三井不動産が、バブルまっさかりの頃に金を出して、新潮社と組んで日本ファンタジーノベル大賞をスタートさせた。1989年のことです。
この文学賞のおかげで恩田陸、森見登美彦、佐藤亜紀、小野不由美、小田雅久仁らがメジャーになったので率はよかった。バブルありがたし。
その第1回の大賞作品が「後宮小説」。作者の名は酒見賢一だった。審査員の井上ひさしは「天才の出現か」と選評で述べていた。それほどに、とんでもない作品だったのである。
既定の路線として日本テレビでアニメ化されて、「雲のように風のように」とタイトルを変更して(さすがに後宮小説というタイトルでは無理だったろう)祝日のお昼にオンエアされた。わたし、それ見てました。暇だったのか。でもこちらも面白かったなあ。DVD出てるのかな。
以降、酒見はその中国関係の該博な知識を生かし、「墨攻」(南伸坊のイラストが最高だった。なんとアンディ・ラウとアン・ソンギ主演で映画化もされた)「陋巷に在り」(孔子とその弟子、顔回の物語。ほとんどエスパー合戦。文庫で全13巻。きっと終われなくなってしまったんだと思ってました)「泣き虫弱虫諸葛孔明」(パリピ孔明が人気の今こそ読まれるべきだ!三国志の入り口がこの小説だったら、わたしはあの複雑なお話にもっと熱中していたはず)と書き続けてきた。
しばらく新作が出ないな、と思っていたらこの訃報である。59才。彼の作風からいって、確実にこれから名作を量産できるはずだった。くやしい。くやしい。
エンタメ界にとって素晴らしい賞の始まりでしたよね。
単行本版の装丁が好きで、一度借りて読んだのを
買い直したりしてました。
ご存命ならもっとどんな作品を
書いてくれてたんでしょうか。
あの冷静さとユーモアの同居。
ああ惜しい。