Wonder Woman 1984 – Official Trailer
PART4「年寄りになりなくない。」はこちら。
「欧州で最も被害が大きいイタリアでは、先週末の映画館の売上は500ドルにも満たない金額に落ち込んだ。」
衝撃的な、そしてさもありなんという報道。フランスもとんでもないことになっているらしい。日本の興行界における最大のニュースは、どんなときも30億は稼いでくれるドラえもんの公開が延びたこと。
三十数年間、つねに3月の興行は東宝のものだった(日活のヤッターマンが健闘したときはあったけれども)。
小中学校がほとんど休業している状況で、映画館に子どもたち(とその親)が殺到するであろうドラえもんの公開はさすがに無理だったか。無理だろうな。007の新作もなんと11月まで延期。
映画というのは観ても観なくても生き死にに影響しない。他人といっしょに映画館で観ることこそ醍醐味だけど、それがコロナウィルスで吹っ飛ぶ。ショービジネスというのはしんどいもんだなあ。
ここでNetflixの株価が上昇しているというのは商売として必然なのかも。自宅にこもることになれば、必要なのはトイレットペーパーとお米(みんな買ってね。実はいくらでもあるから)と娯楽。
わたしは映画館が開いているかぎり通い続けることをここに宣言します。1メートルの距離?わたしはね、他の人がとっていなければ最前列にいます。常にいます。妻はあきれています。
ついでだからリクエストしておこう。映画が始まる前にいつも挿入される「ストップ!映画泥棒」だけど、いくらなんでももうやめてくれないか。テンションがダダ下がり。音響もひどいし。
鶴岡まちなかキネマは静かなコーションだけ。なぜイオンシネマはそうできないんだろう。日本最大のシネマコンプレックスだから?
画像は期待ふくらむ「ワンダーウーマン1984」はたしていつ公開されるものだか。
2020年4月号につづく。
キネ旬洋画篇はこちら。
うわあもう三月だ。マイベストをやる季節じゃないな。ということで本日は一気呵成に邦画&洋画&DVDのベストを。
【邦画】
1 「新聞記者」
2 「天気の子」
3 「沖縄スパイ戦史」
4 「KINGDOM」
5 「屍人荘の殺人」
……なんか、頭悪そうなトップ5って感じ。日本アカデミー賞受賞作と大ヒットアニメ&マンガ原作もの。そしてあのラブコメゾンビミステリ(笑)。中和する意味で次点は「カメジロー不屈の生涯」を。
【洋画】
1 「JOKER」
2 「グリーンブック」
5 「バイス」
わたしは「スカイウォーカーの夜明け」が散々な評価であることに異議を申し立てます。ああいう形でしか終われないじゃないですか。次点は「ROMA」「運び屋」「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」。
【DVD】
1 「グランド・ブダペスト・ホテル」
2 「ゆとりですがなにか」
3 「牯嶺街少年殺人事件」
4 「ダンボ」
5 「6才のボクが、大人になるまで」
次点は「犬ヶ島」「ザ・ロイヤル・テネンバウム」とにかく去年はわたしにとってウェス・アンダーソンの年だったんですっ!
北米興行収入篇はこちら。
1 Avengers: Endgame $2,797,800,564 69.3%
2 The Lion King $1,656,943,394 67.2%
3 Frozen II $1,437,556,301 67%
4 Spider-Man: Far from Home $1,131,927,996 65.5%
5 Captain Marvel $1,128,274,794 62.2%
6 Toy Story 4 $1,073,394,593 59.6%
7 Joker $1,072,429,808 68.7%
8 Star Wars: Episode IX - The Rise of Skywalker $1,065,065,584 52%
9 Aladdin $1,050,693,953 66.2%
10 Jumanji: The Next Level $769,290,805 61.1%
11 Fast & Furious Presents: Hobbs & Shaw $759,056,935 77.1%
12 Ne Zha $726,063,471 99.5%
13 The Wandering Earth $699,760,773 99.2%
14 How to Train Your Dragon: The Hidden World $521,799,505 69.2%
15 Maleficent: Mistress of Evil $491,726,140 76.8%
16 It Chapter Two $473,093,228 55.3%
17 My People, My Country $450,064,993 99.5%
18 Pokémon Detective Pikachu $433,005,346 66.7%
19 The Secret Life of Pets 2 $430,051,293 63.1%
20 The Captain $416,953,262 99.8%
例によって行末の蛍光部分は北米以外の興収の割合。大きければ大きいほど海外で稼いだ映画というわけだ。
12位、13位、17位、20位が突出して高いのは、これが中国作品だから。というか、中国だけでここまでランクインできるまでに市場は大きくなっているのだ。ハリウッドがどんどん中国のほうを向いた映画作りをしていること、同時に、チャイナマネーがハリウッドに流れ込んでいる事情も想像できる。
日本?44位に「Weathering with You」が入っているのが最高位でした。むかしは世界2位の市場規模をほこっていたものだけどなあ。
ええええっ。「パラサイト」が作品賞なの?
外国語映画賞(今年から国際長篇映画賞)じゃないのっ!え、それと監督賞と脚本賞もとっちゃったのっ!
実はわたしは仲間内にこうメールしていた。
作品賞:「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
監督賞:ポン・ジュノ
主演男優賞:ホアキン・フェニックス
主演女優賞:レニー・ゼルウィガー
助演男優賞:ブラッド・ピット
助演女優賞:キャシー・ベイツ
だろうと。実はおじいちゃんおばあちゃんが多いアカデミー会員はこう選ぶだろうと。いやー違ったんだなあ。カンヌやベルリンの受賞作も、もう平気でアカデミー賞をやっちゃうことになったわけだ。
妻は帰ってくるなり「ポン・ジュノのスピーチがすごくよかったの。」観てたのか!
耳に赤青鉛筆をはさんでの予想。これ、面白いなあ。来年もやっちゃいましょう。ちゃんとこのブログでやります。
3時間56分の大長篇。世評高く、映画好きの間ではよくこの作品の名が出るが、わたしは観たことがなかった。あ、タイトルは「クーリンチェ少年殺人事件」と読みます。実際に台湾で起きた事件をもとにしたエドワード・ヤン監督作品。91年製作。
実は評判のわりに、実際に観たことがある人は圧倒的に少ない。なぜなら、初公開のときは日本では大コケ。おまけにコンテンツの権利を持っていた会社が倒産したため、DVD化もされていなかった。
ここで登場したのがなんとマーティン・スコセッシ。彼の会社がデジタルリマスター版を製作。おかげで再公開され、鶴岡まちなかキネマでも上映された。行けなかったけど。
さて、作品情報をほぼ皆無の状況で見始める。4時間もある作品だからきっと退屈するに違いない。酒でも飲みながら……そんなやわな観客を弾き飛ばすような映画だった。
背景は60年代はじめの台北。大陸から渡ってきた外省人たちの屈託。そのいらつきは彼らの子に伝染し、少年たちは抗争をくり広げる。そして、ひとつの殺人が起こり……
ああ、タイトルの殺人はこのことをさしているのかと納得し、はたしてこれからどんな展開になるのかと思ったら……うわあ。
3時間56分間という時間が必要だったのがよくわかる。それはある人物の絶望と、日本とアメリカの影響、そして大陸への思慕と憎悪に揺れる台湾という国を描くために。
光り輝く夏の一日(英題はA Brighter Summer Day)になるはずだったその日が、一転して漆黒に染まる展開を、エドワード・ヤン(59才で病没)は絶妙に描く。特に懐中電灯を利用して、光によって闇を切り裂く映像がすばらしい。退屈なんかまったくしませんでした。大傑作。
映画篇はこちら。
つづいてはDVD篇。去年は百本以上観ているんだけど、今年はそれ以上のペースです。社会人としてだいじょうぶか。
1位 「ジャージー・ボーイズ」(クリント・イーストウッド)
2位 「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」(石井裕也)
3位 「ロング・グッドバイ(NHK)」(堀切園健太郎)
4位 「彼女の人生は間違いじゃない」(廣木隆一)
5位 「パターソン」(ジム・ジャームッシュ)
6位 「カリフォルニア・ドールズ」(ロバート・アルドリッチ)
7位 「わたしは、ダニエル・ブレイク」(ケン・ローチ)
8位 「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」(デヴィッド・イェーツ)
9位 「大統領の陰謀」(アラン・J・パクラ)
10位 「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」(マーティン・ブレスト)
次点候補はたくさんあって、「哭声(こくそん)」「スポットライト 世紀のスクープ」「ハメット」「夜の大捜査線」などなど。
公開時期がまちまちなのに、単にわたしが去年みたから、というだけで選ぶのも乱暴な話。結局、劇場で見逃した分のフォローって感じかも。
もっとも、近ごろはむかし一度観ている作品を見直すのも楽しい。さっぱり忘れているしね。年をとるのも悪いことだけではありません。「ハメット」なんか、何度も見ているのに見るたびに面白い。前は退屈したおぼえのある「ブリット」なんて、どうしてこれで退屈できたのかと我ながらあきれる。ということで、レンタル屋の旧作の棚はわたしにとって宝の山となっています。
【マイベスト2018・おしまい】
キネ旬洋画篇はこちら。
さあそれではマイベスト2018の映画篇。邦洋それぞれ5作品をあげてみました。
【邦画】
1位 「焼肉ドラゴン」(鄭義信)KADOKAWA=ファントム・フィルム
2位 「菊とギロチン」(瀬々敬久)トランスフォーマー
3位 「万引き家族」(是枝裕和)GAGA=フジテレビ
4位 「孤狼の血」(白石和彌)東映
5位 「斬、」(塚本晋也)新日本映画社
キネ旬ベストテンに「焼肉ドラゴン」が入らなかったのは意外だった。芝居が原作なので、そちらの演劇臭が嫌われたのだろうか。まさか「孤狼の血」の上に3本も連なるとは思わなかった。大豊作の年だったのではないか。マイ主演女優賞は文句なく安藤サクラ。主演男優賞は役所広司かな。なんか、普通ですみません。
【洋画】
1位 「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」(スティーブン・スピルバーグ)ドリームワークス
2位 「KUBO/二本の弦の秘密」(トラヴィス・ナイト)GAGA
3位 「スリー・ビルボード」(マーティン・マクドナー)FOX
4位 「リメンバー・ミー」(リー・アンクリッチ)ディズニー
5位 「ボヘミアン・ラプソディ」(ブライアン・シンガー)FOX
またスピルバーグかよ、と言われそう。でも「ブリッジ・オブ・スパイ」と同様に、ダントツのマイベストです。あっさりと撮っているんだとは思うのに、どうしてこの人は濃密な作品がつくれるのかなあ。あ、それからみんなが駄作だと言ってるけど「ジオストーム」もけっこう好きでした(笑)。
次回はDVD篇。
鶴岡まちなかキネマで鑑賞。老人介護のお話。認知症がすすむ87歳の母を、95歳(大正生まれ!)の父親が見守る……金を積まれてもみたくないタイプのドキュメンタリー。いつか自分にもやってくる(もう来ている)“老い”という冷厳な事実を、だからこそなんとか先送りしてしまいたいと。でも見る。
監督、撮影、ナレーションはドキュメンタリー作家の信友直子。1961年生まれ、というからわたしとほぼ同世代だ。わたしは高齢の父親と同居しているが、信友は呉の実家から遠くはなれた東京にいて、
「ただいまあ」
と何度も実家に帰ってくる生活。はじめは気軽なプライベートビデオだったはずのものが、母の認知症とともに「作品」になっていく。撮ることそれ自体に意味が発生したからだ。結婚しろとも言わず、好きな映像の仕事をつづけさせてくれた両親への、記録することが義務と感謝だと。
わたしの妻も、すっかり身体の弱った母親のために、毎日実家に通っている。見始めて数分後、となりに座った彼女のマスクの奥から「ぐがぐぎごご」と不穏な音が。
号泣しているのでした。
わたしも、“抗がん剤のために脱けた娘の髪の毛を拾う母親”なんて場面にはやはり泣かされた。しかも、このお母さんはユーモアたっぷりなのであり、だから娘がストレッチャーで運ばれた途端に涙を流すシーンは強烈。
認知症は、わずらった本人は幸福でまわりが大変、という思いこみが大嘘だと気づかせてくれる作品でもある。自分が自分でなくなっていく恐怖。
父親は慣れない家事を淡々とこなす。「あたし(実家に)帰ってこようか?」と娘が問うと、戦争のために文学を学びたかった夢を諦めざるをえなかった彼は「仕事をつづけろ」と言い放つ。東京大学文学部に入学した自慢の娘のことを、だいじに思っていることが伝わってくる。
広島県呉市が舞台。あの傑作「この世界の片隅に」のすずと同じ場所、同じ時間をこの夫婦は過ごしている。呉の方言がひたすら味わい深い。
北米興行成績篇はこちら。
つづいて世界興行成績ランキング。
1 Avengers: Infinity War BV $2,048.4 $678.8 33.1% $1,369.5 66.9%
2 Black Panther BV $1,346.9 $700.1 52.0% $646.9 48.0%
3 Jurassic World: Fallen Kingdom Uni. $1,309.5 $417.7 31.9% $891.8 68.1%
4 Incredibles 2 BV $1,242.8 $608.6 49.0% $634.2 51.0%
5 Aquaman WB $1,107.0 $323.6 29.2% $783.4 70.8%
6 Venom (2018) Sony $855.0 $213.5 25.0% $641.5 75.0%
7 Bohemian Rhapsody Fox $821.8 $208.5 25.4% $613.3 74.6%
8 Mission: Impossible - Fallout Par. $791.1 $220.2 27.8% $571.0 72.2%
9 Deadpool 2 Fox $765.9 $318.5 41.6% $447.4 58.4%
10 Fantastic Beasts: The Crimes of Grindelwald WB $652.2 $159.2 24.4% $493.0 75.6%
11 Ant-Man and the Wasp BV $622.7 $216.6 34.8% $406.0 65.2%
12 Ready Player One WB $582.9 $137.7 23.6% $445.2 76.4%
13 Operation Red Sea WGUSA $579.2 $1.5 0.3% $577.7 99.7%
14 Detective Chinatown 2 WB $544.1 $2.0 0.4% $542.1 99.6%
15 The Meg WB $530.2 $145.4 27.4% $384.8 72.6%
16 Hotel Transylvania 3: Summer Vacation Sony $528.1 $167.5 31.7% $360.5 68.3%
17 Dr. Seuss' The Grinch (2018) Uni. $508.7 $270.4 53.2% $238.3 46.8%
18 Ralph Breaks the Internet BV $486.5 $197.0 40.5% $289.5 59.5%
19 Bumblebee Par. $455.3 $124.3 27.3% $331.0 72.7%
20 Rampage (2018) WB (NL) $428.0 $101.0 23.6% $327.0 76.4%
ペイントした部分は、例によって北米以外での興行収入の割合。この値が大きければ大きいほど、海外の観客がその映画を支えたことになる。Operation Red Sea(紅海行動)とか、Detective Chinatown 2(唐人街探案)とか、ほとんど中国のみの成績なのにこの位置。マーケットとして、あの国は次第に存在感を増している。
逆に、グリンチが低いのは昔のもそうでした。あの物語はアメリカ人にしか受け入れられないのではないでしょうか。
次回はキネ旬ベストテン邦画篇。