原作は角田光代の恋愛小説。ものすごく簡単に要約すると、さしていけてるとも思えない男に惚れてしまった女性が、職を失い、他の女性に彼を奪われてもひたすらに彼を求め続けるというお話。
なんか、年長者の上から目線なまとめになってしまった気がするけれど、わたしはこの映画に激しく心を揺さぶられた。
さして大宣伝をうったわけでもないのに口コミで大ヒット。わかる。
タイトルの意味するところは、男=マモちゃんへのヒロイン=テルコの気持ちは愛でも恋でもないということなのだ。
ヒロインを演ずる岸井ゆきのの
「愛がなんだってんだ」
と吐き捨てるあたりがいなせである。
彼女は明確に宣言している。わたしはマモちゃんを愛しているのでも恋人でもなく
「マモちゃんになりたい」
のだと。これは強い。よく、小さな子どもが、電車の運転手ではなく
「電車になりたい」
というのに近い。それほどに強い思い。
主演は、次第に美しく見えてくる岸井ゆきのと、自分なんてとどこか見切っているあたりの諦観が渋い成田凌。このふたりの存在感は圧倒的。
凡百のキラキラ映画と違い、互いに大きな声で叫びあうこともなく、会話は常に小声。セックスも自然なふるまいに見える。
この二人に、大好きな片岡礼子と江口のりこと筒井真理子がからみ、くわえて乃木坂出身の深川麻衣がいい味。キャスティングのセンスだけでもたいしたものだ。
監督は「アイネクライネナハトムジーク」の今泉力哉。傑作!
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