「あっしには関わりのないことでござんす」
でおなじみの、あの大人気テレビドラマの原作。市川崑が主導し、まだ無名だった時代の中村敦夫が主演した。この大ばくちは成功し、ご存じのような次第。わたしはなぜか一度も見たことがなく、まさかこんなにミステリ色が強いお話だとは知らなかった。なるほど東京創元社が文庫で再発するだけのことはある。
無宿人という存在が、天保の時代にどれだけ生きにくいものであったか。だから他人と関わるよりも自分が生き残る方を彼は常に選択する。もちろん、毎回失敗するわけだけれども。
笹沢佐保といえば、わたしの世代にとってはとにかく書いて書いて書きまくる量産作家という印象。だけれども、有栖川有栖が心酔するように、本格ミステリの書き手としてこれだけの高みに達していたとは。
同じように量産作家だった梶山季之や藤原審爾などにも、きっと名作は含まれているんだろう。誰かセレクトして。