「連想」
ーー「活発な連想こそ、頭の元気の源」
● あれこれ思いが浮かんで困る
仕事をしようとしたら、デートのことが頭をよぎる。
ゲームをしていたら、明日の仕事のことや、メールが気になる。
連想のことを書こうとしたら、検索のことを思い出す。
ともかく、何かしようとすると、それを邪魔するかのように、あれこれと思いが浮かんできてしまう。できれば、一つのことに集中したい。
これが連想の一つの特徴です。
くだらない連想は浮かんできてほしくないという思いにかられることがありますが、頭の元気という点では、頭がとにもかくにも活動しているわけですから、とりあえずこうしたしょうもない連想でもよしとしなければなりません。
その連想とは、どんなもので、どうすれば有効なものにできるのでしょうか。
● なぜ連想するのか
あなたの頭の中には膨大な知識が貯蔵されています。
連想が発生するのは、これらの膨大な知識が、図に示すように、複雑で多彩なネットワークを形成しているからです。
不動産 マンション お金
投資
情報
不況 金融 貯金
モノ作り 株
家族 失業
子ども 妻
図 頭の中の知識のネットワークのイメージ。色の部分が活性化している。
ある知識要素青)に注意が向けられていても、それとリンクを張っている別の知識が自然に活性化してそちらに注意を向けさせてしまうのです。
たとえば、「不況」のことを考えたとします。すると、それと意味的に近い「失業」も活性化します。ややリンクの強度は弱いものの「モノ作り」も活性化します。それらにつられて「家族」「モノ作り」も活性します。
ありとあらゆる語彙(知識要素)が、その程度はその人が持っている知識によってまちまちですが、どんどん活性化してきて、そちらに注意を向けさせようとします。
これが連想となって頭の中をかけめぐりことになります。
通常は、こうして連想された知識要素を素材にして、統制のされた論理に従った思考をすることになります。
統制された論理的思考は、注意量の制約と自己コントロールのもとでなされます。
ここで注意量の制約という言い方には、解説がいりますね。
注意は頭の働きをコントロールしています。注意をたくさん注げば、頭の働きは活発になります。注意と頭の働きとの間には、ガソリンと自動車のような関係があります。
その注意量には限界があります。その限界のなかで注意は配分されます。
いくらたくさんの知識が活性化しても、そのすべてに注意を払うわけにはいきません。一度には、活性度の高いほうから順にぜいぜい数個程度(図の黄色部分)までしか注意を及ぼすことしかできません。
これが思考の範囲を限定することになります。
さらに、通常の思考の際には、自己コントロールも働きます。
何に注意の焦点を当てるかを自分で決めることができます。とりあえず、必要な知識だけに注意を払い、それらの要素だけ活性度を高めることもできます。
そして、それらの知識要素を論理でつないでいきます。
こうして、連想された知識要素を素材に統制のとれた思考を展開させているのです。
注意
思 考
連想 さ れ た 知識要素
こうしてみると、連想なし、あるいは貧困な連想は、貧困な思考しか生み出さないことがわかりますね。
● 連想って何の役割を果たしているの
一見すると、連想は、邪魔、できればしないほうがよい、と思いがちですが、そんなことはないということがおわかりいただけたと思います。
さらに、連想があるからこそ、という話を少ししておきます。
① 連想は、見方を豊かにしてくれる
目の前になんの変哲もない花があったとします。まさに、「なんの変哲もない花」としか見えないとすれば、それは、あなたの頭の中が「なんの変哲もない」からです。
つまり、連想しようにも、その花に関連する知識がないから、どうしようもないのです。結果として、「なんの変哲もない花」で終わりです。
でも、お隣にいた花好きの花子さんは、どうでしょうか。
花の名前からその種類、その名前の由来、さらには、食べられるかどうかまで、すらすらとさまざまな言葉が出てくるはずです。それこそ豊富な関連知識から発する連想のたまものです。
このように、豊富な知識を使って現実世界の認識を豊かなものにするのが連想の大事な役割の一つなのです。
② 連想は、発想を豊かにしてくれる
さらに、連想は、頭の中でも貴重な役割を果たしています。
今ここで、連想についての話を書いています。こうして書き上げられた文章は、いかにも理路整然としていますが、ここに至るまでには、連想につぐ連想の連続です。車の運転をしているとき、食事をしているとき、他の原稿を書いているとき、時と場所を選ばず連想について連想してきたたまものです。
時には、メモをしたり、時には関連する本を見つけ出して読んだりもしますが、そのきっかけになるのも連想です。
いずれにしても、連想が働かなければ、発想はひどく陳腐なものにとどまってしまいます。
③連想は、心を解放してくれる
連想には制約がありません。この自由が、普段はあれこれ制約のある心を解き放ってくれます。普通ならとても連想できないことも大丈夫。
これが心のしがらみを解き放ってくれます。連想のリラックス効果です。時には、発明発見にもつながります。
●頭を元気にする連想とは
では、連想を活発にする習慣づくりを考えてみます。
まず王道から。
それは、「頭の中の知識」を増やすことです。
知識なきところに連想はありません。仕込んだ知識は、連想の種になります。
その上で次のようなことが考えられます。
連想は、頭の中で起こる現象ですが、連想のきっかけは外にもあります。
仲間や先生とのちょっとした一言が連想を触発するかもしれません。
あるいは、旅行先のちょっとした光景、本屋の店先のポップ広告、ありふれた街角の光景などなど、あなたの外にも、豊富かつ多彩な連想触発物があります。
もっともそれらが連想を触発するためには、その素材となる知識が不可欠です。それも、ただ、頭の中にあるだけでは不十分、いつでも使えるような状態になっている(活性化した状態になっている)必要があります。
これが連想を活発にする習慣の2つ目。
「問題意識を常に持つこと」、別の言い方をするなら「情報のアンテナを張り巡らしておくこと」に関連してきます。
ここで、一つお遊び。
「ひらやま」「ひらやま」と10回繰り返して口に出してみてください。
「では、世界一高い山の名前はなんといいますか」
思わず、「ヒマラヤ」と答えてしまいませんでしたか。
問いに答える前の10回の繰り返しのうちに、「ひらやま」と音の類似した(リンクした)「ヒマラヤ」が活性化してしまい、つい、答えてしまったと解釈できます。
活性化した知識がいかに簡単に使われるか(連想できるか)が実感できたのではないでしょうか。
「問題意識を常に持つ」というのは、問い(情報のアンテナ)を頭の中に抱えていることです。
そうすれば、問題意識に関係する知識が絶えず活性化していて、ほんのちょっとしたきっかけで連想が起こることになります。
旅行に出かけるときでも、あらかじめ事前のリサーチ(知識の仕込み)をしてから出かけます。それが旅行先でのさまざまな風物との遭遇を豊かなものにしてくれます。
もう一つの連想技法は、「連想を外に出すこと」です。
連想は頭の中で起こります。どんどん自律的に展開されます。
頭の元気づけという点では、それはそれで成り行きに任せておくことも、あってよいのですが、思考の素材として使いたいときには、せっかくの連想内容がどんどん忘れられてしまいます。もったいないですね。
そこで、連想したことを書き出しておくのです。
メモでも結構です。できれば、ポストイット(付箋紙)を持ち歩いて、書き留めておくと後々整理が楽です。
自分は、ブログに書くテーマや内容を手帳に差し込んであるポストイットにそのつどメモしています。連想は時と場所を選びませんから。
もっと凝ったやり方としては、連想マップがあります。
とくに、テーマ限定の発想をしたい場合はこれがお勧めです。
連想の核になる言葉を中心に、どんどん連想のリンクを延ばしていきます。適当なところまでいったら、また連想の核(丸)に戻って、さらに別の連想のリンクを伸ばしていきます。それらを見ることで、また連想が触発されることにもなりますし、リンクのどこかで新たなリンクができることもあります。
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図 連想マップ。「連想」から連想すること