夜半に読み始める。今朝は柿の消毒をしなきゃいけないんだから早く寝なきゃ……やめられない。夜が明けてくる。どうしようやめられない。ほとんど2時間ぐらいしか眠れませんでした。
で、消毒を終えてシャワーを浴び、ぜーぜー言いながらソファに倒れこむ。ふ、まだ世之介残ってるんだぜ。上下巻を一日で読み切ってしまいました。それほどの傑作。きっとわたしの今年のベストワン。
世之介シリーズの三作目。
第一作で大学生、第二作でフリーターだった世之介は、この作品では39才のカメラマンになっている。住んでいるのは「ドーミー吉祥寺の南」という、吉祥寺というよりほとんど調布にある下宿屋。
芸者だった祖母が遺したこの下宿屋を営むあけみちゃんというふくよかな女性と同棲しているのだ。この下宿屋は「すいか」のハピネス三茶やめぞん一刻のような“どこにもない場所”である多幸感にみちている。
世之介には苦い思い出がある。前につきあっていた女性が亡くなってしまったのだ。というより、世之介と会った段階ですでに余命2年……まわりの人間を幸せにし続けるのが世之介というものだったのではないかとお思いでしょうが、彼女が世之介と過ごしたことでどれだけ救われたかが察せられてうれしい。しかもこのカップルは難病ものの展開をことごとくひっくり返していくのだ。
「青春時代に世之介と出会わなかった人がこの世の中には大勢いるのかと思うと、なぜか自分がとても得をしたような気持ちになってくる」
1作目の登場人物が語ったこと。わたしはなぜか小田急線で読んでいて、涙がこらえきれなかった。
そして今回、世之介がなぜあの行動をとったかがあらためて語られ、ソファの上でわたしはまた涙してしまったのでした。人間にとっていちばん必要なことはなにか、終盤に世之介はストレートに語ります。
日ごろ生きづらいと感じている人なら「そうなんだ」と納得すると思う。わたしは納得しました。横道世之介と生きていこう。
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