドウ(莢豌豆)
英:podded pea
マメ科エンドウ属
開花・収穫時期は3月~5月頃
原産地は中央アジア~中近東地域
数千年前からあり、古代のエジプト・ローマ・ギリシャでも栽培されている
日本には、インド・中国を経て8~10世紀頃に渡来したとされる
サヤエンドウを食用するようになったのは江戸時代と言われる