2003年7月15日
筑波大学附属高校
学校長 海保博之
「時間に負けない生活を送ろう」
夏休みですね。
1年生は、蓼科ですね。蓼科合宿は、附属高校生らしくなるための「通過儀礼」で す。すばらいしい思い出を一杯作ってきてください。
3年生は、勉強、勉強の、45日間の耐久勉強マラソンですね。ペースをくずさず に、完走してください。
2年生は、好きなこと、勉強でもスポーツでも趣味でも、なんでもいいから、ともか く「何かを徹底してやってみる」ことです。
さて、今日の話題は、時間です。 腕時計をはめている人はどれくらいいますか? その時計の原型は、振り子時計です。ホイヘンスによって1656年に発明されたそ うです。
時計のなかった大昔はともかく、 我々は、その「時計時間」にもっぱら従って生活しています。 しかし、時間には、時計時間以外にも、他に3つの時間があり、それにも従って生活 しています。
1つは、「生理的時間」あるいは「脳時間」です。からだの中、頭の中にある時計で すね。1日の周期をはかっています。
2つは、「気象時間」です。地球の自転、太陽の位置による時間ですね。
最後が、「心理的時間」です。心の中で刻まれている時間ですね。
我々の生活は、時計時間を中心にして、生理的時間、気象時間、心理的時間にも微妙 に支配されています。 この4つの時間の間の齟齬(そご)、ずれが大きくなると、生活が快適ではなくなり ます。
たとえば、時差ぼけ。 時計時間と生理的時間、気象時間のずれですね。
たとえば、遅刻。 時計時間と心理的時間のずれですね。心理的時間がゆっくりしすぎているわけですね。
さて、ここで諸君の夏休みと時間との付き合いについて一言。
夏休みは、「時計時間」の強い制約から自由になれます。 寝たいときに寝て、起きたいときに起きる、「生理的時間をベースにした」生活もで きます。 あるいは、お日様が出たら勉強し、夕日が沈んだら、勉強を止める、「気象時間をベ ースにした」生活もあります。昔の農耕民族の生活みたいですね。 逆に、時計時間にあえて縛られてみる生活もあります。30分単位で1日のスケジュ ールを設計し生活してみます。
45日という長い休みです。 そのうちの1週間くらいを、普段ではできない、気象時間や生理的時間や心理的時間 をベースにした生活を楽しんでみるのも、面白いと思います。 ただし、期間限定でやってみること。 45日間、生理的時間ベースの生活はだめです。
要は、時間に負けない強さを身につけることです。 時間に管理されるのではなく、自分で時間を管理できるようになることです。
さて、今日の校長あいさつは、時計時間で何分だったでしょう。 5分以内だと思う人。 心理的時間が短かった人です。 一生懸命に話を聞いてくれた諸君ですね。ありがとう。 なお、正確には、6分23秒でした。
では、9月1日、一段とたくましくなった諸君と会えることを楽しみにして、夏休み前の校長挨拶とします。
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●「金と時間の浪費に終わってし まう人生もあるし、金と時間を自ら生み出す人生もある。」(海保)
●「時間に負ける人、時間にとらわえる人、時間を超える人」(海保)
○時間を守れない人---時間に負ける人
○締切りがこないと仕事をしない人---時間に負ける人
○あとでやるからくせの人---時間に負ける人
○好きなことからする人---時間に負ける人
○できることからする人---時間に負ける人
○一度に一つのことしかできない人---時間に負ける人
○ついでにができない人---時間に負ける人
○いきあたりばったりの人---時間に負ける人
○まわりのことを考えない人---時間に負ける人
○終る時間が決まっていない人---時間に負ける人
○早起きできない人---時間に負ける人
○遅刻する人---時間に負ける人
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○5分前集合する人---時間にとらわれる人
○スケジュールが決まっていないと不安な人---時間にとらわれる人
○時間ばかり気にする人---時間にとらわれる人
○時間に振り回される人---時間にとらわれる人
○いつも忙しいと言っている人---時間にとらわれる人
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○完璧を求める人---時間を越える人
○なんでも引き受ける人---時間を越える人
○人のためになることを優先する人---時間を越える人
○自然のリズムで生活する人---時間を越える人
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