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[FT]加速か失速か 中国の成長占う真逆の指標

2012年04月11日 07時29分03秒 | 経済
 Tシャツ、米アップルの「iPad(アイパッド)」、そして肥料の大半を世界に供給している中国の製造業の健全性は、世界経済の状況を把握したい人にとって極めて重要な指標だ。投資家が各種統計をじっくり調べる中、中国政府とHSBCが公表した生産関連指標がほぼ正反対の状況を描き出し、実態を見えにくくしている。


■欧州、不動産、インフラ投資が鍵




中国の製造業は貿易に大きく依存している(4月10日、青島港に停泊する貨物船)=ロイター

 中国の3月の製造業購買担当者指数(PMI)は53.1に跳ね上がり、この1年で最も高い水準を示した一方、HSBCが算出するPMIは48.3に低下した。この数値が50を超えると工場の生産活動の拡大、50を下回ると縮小を意味する。

 では、中国の製造業はこの一年で最速の勢いで拡大しているのか、それとも以前より速いペースで縮小しているのか? これが、オーストラリアの鉱業会社から中国人経営者に至るまで、誰もが答えを探している疑問だ。

 「中国経済は今、苦戦している」。中国自動車業界のある経営幹部は、外国メディアに話すことで有力な政府高官との関係を損ねたくないとの理由から、匿名を条件にこう語った。「ある程度景気が減速しているのは明白だが、状況が大幅に悪化するかどうかは、3つにかかっている。欧州、(国内の)不動産市場、そして政府がインフラ投資を再び増やすかどうかだ」


■インフラ建設による刺激策に期待


 中国の製造業は2008年に金融危機が勃発した頃ほど輸出型ではないものの、依然として貿易に大きく依存している。多くのエコノミストは、中国にとって最大の輸出市場である欧州の景気後退を、今年の中国の経済成長のリスクと見なしている。


 中国の対欧輸出は11年12月に前年同期比7%増加した後、12年1~2月には同1%減少した。1~2月の輸出全体は前年比6.9%の増加にとどまり、12月の13.4%増から減速した。

 不動産建設への投資は昨年、中国の経済成長の約13%を占めた。だが、政府による厳格な購買制限もあって、不動産の売買件数と価格は落ち込んでおり、新規建設も後に続くと見られる。
 「不動産市場は経済の最も重要な部分で、ほぼすべての産業に影響を与える」。やはり匿名を条件にこう語るのは、中国の大手木綿加工会社のオーナーだ。「アパートの建設や購入がなければ、カーテンやシーツも買ってもらえない。そうなれば当社の事業にとって大打撃だ」

 08年の世界金融危機時に中国の不動産市場が大きく揺らぎ輸出が急減すると、中国政府は景気刺激策を実施し、経済成長を押し上げるために数兆元相当の銀行融資をインフラプロジェクトに回した。道路、空港、鉄道、アパートが中国全土で次々建設され、製造業はすぐに不況から立ち直った。

 中国政府は今年、同じ対策を講じる可能性が高いと見るエコノミストもいる。規模こそ前回より小さいものの、金融政策を緩和し、インフラプロジェクトを通じて成長を刺激するという。


■刺激策に否定的な見解も


 主にこうした景気刺激策への期待から、多くのアナリストが最近、国内総生産(GDP)の成長率予想を上方修正した。11年の成長率が9.2%だったのに対し、今年のアナリストのコンセンサス予想は8~9%だ。

 一方で、政府は今年のGDPの成長率目標を7.5%に引き下げた。目標が8%を下回るのは7年ぶりだ。中国は13日に第1四半期のGDP統計を発表する予定で、世界第2の経済大国は今年1~3月期に前年同期比8.4%成長したと見られている。

 だが、トップクラスの政策立案者と通じた一部のエコノミストは、中国政府には再び経済を刺激する意思も能力もないと話している。

 清華大学の有力経済学者は「中国の経済モデルでは、政府が成長を後押しする唯一の方法は金融政策の緩和とインフラ投資の拡大だが、今年それができるわけがない」と語る。「銃弾はすべて数年前に使い果たされ、インフラ投資はピークを越え、金融政策は既に緩和されている」


■HSBCのデータに信ぴょう性


 多くのアナリストは、今回はHSBCのPMIの方が恐らく公式PMIよりも正確との見方で一致している。政府がPMIを季節変動で調整する方法に問題があるように見える。また、事業会社の利益から電力消費量に至るまで、1~2月のあらゆる統計の弱さは、HSBCが描くより悲観的な状況を裏づけている。

 世界の工場が再び回転速度を上げ、世界経済が本物の回復に向かう兆候を探している人にとって、これは悪い知らせだ。


By Jamil Anderlini


(翻訳協力 JBpress)


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