さっきまでBS朝日でエストニアを題材とした番組を放送していた。この国を初めて訪れたのはもう20年以上前の冬だった。当時の大統領主催の晩餐会に招待され、ブラックタイ着用で緊張してタリンにおもむいたことを思い出す。晩餐会自体はどうということはなかったが、厳冬の中、タリン中心部で開かれていた花市が記憶に残っている。物の不足していたあの時代、それでも花を買おうとする人々に強い印象を受けたものだ。そういえば、到着した空港では出迎えの人々が手に花を持っていた。帰ってくる人を迎えるときに花を手にしているとは、何とも風流だ。些細なことかもしれないが、永くロシアの軛の下にあったこの国だったが、こうして文化を維持してきたことはいつまでも忘れられない。
今はEUの加盟国として名実ともに欧州の一員となった。今日の放送で見たタリンの街並みは清潔で豊かだった。20年前のあの時の暗い、寒いタリンは今やハンザ同盟の趣のある古都の装いにすっかり移り変わっていた。