2部 頭を元気にするキーワード
ふつふつと思いが湧いてくる
楽しい思い出 あかるい未来 空想の世界に遊ぶ
時間を忘れる どんどんうまくなる
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
あ
あるがまま 8-4
い
いいかげん 8-8
お
オープンマインド8-13
おもしろさ 8-18
か
改善マインド 8-23
回想 8-26
き
希望
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希望「希望に生きる者はつねに若い(三木清)」
● 「夜と霧」
哲学者であり心理療法家でもあるフランクル。知る人ぞ知るですが、希望をフランクルから語りはじめるのはやや深刻すぎるかもしれません。
フランクルは、自らのユダヤ人強制収容所での体験「夜と霧」(原題「強制収容所における一心理学者の体験」)から、生きる意味の喪失こそが精神病理の根本原因であるとして、実存分析を提唱しました。
そのフランクルの言葉です。
「希望は、生き延びる見込みなど皆無のときにわたしたちを絶望から踏みとどまらせる、唯一の考えだったのだ」
その過酷な境遇に思いをはせると、この言葉は、強烈です。
そして、希望という言葉の意味の重さにおののきさえ感じてしまいます。
● 絶望から生まれる希望
ポジティブ心理学者・セリグマンは、実は、動物を使った学習性無力感の研究でよく知られていました。
学習性無力感の実験とは、まさにナチス強制収容所の動物版です。
何をしても何も報酬が得られない(そこから脱出できない)状況に長く置かれると、何もしないことを学んでしまうのです。いわば、絶望すること(無力感)を学習してしまうのです。
フランクルは、しかし、人間では、こうした限界状況に置かれてさえもなお、希望を失わない人の存在に注目しました。
「生きる意味」の哲学的な吟味は、フランクルに任せるとして、こうした絶望的な状況でなお希望を失わないための条件って、どんなものかを少し考えてみました。それは、とりもなおさず、希望を持つとはどういうことかにつながるからです。
●希望を持つために
まずは、現状の認識ですね。どこかに現状が変わる兆しを見つけることが必要です。
状況が絶望的であればあるほど困難な作業になりますが、人の現状認識は、基本的に、その人に負うていますから、普段から、ポジティブな認識の習慣を付けておくことがおすすめです。
これについては、別途、すでにあちこちのキーワードでも取り上げましたので、そちらのほうを参照してください。
現状認識にも関連しますが、希望をもつためには、孤立しないことです。
たとえば、冤罪事件。徹底した孤立に追い込み、絶望させ、自白となってしまいます。
これもまた、とても難しい作業になりますね。
冤罪事件は極端です。
普通の生活の中では、ちょっとした努力で自分なりのつながりを維持することは可能です。
たとえば、ITネットワークの活用です。
対人関係の苦手な人でも、多彩なつながりを作り出せます。また、作れるような環境があれこれ用意されています。
やや安易すぎるところもありますが、ないよりはましです。もっとも最近では、やや過剰気味ですし、予想外のつながりに発展してしまうこともありますので、要注意ではありますが。
さらに、現状を少しでもみずからの力で変えることができる状況を作り出すことです。
フランクルの体験記のなかに、みずからの空腹を我慢して、餓死寸前の人にパンを分け与える話があります。自分で状況を作り出すと言っても良いかもしれません。こうしたことがこうした状況でもできるかどうかは、過去の生き様、あるいは、強固な信念の有無が問われるところですね。
養老孟司氏もこう言います。
「毎日がつまらない人は、「このままでいい。世界はいつも同じだ」と決め付けている人なんです。」
自分のささやかな試みは、ユビキタス・ドネーション。つまり「寄付あるところどこでもいつでも寄付を」の心がけです。最近は、これに神社仏閣でのお賽銭も加わっていますので、結構大変です。笑い
なんでもいい。おおげさなことでなくともよい。私利私欲でない小さな行為からはじめる良いと思います。
そして時間的な展望です。
いずれこの過酷な状況は、時間がくれば解消するはずとする確信です。
戦争ならいずれ終わるはずとの確信。冤罪ならいずれは晴れるはずとする確信です。
この「いずれ」が大事ですね。これが、希望を生み出す時間的な展望です。
たぶん、これなら誰にもできそうな感じがしますね。少し考えてみる価値があるかもしれませんので、項をあらためて考えてみたいと思います。
その前にちょっと気になるデータを一つ紹介しておきます。
NHK放送文化研究所が5年ごとにおこなっている調査項目「あなたの目標が現在にあるのか、未来にあるか」の結果です。
1973年と比較すると、2003年では、すべての年代で、「現在を志向する」が「未来を志向する」を上回っているのです。
これでは、なんだか、希望の話を持ち出すのも気が引けてしまいます。
さらに、最近の不況とリストラの嵐の中で。「希望を捨てる勇気」(池田信夫)なんて恐ろしいタイトルの本なども話題をよんでいます。
●自分史づくり
回想は、現在から過去に向けての自分物語作りになります。それと頭の元気作りの話はすでにしました。
これに対して、希望は、現在から未来に向けての自分物語作りになります。
なお、物語づくりとは、フランクルの言う「生きる意味」作りの一つといってよいかもしれません。
回想と希望とが一貫したものになれば言うことなしなのですが、希望が問題になるのは、この一貫性が途切れしまったときです。
青年期の心性の一つに、時間的展望の混乱があります。
いまこの瞬間にすべてをかけてしまい、過去とも未来ともあえて断絶してしまうのです。極端になると、命さえかけてしまう心性です。
普通はそこまではいきません。
時間的な展望の適度の混乱の中で、少しずつ過去、現在、未来の一貫性を作り出していきます。その過程で、未来をにらんだ希望が大事な役割を果たします。
こちらのほうは、心の世界での一貫性の途切れですが、もう一つ、絶望的は状況が自分の力の及ばない外的な力で作り出されてしまうこともあります。
政治的な力、経済的な力によるものがその代表的なものです。
昨今の不況の嵐がどれほどの人々を絶望の淵に追いやったことか。
こうした力に負けないためには、時間的な展望、つまり、現在から過去を回想し、未来を予想してみる、つまり希望を持つ習慣を付けることではないかと思います。
最後に引用2つ。
「現代では、希望は華やかな所にあるのではない。傷つけられた生活のなかで、その場をしっかりと見つめ、その傷をいやす努力のなかにこそ、落ちつきのある堅固な希望が結ばれる。」(今村仁司)
「―――希望のあるところには必ず試練がある。---ただし、希望は数が少なく、おおかた抽象的だが、試練はいやというほどあって、おおかた具象的だーーー」(村上春樹)
ポジティブ心理術トレーニング@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
以下の希望についての名言の中からあなたの心の琴線にふれるものを一つ選んでください。自分は、大学生の頃むさぼり読んだ本の回想から、ロマン・ローランを選びます。
・あなたができること、あるいは夢見られることはなんでも始めよ。
毎日を生きよ。あなたの人生が始まった時のように。
byゲーテ
・希望は人を成功に導く信仰である。希望がなければ何事も成就するものではない。
byヘレン・ケラー
・ 人は望む通りのことが出来るものではない。望む、生きる、それは別々だ。
くよくよするもんじゃない。肝心な事は、望んだり生きたりすることに飽きない事だ。
byロマン・ロラン