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本が読まれない[認知と学習の心理学」

2012-12-07 | 認知心理学
6.4  本が読まれない

● 本が読まれない
本を作る話から一転して読書の話になる。
折しも、「文字・活字文化振興法案」が05年7月20日に国会で成立した。読書週間の初日10月27日を「文字・活字文化の日」と定め、「言語力」を育むための各種施策を実施していこうとするものである。こんな法律を成立させなくてはならないほど、日本の言語環境は貧弱化してしまっているらしい。

コラム「文字・活字文化振興法案の条文を読む」********
 パラドックスなのだが、法律文章は、文章としては最も質が悪いことで定評がある。良い機会なので、ここで、法案の条文の一部(目的)を紹介しておく。

(目的)
第一条 この法律は、文字・活字文化が、人類が長い歴史の中で蓄積してきた知識及び知恵の継承及び向上、豊かな人間性の涵養並びに健全な民主主義の発達に欠くことのできないものであることにかんがみ、文字・活字文化の振興に関する基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、文字・活字文化の振興に関する必要な事項を定めることにより、我が国における文字・活字文化の振興に関する施策の総合的な推進を図り、もって知的で心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与することを目的とする。




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以下、インターネットから統計数値を拾いながら少しこのあたりの事情を調べてみることにする。こんな時のインターネットは強力な道具である。

さて、不思議なことに、本や雑誌の出版の勢いは相変わらずなのである。一日150册もの新刊が発刊され、出版社の数もここ10年ほぼ4千社で横ばい、という具合である。新聞には本や雑誌の広告がない日はない。

ところが、本が読まれなくなったのである。年々、出版総額は下がり続けている。全国の本屋の数も減り続けて9千軒くらいにまで落ち込んでいる。

また、1か月で一冊も本を読まない子供が、小学校で7%、中学校で19%、高校生で43%(全国学校図書館協議会、04年度調べ)、読売新聞調査でも、50%となり、10年前より10%増となっている。

また、00年と03年に行われたOECDの大規模な学力調査によると、日本の高校生1年生の文章読解力が8位から14位に低下しているという結果も出て、教育関係者を不安がらせている。

情報化社会のまっただ中での活字文化のこうした貧弱化は、言語環境をいびつなものにしてしまう。とりわけ本を読まないとどういうことになるかをあらためて確認しておく必要がある。