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作者・題不詳 (網走市豊栄)を見て、彫刻とアートの永遠性について考えた―寒い連休(4)

2021年05月09日 11時11分34秒 | 街角と道端のアート
(承前)

※7月18日に続報「網走市立豊栄中学校跡の彫刻は「少年の像」だった 2021年7月8日は3カ所(2)」をアップしました。作者や題名などがわかりました。

 この彫刻も、まったく存在を知らず、前を通りがかって偶然見つけました。
 道道102号網走川湯線と道道246号小清水女満別線が合流・重複するあたりにあります。

 このような崩壊途中の彫刻を見たのは初めてのことで、強い衝撃を受けました。






 もし人目に付くところに置かれた彫刻だったり、美術館の所蔵品だったりすれば、破損した作品はほどなく取り下げられて、修復や廃棄などのしかるべき措置がとられることがほとんどでしょう。
 したがって、筆者だけではなく、このような姿のまま放置されている彫刻を目の当たりにした人は、かなり少ないのではないかと思われます。

 「網走市 豊栄中」
で検索すると、廃墟マニアのブログがいくつかヒットします。
 それらによれば、1951年開校、79年閉校となっています。
 現在、校舎は、農機具の置き場などに使われているようでした。
 ちょっと興味深いのは、それらのブログは、何枚も写真を載せているのに、この彫刻に気づいていない(言及していない)ブログがあること。「銅像」と書いていたブログもあるようです。

 これはブロンズ製などではなく、おそらくセメント製でしょう。
 その素材ゆえ早く劣化したものと思われます。

 セメントやコンクリートは、戦後の物資不足の時代に、野外彫刻の素材としてしばしば用いられました。
 傷みも早いことから、ブロンズに鋳造しなおす例もあります。

 台座も傷んで表面が崩れ、銘板も脱落しているため、題名や作者名などはいっさいわかりません。

 網走市の図書館に足を伸ばす機会があれば豊栄中の資料をさがしてみたいと考えていますが、はたしていつになることやら。


 おそらくこの作品は、すわっている人物を表現しているのでしょう。
 繰り返しになりますが、一目見て、強いショックを受けました。
 わたしたちはジャコメッティのつくる細い人物像に驚きを受けますが、あるいは、この彫刻が与える衝撃はそれを上回るのではないでしょうか。

 「芸術は長く人生は短し」
ということばがあります。
 人間の生命には限りがありますが、芸術作品は作者の死を超えて残っていく。
 それを信じて、創作活動にかける芸術家もたくさんいることでしょう。
 しかし、実際には
「芸術もまた短し」
としか言いようのない例があるのです。

 あまりの無残さに、その場をしばらく立ち去ることができませんでした。

 少なくとも、(1)でも触れましたが
「野外彫刻は半永久的に立っている」
という前提は、大いに疑ってかからなくてはいけないと思います。






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