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あいちトリエンナーレ2019への補助金全額不交付のこと

2019年09月27日 21時46分47秒 | 新聞などのニュースから
 9月26日、あぜんとするニュースが飛び込んできた。
 事実関係については、下のほうに、共同通信の本記の一部と、朝日新聞の社会面関連記事の一部を引用している。

 すでに多くの人がつぶやいているように、政府が、内容の気に入らない表現だから
「やっぱりカネだすの、やめるわ」
というのは、事実上の検閲にほかならない。
 今回は、形式上は、手続きの瑕疵を理由にしているようだが、こんな後出しじゃんけんは聞いたことがない。
 「この展示内容は多くの脅迫やしつこい抗議電話にさらされるかもしれません」
なんて、事前に分かるかよ。
 どうみたって、脅迫するほうが悪いのに、脅迫される側の準備不足や手続きミスをあげつらうのは、本末転倒だ。

(筆者は、この構図に、「いじめられる側にも原因がある」という、この国でよくささやかれる言説と似たものを感じて心の底からげんなりする。いじめられる側や差別される側には、そうされてもかまわない理由などなにひとつない)

 しかも、愛知県が「表現の不自由展」再開に向けて、第三者委員会の話し合いを受けて結論を出した翌日という、いやがらせのようなタイミングである。

 10万歩ゆずって、「表現の不自由展」がマズイからカネは出さないーという立場はあるだろう。
 しかしそれは、あいちトリエンナーレ全体のごく一部である。
 ほかにもたくさんの展示や、楽しい子ども向けプログラムや、商店街で毎晩のように行われるコンサートなどもあり、それらを全部ひっくるめて一円も出さないというのは、乱暴にもほどがあるだろう。

 こんなことがまかり通っていけば
「なんか日本政府はクールジャパンとか言ってるみたいだけど、しょせん芸術家も守れない国じゃないの?」
と、欧米の美術館や学識経験者などからは二流国扱いされるのは間違いない。
 はっきり言って、今回の措置は、なにも良いことはない。
 9月26日夜にはさっそく文化庁の前で抗議デモが繰り広げられたことが、朝日新聞に載っていた(ちなみに、朝日新聞は東海版で見る限り、1面トップと大西記者の解説、2面のサイド記事、社会面トップ、社説と、大展開であった。日本の民主主義にとって分水嶺であるという危機意識であろう。これは評価したい)。

 文化庁、というか、文部科学省には、民主主義国ならあたりまえの対応、つまり
「権力は、カネは出すが、内容には口を出さない」
を徹底してもらいたい。


 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が中止になった問題を巡り、文化庁は26日、同芸術祭への補助金約7800万円を交付しないと発表した。愛知県が補助金申請した際、交付審査に必要な情報が文化庁に申告されず、手続き上の不備があったと判断した。

 同庁関係者は取材に対し「展示内容の是非が不交付の理由ではない」と強調。ただ、展示などを巡り予想された「運営を脅かす事態」について、事前に伝えていなかったことを問題視した。

 愛知県の大村秀章知事は同日「まだ文化庁から何の連絡もない」とした上で、不交付が正式決定されれば、国の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出る意向を示した。県庁で記者団の取材に「合理的な理由があるのか係争委でお聞きすることになる」と述べた。



 「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が再開に向けて動き出した直後の26日、文化庁が補助金の全額不交付を決定した。実行委員会会長の大村秀章・愛知県知事は国と法廷闘争に入ることを表明。作品を出展する作家らも、一斉に批判の声をあげた。

 芸術祭の津田大介芸術監督は朝日新聞の取材に、文化庁の補助金交付決定は通常1年以上前で、決定時点で作品内容などは決まっていないことが多いと反論。「事後的に交付決定を覆されたら、企画内容に強烈な自粛効果が生まれる。事後検閲的な効果が強いという点でも、手続き論的にも問題の多い決定」とコメントした。


(この項続く) 


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