事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第4回「『雛形若菜』の甘い罠」

2025-01-30 | 大河ドラマ

愛のバラード

第3回はこちら

週末は遠方の研修会へ。夜の懇親会では

「絶対に『光る君へ』は途中でギブアップするものだと思ってた」

と指摘される。

「うん。まあ源氏物語も読んだことのない人間だからなあ」

「あたしは読んだことあるわよ」

「え、誰の訳(やく)で?」

谷崎潤一郎だろうか円地文子だろうか。

「なにを言ってるんですか。古文の教科書ですよ」

そりゃま、そうだが。しかしわたしは古文や漢文の授業は苦痛でしかなかった。五言絶句ってなんだよ、ぐらいの世界。でもちゃんとやっていれば、あの大河ドラマをもっと楽しめたのかもしれない。

その点、この「べらぼう」は、早坂暁の「天下御免」や三谷幸喜の「風雲児たち」で予習済みなので気が楽だ。「解体新書」が出てきたら、これターヘル・アナトミアだよなとすぐに理解できる。

さて今回は出版業に乗り出そうとする蔦谷重三郎(横浜流星)が、業界の面々に弾き飛ばされるという苦いお話だ。蔦重に支援を申し出る親切な西村屋(西村まさ彦)が実は……という展開。

業界の横紙破りの新人が、旧弊な年寄りたちに追い込まれるという構図で思い出すのは角川春樹だ。

ある愛の詩」や「犬神家の一族」などでメディアミックスを仕掛け、大量宣伝大量販売の手法には批判も多かった。しかし今や出版界も映画界も、角川春樹的なるものを無視してはやっていけない時代になっている。まあ、でも角川兄弟の現在を考えると、蔦重と彼らを重ねるのは……。

ってことで本日の1曲は犬神家の一族。大野雄二さんを起用するセンスは角川春樹のものだったろうか。

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「浜村渚の計算ノート」 青柳碧人著 講談社文庫

2025-01-24 | ミステリ

現在までに13冊も出ている長大な数学ミステリ。

少年犯罪増加の原因が義務教育にあるとされ、日本政府は理系科目を削減し、道徳や芸術系の教科を増やした。そのことに失望した一部の数学者たちはテロ組織を結成し、数学を利用した暴力行為を始める。

しかしそこへ、普通の公立中学校に通う普通の中学生、浜村渚が登場する。彼女の数学の能力は普通ではなかった……

いやこのシリーズはほんとに面白いんですよ。ミステリとしてももちろんだけど、扱っている数学自体が魅力的なのだ。

高校時代は理系クラスだったのに、文学部に進んだわたし(つまり、理系から逃避したのだ)ですら、ああ数学とはこんなにも摩訶不思議なのかと満足。

テーマになっているのは素数、フィボナッチ数列、円周率、アキレスと亀、無理数など。めちゃめちゃに複雑な諸問題を「面白い」と感じさせてくれるのだからたいしたものだ。

これは、青柳碧人が塾の講師だった時代に、子どもたちに算数・数学を好きになってもらいたいと工夫を重ねた経験によるのだろう。新作、待ってます。

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「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第3回「千客万来『一目千本』」

2025-01-23 | 大河ドラマ

FUNKY STAR ~ Troubled Fish 米米CLUB

第2回はこちら

月曜の朝、お布団のなかで妻がスマホをいじりながらクスクス笑っている。

「どうしたの?」

「夕べのべらぼうにね、米米CLUBの人が出てたんだって」

「え、石井が?」カールスモーキーね。

「違う違う。あの大きい人みたい」

「ジェームズ小野田かあ!」

ドラマ初出演が大河とはたいしたものだ。湯屋の主人役だったらしいが、素顔を知らないのでまったく意識していませんでした。これってサングラスをはずしていたところを(年上の奥さんと歩いているところでもある)スクープ撮された浜田省吾のパターンといっしょかな。違うか。

茶屋「駿河屋」の主人(高橋克実)は、蔦重(横浜流星)が貸本などにうつつをぬかしているのが気に入らず、ちょっとひくぐらいの折檻をくわえる。

……だいじょうぶかなあ。高橋克実の方が。だって横浜流星って極真の世界チャンピオンだったんだよ(笑)返り討ちにあいそう。

しかし森下脚本のことなので、実は自分の跡を継ぐのは蔦重だと見込んでいるがゆえの叱責なのだと明かされる。

ガイドブックである吉原細見をもってしても退潮が続く吉原。そこで蔦重は奇手を思いつく。吉原でしか手に入らない、女郎たちを花に見立てた「一目千本」をつくる。

この企画は大ヒットしたが、それよりももっと重要なのは、蔦谷重三郎が本づくりの面白さに目覚めたことだったのだ。周到な脚本、さすが森下佳子。

本日の1曲はもちろん米米CLUB。「トラブルフィッシュ」は大好きな曲でした。

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明細書を見ろ!2025年1月号 源泉徴収票 紙上初任者研修PART10

2025-01-23 | 明細書を見ろ!(事務だより)

吾妻光良 & The Swinging Boppers【 ゴミの日来るまで 】Peter Barakan’s Live Magic!

差額号はこちら

ほぼ毎年のように特集していますが、給料袋に同封した源泉徴収票について、初任研のネタとして取り扱いましょう。

この源泉徴収票とは、去年の1月1日から12月31日まで、雇用主からわたしたちがいくらもらったか、税金をいくら払ったかなどを示す書類。確定申告や、金融機関からお金を借りるときなどに必要になります。

少なくとも一年間はなくさないでくれ、と毎年言っていますが毎年必ず誰かはなくす。もちろん、事務室にコピーは保存していますけれども(異動するときには異動先に送付します)。

だから令和5年分の源泉徴収票はもう廃棄してもいいのですが、その前に今回の分と比較してみることをおすすめします。給与所得者としてのあなたの、ほぼすべてを集約したものなので、なかなか味わい深いですよ。

それでは項目ごとに解説します。

【支払金額】
この数字が、いちばん下の欄の【支払者】から受け取った総収入。自営業者でいえば売り上げ、水揚げにあたるでしょうか。ちょっと微妙な差異はありますが(通勤手当の課税対象額の関係)、山形県知事の吉村美栄子さんからあなたが受け取った給与の総額がここの数字です。

【給与所得控除後の金額】
売り上げにそのまま課税されるわけではありません。自営業者なら必要経費(わたしたち公務員には存在しない交際費とか)を計上して申告します。給与所得者だって必要経費はある。でも、たとえば毎月スーツを買ったり新幹線通勤をしている人ならともかく、なかなかそこまできっちり必要経費を積み上げて申告する人はいない。なぜなら、この給与所得控除というのはけっこう甘めに設定されているので、誰も領収書をかき集めたりはしないのです。ということでこの金額が給与所得者としての利益にあたります。

【所得控除の額の合計額】
さて、利益が算定されたところで、今度は個々人の“都合”を考えます。扶養親族の数や社会保険料、そして年末調整のときに記入してもらった生命保険や地震保険の掛金などをもとに、この部分は利益ではないと見立てて(控除して)もらうわけ。

【源泉徴収税額】
そして利益から都合を差し引き、結果として一年間に支払った税金がこれです。源泉徴収プラス年末調整という日本独特のシステムのせいで、日本人は税金をなかなか意識していない。じっくり、ながめてください。

本日の1曲はThe Swinging Boppers。ピーター・バラカンの番組で聴いてびっくり。いいなあ。

2月号「退職後」につづく

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「早朝始発の殺風景」青崎有吾著 集英社文庫

2025-01-22 | ミステリ

ああ本当に近ごろは青崎有吾青柳碧人ばかり読んでいる気がする。

殺風景とは、なんと第1話に登場する女子高生の名前だ。彼女はなぜ、学校の門が開く7時半より2時間も前の始発電車に乗っているのか。そして、語り手の男子生徒もまた……

こんな感じの高校生たちの日常がクリアに描かれる。

表題作を含む5篇が収録され、エピローグでみごとに収束する。

帰省した娘に貸したら

「お父さん、これすごく面白かった!」

と絶賛状態でした。わたしも若いころにこの小説に出会いたかったなあ。

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「鬼滅の刃」

2025-01-18 | アニメ・コミック・ゲーム

2024年はたいそうな数のDVDをレンタルした。加えて、地元のレンタルショップは次々に閉店し、わたしが通っている店舗もDVDの棚はどんどん縮小されている。

はて。あとはどんな作品を借りればいいんだろう。

フラフラとアニメのエリアに入りこむ。

あ、そうか。これをレンタルすればいいんだ。

「千と千尋の神隠し」を超えて、日本映画史上最高の興行収入(400億!)をあげた、いわずとしれた「鬼滅の刃」である。

TVアニメ「立志編」「無限列車編」「遊郭編」「刀鍛冶の里編」プラス劇場版と、全27枚を正月から一気に見まくり。おかげで頭の中で「レンゴクさん」「ジョーゲン」「ネズコ」などのフレーズが飛び交っている。

 家族と静かな暮らしをしている炭焼きの少年が、鬼によって家族を惨殺され(ひとりだけ生き残った妹は鬼になっている)、修行を重ねて鬼を倒していく、これが基本線。

少年ジャンプ連載作品らしく、勝負勝負の連続で、おまけに鬼の強さが数値化されているあたりもジャンプらしい。敵を倒すために「考えろ」「考えろ」とつぶやくなど、「ダイ・ハード」をはじめとしたハリウッド作品らしさも備えている。

シリーズ構成と脚本はufotable(ユーフォーテーブル)。製作はSONYの系列のアニプレックス。ていねいな仕事をしているなあ。

大ヒットした無限列車編に顕著だが、ランキングが下位のはずの鬼が強すぎる(笑)とか、バランスの悪さがあるとはいえ、ギャグもたっぷり仕込んであって満足。楽しいお正月を過ごさせていただきました。

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日本の警察 その149「BORDER」(2014 テレビ朝日)

2025-01-17 | 日本の警察

その148「絶対零度」はこちら

頭に銃弾を受け、死者と交信する能力を得た刑事。魅力的な設定だ。主役を演じた小栗旬の好演もあって見応えがある。

原作と脚本は「GO」や「SP」の金城一紀。捜査方法もリアルに描いてあり、さすが。ボーダー(境界線)にはいろいろな意味がこめられていて、生と死がメインのテーマだが、次第に正義と悪の方へシフトしていく。この二つには境い目がないというラストは衝撃的。地上波でのオンエアでこれは勇気があるよな。

波留が演じた鑑定医、遠藤憲一の上司など、脇役も渋い。古田新太、滝藤賢一、浜野謙太、野間口徹が協力者という布陣には笑った。

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「日本扇の謎」有栖川有栖著 講談社ノベルス

2025-01-16 | ミステリ

年末恒例のミステリランキングを眺めていると、作家たちの変遷に考えこむ。「このミステリーがすごい!」の最初のベストワンは船戸与一の「伝説なき地」だったが、彼が亡くなってから久しい。原尞もまた、わずかな、しかし良質のハードボイルドを遺して逝ってしまった。生きていてもほぼリタイア状態の人も多いわけで……(それを考えると辻真先さんと皆川博子さんは驚異的)

そんななか、有栖川有栖はすごい。デビュー35周年。臨床犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖(作家と登場人物が同名なのはエラリー・クイーンに倣っている)のシリーズはもう30冊近い。

そのなかでも、やはりクイーンに倣った国名シリーズは11冊目。いよいよ日本の登場だ。というより、徹底して京都という街を活写。

舞鶴の海岸にたたずんでいる青年。通りかかった女性教師に、彼は自分の名前すら言うことができない。はたして記憶喪失なのか。持っている日本扇がヒントになって6年8ヶ月ぶりに実家に帰った彼を、家族は「人が変わったよう」と驚く。引っ込み思案で暗い子だったのに、すっかり快活になっていたのだ。

敷地内で起こる連続殺人。そして青年は姿を消す……

有栖川有栖には、この火村が主人公の作家アリスのシリーズと、江神二郎が主人公の学生アリスのシリーズがある。どちらも必ず読者を楽しませてくれるのだが、有栖川有栖と同学年であるわたしとしては、これからも長く長く書き継いでくれることを切に願っている。

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「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第2回「吉原細見 嗚呼御江戸」

2025-01-14 | 大河ドラマ

第1回はこちら

1回目で「厠の男」とクレジットされた安田顕が、実は平賀源内でしたというお話。田沼意次(渡辺謙)もいるし、杉田玄白のキャスティングも発表されたので(山中崇)、次第次第に「天下御免」色が強くなっている。

ちなみに、1971年から72年にかけてオンエアされたあのドラマでは、主役の平賀源内に山口崇、田沼意次に仲谷昇、そして杉田玄白はなんと坂本九でした。蔦谷重三郎が出ていなかったようでちょっと残念。

山本昌代の平賀源内をあつかった作品を読むと、彼の晩年は過酷なものだったらしいが、だからこそ天下御免では破天荒なラスト(気球に乗って日本を脱出する)が用意されたのだろう。

第1回目で話題になったのは、女郎が全裸で“捨てられている”描写だった。「子どもも見てるのに」とか批判されていた。冗談じゃない。女郎の境遇が過酷なものであることを、あのシーン一発で視聴者に理解させるみごとな演出だったのに。

今回も攻めている。

平賀源内が同性愛者だということをあからさまにしたのだ。仕掛けがなかなか凝っていて、衰退する吉原を盛り上げるために、お前はなにかできるのかと田沼に指摘された蔦重(横浜流星)は、吉原のガイドブック「吉原細見」の序文を、有名人だった平賀源内に書いてもらうことを思いつく……

東京に出たばかりのころ、わたしは映画館を中心に動き回った。そのときに役立ったのが「ぴあ」や「シティロード」でした。時代だなあ。吉原細見はいわば「吉原ぴあ」(笑)みたいなものだったのか。

しかし同性愛者である源内は、どうも気が乗らない。そこへ蔦重と幼なじみである花魁の花の井(小芝風花)が男装して登場する。うまい。亡き恋人を思い出してしんみりする安田顕の芝居がいい。さすが森下脚本、もう泣かせモードだ。第3回につづく

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今月の訃報2024年12月PART4 オリビア・ハッセー 73歳没

2025-01-13 | 芸能ネタ

A time for us Romeo and Juliet 1968

村上知彦篇はこちら

なんてことだ。先月は中山美穂とオリビア・ハッセーという超弩級の美女が相次いで亡くなったのか。

わたしの世代にとってはもちろん、彼女が16才のときに主演した「ロミオとジュリエット」が衝撃。わたしは再上映されたときに見たんだけど、いきなりヌードになってくれてありがたかったなあ。

しかし彼女はその後、作品に恵まれず、B級作品の出演がつづいていた。でも日本ではジュリエット人気が衰えず、ドメスティック系の配給会社によって上映された「サマータイムキラー」「暗闇にベルが鳴る」などをちゃんとわたしも劇場で観ています。

そんな彼女が布施明と結婚したのには驚いた。化粧品のCMにハッセーが起用され(それほどに彼女は日本で人気があったわけだ)、そのCMで布施明の「君は薔薇より美しい」が流れたのが縁で結婚したらしい。いいなあ。確かに、薔薇よりきれいな人だった。

森永卓郎篇につづく

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