① 学力低下
ゆとり教育も成熟社会が生んだ、残念ながらあだ花のようになってしまったが、その帰結のごとく言われるのが、学力低下である。
ざっくり言ってしまえば、低下したのは、答えに早く間違いなく到達できる収束的学力のほうで、ゆとり教育がねらったあれこれの思いを発展させて思考力を鍛える拡散的学力のほうは、向上したとまではいかないが、それほど低下したとは言えないというところではなかったかと思う。
もっとゆとりをもって「ゆとり教育」を行えたなら、拡散的学力のほうの向上へといけたのではないかというややくやしい思いはある。
②規範低下
規範を守らせることに関しては、日本の中高校は、相当なレベルに達しているのではないかと思う。ただ、規範が、自律的ではなく強制によるところが一つの問題なのだと思う。
強制された規範順守は、強制が外れたときに、野放図になってしまう。学校の外では社会生活の基本さえ守れないことになる。自律的な規範順守で期待できる道徳心や利他心の涵養につながらない恐れがあるのが心配である。
③意欲低下
日本人の子どもの学ぶ意欲の低下は、国際比較からもはっきりと示されている。さらに、私立大学教員6万余名(回収率33%の結果 2010年)に行ったアンケートからも、以下のようなデータがだ大学生でも報告されている。
「授業で直面している問題」
基礎学力の不足 43%
自発性の不足 41%
学習意欲の低下 37%
「3低」が、大学生にまで持ち込まれている実情がうかがえる。
学びの動機づけに最も手っ取り早く機能するのは飢えや不安から脱出したいという思いであるが、前述したように、成熟社会では、これは学びの動機づけにはならないのである。なりたい自分になるために学ぶという高度な欲求を学びへと導くのは、思いのほか難しい。
