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認知科学の誕生

2010-10-30 | 認知心理学
認知心理学の方法論的な地ならしとしてまず最初に挙げておくべき心理学は、近代心理学の祖・W.ブント、(Wundt;1832-1920)およびその後継者・E.B.ティッチナー(Titchener;1867-1927)の内観心理学であろう。

心の中をのぞき込むこと(内観)で得られデータから心理学を構築しようと試みたが、これは、新生認知心理学の一つの有力な技法として使われることになるプロトコル分析(発話思考法)の誕生への地ならしとなっているからである。  

しかしながら、20世紀前半の心理学は、内観心理学からは大きく軌道修正することになる。  
I.パブロフ(Pavlov;1849-1936)の条件づけの研究に触発された、J.B.ワトソン(1878-1958 )のよる「急進的」行動主義が支配的となってくるからである。  

内観を排除し、観察可能な刺激(S)と反応(R)との関係を定めることにだけ心理学の方法論を厳しく限定することで、心理学を自然科学なみの科学にしようと試みた。この流れは、B.F.スキナー(1904-1990)にまで続くが、その間1930年代に、新行動主義への動きがあり、それが、新生認知心理学への方法論的な基盤を提供することになる。  

その一人がE.C.トールマン(Tolman;1886-1959)である。彼は、生体に内在する目的志向性に着眼して、それを達成するための手段ー目的関係からなる認知地図が頭の中にできあがることをもって学習の成立とする認知論的な概念を提唱した。  
また、C.L.ハル(Hull;1884-1952)は、刺激と行動の間をつなぐ媒介変数を仮定し、それらを駆使した仮説演繹的モデル構築の方法論を提案した、  

両者ともに、S-R関係だけに限定する急進的な行動主義心理学の限界に気づいて、S-「O」ーR関係を想定することで、「心のある」心理学の構築をめざした。これは、まぎれもなく、新生認知心理学のパラダイムそのものであった。
(朝倉心理学講座「認知心理学」より)