散歩日記X

札幌を中心に活動しています。食べ歩き・飲み歩き・ギャラリー巡り・読書の記録など

またかよ東京(9)

2020年02月08日 14時03分38秒 | ART
■東京国立博物館「特別展 人、神、自然 ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界」。カタール王族のコレクション展とのことだが、これが思いのほか素晴らしい展覧会であった。必見である(2/9で終了だが)。

「ラメセス2世像」:胸部のみの石像だが、かなり大きい。身長4mはあるな。
「王像頭部」:今度は赤碧玉の朱色を生かした小さな頭部像。細工が細かい。
「男性像頭部」:メソポタミア新シュメール期(紀元前2050年頃)のものだが、現代アート的なものを感じる。

「女性像頭部」:後頭部が長くひょろっとしている異形の像だが、それでも美しいことには間違いない。エジプト新王国時代、アマルナ文化のもの。
「ブレスレット」:エジプト第3中間期、第21王朝時代のもの。赤、青、金の配色で、今つけても全く不思議ではないデザイン。
「杯」:そこに女性の顔のレリーフがあり、それを彫るには相当大変だったと思われる。

「杯」:模様のあるメノウをそのまま杯の形にしたもの。
「飾り板」:中央アジアバクトリア・マルギアナ複合(←それ何?)のものだが、まあ、「カニ星人」と呼ぶしか無いような姿が刻まれている。
「仮面」:マヤ文明の仮面だが、ジョジョの奇妙な冒険の「スタンド」はこれを参考にしているのでは?

「女性像「スターゲイザー」」:アナトリア半島西部のもので、紀元前3300年~2500年くらいのもの。抽象彫刻というか、宇宙人が来ていたんだなというか。
「仏立像」:中央アジア後グプタ文化のもの。光背はもともと植物を表していたのかもしれない。
「アイベックス」:古代南アラビア文化の石像。本来より立派な角をしており、何かの象徴だったか。

「杯」:アケメネス朝ペルシアのもの。豹の顔をしたガラス製の杯で、貴重なものだろう。
「飾り板」:虎が描かれているのだが、その縞模様にラピスラズリやカーネソアン他の貴重な石が使われているもの。
「留め金」:ヘレニズム文化の驚くべき細かい彫金。



先が急がれるので、ここで本館に戻り、駆け足で展示室をまわる。

室生寺「釈迦如来坐像」「十一面観音菩薩立像」:本館の仏像彫刻コーナーは撮影不可のものが多くなってきた。いずれも撮影不可にして、国宝。
熊野速玉大社「橘蒔絵手箱及び内容品」:足利義満が奉納したもので、内容品がほぼ残っており、当時の化粧を知る上でも非常に貴重なのだとか。国宝。
京都・金地院「渓陰小築図」:今回の国宝室にはちょっと地味なこれが展示されていた。



この後、平成館の展示もサーッとみて、何とか東博は終了。最近、法隆寺宝物館に全く行けないのだが、とにかくちょっと見て回るだけで時間と体力を消耗する、恐ろしい東博マジックである。

続いて、恐る恐る東京都美術館へ。

■東京都美術館「ハマスホイとデンマーク絵画」。幸いなことに、待ち行列などはまったくなく、まあまあ快適に見ることができた。
ヴィルヘルム・マーストラン「フレゼレゲ・ラフェンベア(旧姓ヘーイロプ)の肖像」:デンマーク絵画はストレートな写実絵画が中心だ。結婚した女性の場合、必ず旧姓も記されているようだった。そういうルールなのかな。
クレステン・クプゲ「フレズレクスボー城の棟-湖と街、森を望む風景」:透明感のある広い景色は、北海道、さらには帯広を思わせる。
ダンクヴァト・ドライア「ブランスー島のドルメン」:ドルメンとは巨石記念物で、1830年代以降のデンマーク絵画によく登場するとのこと。

オスカル・ビュルク「遭難信号」:遭難の知らせがあったのだろう。不安顔で外を見る女性。漁師の生活は国が変わっても同じである。
オスカル・ビュルク「スケーインの海に漕ぎ出すボート」:ともすれば温和で平穏なものばかりに思えるデンマーク絵画だが、これは海の男の力強さを描いた作品。2017年に国立西洋美術館で「スケーエン:デンマークの芸術家村」という小展覧会が開かれたが、ここでは表記がスケーインに変わっている。外国語のカタカナ表記は難しいものだ。
ヴィゴ・ヨハンスン「台所の片隅、花を生ける画家の妻」:女性はこちらを向かずに花を活けている。親密派(アンティミスム)という感じだ。

ヨハン・ローゼ「夜の波止場、ホールン」:水のひんやりとした感じがする、北欧の夜の風景。2002年に北海道立近代美術館で開催された「スカンジナビア風景画展」(←これが良い展覧会だった)を思い起こさせるね。
ユーリウス・ポウルスン「夕暮れ」:スーパーリアル作品の一種にピントの合わない部分をあえて作る技法があるが、画面すべてにピントが合っていない不思議な作品。
ヴィゴ・ヨハンスン「きよしこの夜」:室内で明かりのついたクリスマスツリーの周りを輪になって女性と子供が囲んでいる作品。男性は登場しないものなのか。

ラウリツ・アナスン・レング「遅めの朝食、新聞を読む画家の妻」:若い頃は貧しい生活をしていたが、20歳年下の妻を迎え、明るい朝食風景を描いた作品。女性はピンク色のパジャマを着ており、今であれば「このリア充野郎が!」と非難を浴びることだろう。
カール・ホルスーウ「読書する女性のいる室内」:覗き見感までは行かないのだが、こちらに気が付いていない女性を見ている雰囲気ではある。
カール・ホルスーウ「読書する少女のいる室内」:光る机には少女の姿が写り込んでおり、銀器の表現なども実に上手い。

ギーオウ・エーケン「飴色のライティング・ビューロー」:これもビューローの反射具合など、実に上手い。

さて、ここからハマスホイである。展示室には大きな窓枠のような飾りがあり、室内というのを強くイメージさせる雰囲気になっていた。



ヴィルヘルム・ハマスホイ「夏の夜、ティスヴィレ」:地面が全体の1/5くらいしか描かれず、圧倒的に空の色彩である。
ヴィルヘルム・ハマスホイ「古いストーブのある室内」:初めての室内画だそうで、黒いストーブと真っ白な扉の対比が印象的。
ヴィルヘルム・ハマスホイ「夜の室内、画家の母と妻」:妻と言っても婚約者時代に実家を訪問した際の様子らしい。画家の母と妻の間には全くふれあいのようなものが感じられず、妙な空虚さと美しさと怖さがある。後で妻に「あなたのお母さん、私の事気に入らないようね!」かなんか、絶対言われていそうだ。

ヴィルヘルム・ハマスホイ「若いブナの森、フレズレクスヴェアク」:ここまで来て、写実というよりもハマスホイの記憶のフィルタで一度ろ過されたものが描かれているのではないかと思うようになる。
ヴィルヘルム・ハマスホイ「背を向けた若い女性のいる室内」:これぞハマスホイのイメージ通りの作品だ。
ヴィルヘルム・ハマスホイ「室内-開いた扉、ストランゲーゼ30番地」:白い扉が3つも開かれた状態で描かれており、人の不在を強く意識させる。

ヴィルヘルム・ハマスホイ「室内、蝋燭の明かり」:蝋燭の火が届く範囲を表しているのか、画面に楕円の領域があり、誰もいない室内で蝋燭が2本静かに燃えている。これは傑作だ。
ヴィルヘルム・ハマスホイ「クレスチャンスボー宮廷礼拝堂」:四角い建物の上にある、ドーム状の屋根が印象的。淡い緑の色彩もいい。
ヴィルヘルム・ハマスホイ「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」:画家が見ている所から、一室はさんでさらに向うの部屋に妻がいる。この距離感は何なのか。そして手前を見ると、机と錫のトレイが生々しい。



実に地味な画が多かったのだが、ハマスホイの作品の中には塗りのあっさりしたものと、かなり丁寧に塗っているものがあり、一見同じような感じでも良しあしは相当違うと思った。中に何点か、何の面白みもない構図に見えるのだが、見ていて見飽きない作品があるのだ。静かな印象の作品が多いので、比較的落ち着いていることができて、良かった。

最後に一言。「ハマスホイとは俺のことかとハンマースホイ言い」(字余り)。とにかく展覧会名を聞いた時から、これが言いたかった。これ以降、日本ではハマスホイで定着するのかな?

ミュージアムショップではデンマーク絵画ということで期待していたのだが、予想通りアクアヴィット(オールボー)が売っていた。しかし、市販の1.5倍くらいの値段だったので、バカバカしくて買うのはやめた。ハマスホイ系統のものは全体的にデザインが良く、Tシャツもかなり欲しくなったが、こういうところのTシャツは高い。断念である。

またかよ東京(7)

2020年02月08日 11時00分00秒 | ART
昨日は22時ころに寝たせいか、2時過ぎから断続的に目が覚める。最後の2時間くらいは寝たようだが、結局6時起床。ゆっくりと寝るという願望は果たせなかった。

朝食は購入しておいた辛子明太子おにぎり。だらだらした後、9時過ぎにホテルをチェックアウトし、神田から上野へ移動する。



早速、美術館方面に進むが、最初に行こうと思っていた東京都美術館は何だか恐ろしいくらいの行列ができている模様。思わずひるんでしまい、先に東京国立博物館へと向かうことにした。


→上野公園内では角打ちフェスをやっていたが、どうもこういうイベントはあまり好きじゃないのです。

こちらは券売所がまだ開いておらず、100円割引券を持った私は人がいる窓口に並ぶ。前から6人目くらいだったので、それほど時間がかかるまいと思ったら、一番に並んでいたオッサンがやたらに時間がかかるのだ。

これはダメな人の後ろに並んだかと思ったら、どうも複数人の券を購入していた模様。しかし、フォーク型でない並びの時に、時間がかかる人が前にいると、焦るね。つい心の中で「何やってんだよ、券買うのに何万年かかんだよ」と暴言が止まらない。

おまけにこれだけ時間が掛かったら、次の人たちは「私たちはちゃんとしよう」と思わないものだろうか。夫婦らしい男女が、券が1枚で良いのか、2枚なのかでまたもたもたしているのだ。どうして一発で出来ないかね。

と、イライラした結果、私は「出雲と大和、一般1枚」と的確に購入要件を告げて、素早く観覧券を購入。すでに開いた門から、平成館へと急ぐのであった。ふう、幸い入場制限が出るような列にはなっておらず、すぐに展示室へ。

■東京国立博物館「日本書紀成立1300年特別展 出雲と大和」。
会場をいきなり入った所に「心御柱」「宇豆柱」(出雲大社の跡から発掘された3本の丸太を組み合わせて作ったデカい柱。これのおかげで、出雲大社48m説に裏付けができたという重要文化財)があり、大混雑である。係の人が「この時間、奥の方はまだ空いています。お好きな所からご覧ください」というので、第一室の後半あたりから見ることにしたのだが、なるほど、確かに非常に快適に見ることができた。

天理大学付属天理図書館「日本書紀 神代巻(乾元本)下」:私、国粋主義から非常に遠いところにいる人なんだけど、「日本書紀」と聞くと、やっぱりワクワクするよね。但し、7世紀頃に出来たものの1300年頃の写本なので、日本の歴史は2600年もないからと、ウスラバカどもに言っておこう。
荒神谷遺跡出土「銅剣」:今回、168本の銅剣が東京にやって来た。当時は黄金色に輝いていたらしいが、今となってはボロボロの剣も含まれている。国宝。
荒神谷遺跡出土「銅鐸」:銅鐸の中で5号という奴は最古段階の形式なのだそうで、素朴で全体がツルっとしている(文様が無い)。国宝。

荒神谷遺跡出土「銅矛」:間近で見ると黒光りしているものと、錆びて緑青が吹いているものが混じっている。埋まっていた状態によるものなのだろうか。国宝。

さて、これらの国宝は私は古代出雲歴史博物館で見てきたものである。今回、それと比べると、近い距離で見ることができるのと、解説は分かりやすいような気がする。しかし、あの物量感と神秘性というのは東博の展示では感じにくい。

加茂岩倉遺跡出土「銅鐸」:合わせて30個の銅鐸が展示されている。国宝。
伝香川県出土「銅鐸」:動物に弓を射る人の図など、細やかで可愛らしい。国宝。
西谷3号墓出土「弥生土器(丹越系)」:上は特殊壺、下は特殊器台と合体した土器らしい。かなり巨大なもので、ちょっと驚かされる。

神原神社古墳出土「三角縁神獣鏡」:景初3年(=239年)の文字が入っており、卑弥呼に贈られた鏡ではないかと言われているもの。重文。
メスリ山古墳出土「円筒埴輪」:世界一巨大な埴輪(日本以外にもあるのか?)で、見た感じ2.5mくらいはありそうだ。
新沢千塚126号墳出土「ガラス碗」:ササン朝ペルシアのものらしく、かなり美しい。

新沢千塚126号墳出土「火熨斗」:もう火熨斗なんてものを知らない人の方が多かろうが、炭などを入れて使ういわゆるアイロンである。5世紀のものだそうで、こんなころからアイロンがあったんだなあと思うと、感慨が湧いてくる。
石神神宮「七支刀」:刀の線は細く、儀式用なのだろう。国宝。
藤ノ木古墳出土「金銅装鞍金具 前輪/後輪」:鉄の地に金銅張りで、まだ金色が残っている。華やかで高レベルの飾りであり、藤ノ木古墳というのが有名なのも分かる。

笹鉾山2号墳出土「埴輪飾り馬」:これは奈良県出土のものであるが、松江の平所遺跡出土の「埴輪飾り馬」(重文)と類型であるらしい。「技術交流があった」などと解説に書いてあったが、本当に交流なのか? 搾取の香りがしないでもない。
平所遺跡出土「埴輪 見返りの鹿」:鹿が振り返ったポーズをしており、造形的に面白い。重文。
かわらけ谷横穴墓出土「双龍環頭大刀」:刀身は鉄製でいまだ輝いている。重文。

上野1号墳出土「勾玉・管玉」:勾玉の方はメノウ、ガラス、翡翠の3点セットであり、貴重さが伝わってくる。
二名留2号墳出土「子持勾玉」:この勾玉は割と普通の石からできているが、その形の周りに小さな勾玉が付いているので「子持」と呼ばれているのだ。面白い。
天理大学付属天理図書館「古事記上巻(道果本)」:日本書紀に続いて、今度は古事記だ。スサノオが大蛇を退治したという名シーンらしい。

「延喜式(九條家本)巻八、巻十」:巻十では出雲に187の宮社があることが書かれている。いずれも国宝。
天理大学付属天理図書館「播磨国風土記」:大和3山が争った時に、出雲の大神がいさめようとしたということが書いてあるらしい。国宝。しかし、天理大図書館ってすごいね。
當麻寺「持国天立像」:ヒゲがワイルドで、中国っぽい印象の四天王の一人。思った以上に大きな像で、下にいる邪鬼もまた立派な姿だ。

唐招提寺「広目天立像」「多聞天立像」:広目天はやや文人風、多聞天はずっしりとした厚みがある。いずれも国宝。
大安寺「楊柳観音菩薩立像」:顔に怒りを浮かべた珍しい観音。
大寺薬師「四天王像」:ちまちました造形ではなく、これぞ「木造」という感じの四天王だ。

会場の最後まで行ってから第一室に戻ると、若干の余裕ができていたので、何とか全体を見ることができた。この展覧会、何げなく「出雲と大和」と題され、解説では「交流があった」なんてあっさり書かれているが、もっといろいろな何かがあったに決まっているので(←素人の妄想か)。もう少し深く知りたいと思う私であった。


20200201ギャラリー巡り

2020年02月01日 16時27分22秒 | ART
本日は市民→SCARTS→大丸→エッセ→三越→SONY→スカイホール→さいとう→ARTスペース201→富士フイルムの10か所。

■札幌市民ギャラリー「第12回道展U21」。
平井柊哉「落ちる」:交差点を真上から見下ろす図。落ちているのか。
中川志衣「朝が舞台」:カーテンに描かれた夜景を分けて出てくる女性。面白い構図だ。
吉田ひなの「サイ」:立体作品としては大賞作品より好み。新聞紙を表面にしてしっかり作られたサイである。



芦田すなお「(好き)^∞♡♡♡♡」:水面にインクを落としたようなゆらゆらした形をピンク中心に描いている。色彩感覚がステキ。
服部一姫「ほらーさん」:血を流したり傷のある女子の紙人形を沢山(55体か?)貼り付けたもの。
太田寧音「カリギュラ効果」:ロッカーから巨大な猫がはみ出してくるかのような立体作品。

橋本幸奈「春に焦がれる」:雪に横たわる少女。印象的。
阪西ゆりか「盲目」:浴衣の女性をモノトーンで描き、手に持っているりんご飴の部分だけをカラー写真のように描いた作品。目を引く。
唐津桃子「はたちのこっかく」:ほんのりした色で描いた女性の骨格が透けて見える。
西村吏功「最後の捕食」:機械生命のようなものを描いた作品だが、全体の4/5ほどの余白が効果的だ。

■SCARTS「除雪排雪展覧会 SNOW PLOW TRACE ~雪の痕跡~」。
「SNOW PLOW TRACE ~雪の痕跡~」:札幌市内の除雪車の動きを視覚化したもの。



「除雪車操作体験VR」:これは左側で知らない人が体験操作中である。



一階ロビーでは札幌国際芸術祭2020の紹介が合わせてされていたが、何が何だか分かりにくい。

 

北海道以外の人は知らない人も多いと思うが、歩道が凍ってつるつるになると、こういった滑り止め材(つぶの大きな砂のようなもの)をまいて、滑らないようにするのである。



■ギャラリーエッセ「影のすみか」。
「街」:エッセを含む一角を独特の世界(ほぼ現実からは遠い)に仕上げている。
「大樹の都市」:ブリューゲルのバベルの塔にも似た巨大木の表面に住居が張り付いている。商店がないのが惜しまれる。

■ソニーストア札幌α Plaza「漁港に生きる~猫と人とその景色~」。これだけ自然な猫を撮影するのには、時間がかかっているであろう。好感の持てる作品展。

■ARTスペース201「群青」。
我妻禎大「・・・記憶の旅路・・・」:高岡、松本、箱根。まだ見ぬ街にはとても興味を惹かれる。
鈴木比奈子「煙嵐痼疾」:緑の煙を描く。
鈴木比奈子「蝶の庭」:なんとなく夜の蝶の群れのように見える。この人の作品、説明が難しいのだが、見ている分には独特の雰囲気。素晴らしい。

※大丸の8階は海外客向けの案内&休憩所があるのと、ポケモンショップがあるため、エレベータを降りるといつもうんざりするくらい人がいるのだが、今日はかなり人が少なかったように思う。これも観光客が減っているせいか?

20200126ギャラリー巡り

2020年01月26日 12時46分42秒 | ART
ギャラリー巡りと言っても、日曜日恒例の彫刻美術館にだけ行くパターンである。彫刻美術館に登って行く坂道のY字路の所にあった建物が無くなっていた。あまり使いやすい形でもないし、この後どうなるのだろうか。



■本郷新記念札幌彫刻美術館「さっぽろ雪像彫刻展2020」。これも冬恒例の雪像彫刻展。今回もなかなか素敵なデザインのものが多かったが、明るい雪の中ではとにかく写真撮影がしづらい。雰囲気だけでも少しは伝わるのだろうか。

大泉力也「dance」。



佐々木仁美、くまがいきよし、水戸麻記子、関川冬真、丸山恭子「白い道程」:いわゆるすべり台である。



石井誠「Reverberation and Resonance」。

 

北海道芸術デザイン専門学校「やさしい棘」。



佐藤一明「大型犬」。



河崎ゆかり「あのねこれね」。



清水宏晃「風の遺跡」:これは素晴らしい造形力だ。



北海道芸術デザイン専門学校「心の底」。



いつもの彫刻にも台座が付いている。



野村裕之「つつまれる」:よく丸っこい感じをだしたなあ。



星槎道都大学梅田彫刻ゼミ「Mouse」。



熊谷文秀「Landscape of silence」。



■本郷新記念札幌彫刻美術館「本郷新と「無辜の民」」。これほど作品をもってして語らしむべし、という言葉がふさわしい作品もないのではなかろうか。







作品の副題に「油田地帯」とか「アラブ」とついているのを見ると、「ああ、中近東は大変なんだよね」と思う人がいるかもしれないが、それだけではない。本郷が向けた視線は現在の日本にも通じるものである。これらの彫刻は様々な束縛に対する人間の尊厳をテーマにしたものだが、現在の日本だって、職業やジェンダー(いや、性差別といってもいい)、人種差別、多様性への無理解、自分だけよければいいという主張などありとあらゆる束縛が存在している。そして現政権党が積極的にそれを推進しているという、まことに無様なことが起きているのである。その時代に生きる私はこの彫刻を見て、深く胸にしみいるものがあった。彫刻は見るものに何を訴えかけるのか。必見の展覧会である。



ここにも北海道先人カード「本郷新」があった。しかし人物紹介の「社会派スカルプター」はいかがなものだろうか。



道路を下ると素敵に風化した美術館の案内看板を発見した。


20200125ギャラリー巡り

2020年01月25日 16時54分30秒 | ART
本日は芸森→近美の2か所。札幌もいまだ少雪とは言え、そこそこ積もって見えるようになった。



■札幌芸術の森美術館「みんなのミュシャ」。
ミュシャ「ミュシャ自画像、ミュンヘンのアトリエにて」:伝統的な近代西洋画。
ミュシャ「新聞売りの少年のスケッチ」:少年が振り上げた手と足の所に大きく円が描かれ、動きを表しているらしい。アニメ的であるようにも思うが、「ウィトルウィウス的人体図」を思い起こさせる。
ミュシャ「自分の腕に頭を乗せて寄りかかる少女の習作」:アニメ原画の習作といっても違和感がない。

ミュシャ「ゲーテとシラー:『ドイツの歴史の諸場面とエピソード』の挿絵の習作」:上手い。安定の職人挿絵家という感じで、仕事をしてもらいたくなる。
ミュシャ「サロメ:『レスタンプ・モデルヌ』誌」:古典的な画風とサロメのちょいエロな感じが上手い。
ミュシャ「ジスモンダ」:等身大よりちょっと小さいのか。サラ・ベルナールの下に邪鬼のような男が配置されているのが面白い。

ミュシャ「「遠国の姫君」に扮するサラ・ベルナール:「ルフェーヴル=ユティル」ビスケット社のため」:これはサラも喜んだだろう、お姫様ティックなポスター。背景をぼかして人物を引き立てている。
ミュシャ「ベネディクティン」:リキュールのポスターなのだが、これがバーに貼ってあったら、とりあえず飲むよね。
ミュシャ「『鏡によって無限に変化する装飾モティーフ』図6」:実に多様なデザインパターンを集めたもの。

ミュシャ「三つの季節:春、夏、冬」:なぜ「秋」が無いのか不思議に思った。まさか「秋無い=商い」の洒落ではあるまい(←日本じゃない)。
ミュシャ「チェコの音楽界のパンテオン:ポスター/カレンダー」:さまざまな人物が立体的に配置される「群像方式」もミュシャが嚆矢なのか?
ミュシャ「闘志(ヤン・ジシュカ):市長ホールのペンダンティブ画のための大型習作」:等身大以上に人物を描き、象徴主義の香りもする。スラブ叙事詩の気配を感じるな。

1963年にロンドンでミュシャの回顧展が開催され、再発見されたミュシャブームが到来する。そして当時の様々なカルチャーでミュシャ的な表現が見られるようになるのだ。

ロジャー・ディーン「イエスソングス」:ディーンはもう直系の弟子と言っても良いくらいだよね。
ハプシャシュ&ザ・カラード・コート「ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス・コンサート」:このポスターはミュシャの人物像よりも幾何学的モチーフが取り込まれている。
トム・ウィルクス「フラワーズ」:私の感覚では、ストーンズとミュシャは結び付かないなあ。

この他ロック関係では、キング・クリムゾン、ホークウインド、グレイトフル・デッド、シン・リジィ、ピンク・フロイド、ドアーズ、キャンド・ヒート、ジェファーソン・エアプレインなどのレコードジャケット、ポスターが展示されていた。

アレー・ガルザ『デジャー・ソリス&火星の白い猿』:SF界からはデジャー・ソリスが登場。なるほど、イメージがあるね。

この後、1900年代初頭の日本の文芸誌、1970年以降の少女マンガへとつながるのだが、残念ながらあまり詳しくないため書くことが無い。今回、ミュシャの作品で「これは!」というものは少なかったが、彼の確かな技術とプロの仕事、それに対するロマンティックな雰囲気が見て取れ、人気があるのが頷ける。単純に人気というより、プロがあこがれる画家という感じだな。





■北海道立近代美術館「北海道151年のヴンダーカンマー」。これはすごい!
田本研造「五稜郭伐氷図」:ボストンから氷を輸入していたのが、その代わりに函館で作られるようになったことを記録する写真。
歌川広重三代「大日本物産図絵 北海道函館氷輸出之図」:そしてそれが浮世絵にも残っている。
武林盛一「札幌麦酒醸造所開業式」:いまもサッポロビール園に残る(作り直しているのかもしれないが)、樽に字を書いたものが写っている。

歌川広重三代「現如上人北海道開拓錦絵」:「ゼニバコ紅魚の奇異」などと説明があり、アカエイが描かれている。
室蘭・小林「白老駅でのアイヌ(旧北炭所蔵写真)」:線路を中心に輪をくまされ、儀式を行うアイヌの人々。強要の香りがする。
「小樽高嶋鰊漁の図」:作者名が残っていないが、魚の一つ一つまで細かく描いたなかなかの作品。

蝦夷試製「アイヌ熊祭煎茶器セット」:小ぶりのちゃんとした器だ。九谷焼との関連性があるらしいが、謎が多く、100点以下しか現在残っていないらしい。
伝・高橋由一「鮭」:北大植物園・博物館蔵だそうだ。「鮭」を3点ともみている私だが、うーん、どうだろう。由一作であることを否定できないが、ちょっと表現が違うように思えるところもある(←ど素人なので良く分かってない)。
吉田初三郎「北海道鳥瞰図」:北海道博物館所蔵作品で、博物館の2階入口でパネル展示されているものか。

松島正幸「小樽港の築港」:こんなに大きな作品がなぜ知られていないのか?
亀井鑑太郎「日本重要水産動物図」:魚が右向き左向きと混在しているのは不思議だ。1枚の図にあざらし、鯨、ウミガメ、リクガメが混在しているものもあり、この辺も拘りはなかったのか。

続いて北海道の科学にまつわる展示があり、北大博物館の収蔵品も展示されている。昔の機械で、ミクロトーム、ゴニオメーター、AEROTOPOGRAPHなど、何だか分からないようなものが展示されている。また、「皮膚病変の立体模型(ムラージュ)」も北大博物館外で展示されるのは、珍しいだろう。

そんな中に現代作家である小宮伸二の作品が展示されており、何が本当か嘘か分からなくなりそうなところが面白い。

この後、炭鉱の歴史コーナーでは石炭で作られた熊の置物(木彫りの例の奴にそっくり)、鉄道コーナーでは駅名版「幌内」「三笠」「幾春別」、行先表示板「三笠-幌内」「札幌行」などが展示されている。また「札幌鉄道局管内路線図」(1927)を見ると、富良野駅はないし(当時は上富良野の次は下富良野だった模様)、手稲が無くて「軽川」駅があるし、千歳線は無いし、うーん、違うもんだなあ。

最後はオリンピックコーナーで、ニッカの「HiHi NIKKA」(マグナムボトル)、「SUNTORY GOLD」(マグナムボトル)など珍しい展示があった。

ここまで北海道の見たこともない展示で、北海道人ならば胸が熱くなること必至なのだが、北海道の負の歴史は一部を除いてスルーされているように思えた。しかし、最後にそれを考えさせるような展示があった。

row&row(張小船&小林耕二郎)「さようなら、オリンピック」:氷の上を花の形をしたマグネットのようなものがくるくる回転するフィギュアスケートに見立てた映像や、丸い口のゴミ箱で五輪マークを作る展示である。花はハマナス(固有種)、オオハンゴンソウ(帰化植物)、レブンアツモリソウ(絶滅危惧種)、ラベンダー(交雑種)があることが表示され、花と言っても一筋縄では行かないことが分かる。

「ハマナス and オオハンゴンソウ 万国食べよう」:そうは言っても単純に帰化植物は禁止で済むものではない。この映像作品では、食卓に上る食材の伝来ルートが表示され、世界のありとあらゆるところから食用植物がやってきたことが再認識させられる。そしてハマナスとオオハンゴンソウが人間の形を取って鍋料理を食べるのだが、ある時は食が進まず、ある時はオオハンゴンソウが鍋の中身を自分だけで食べようとする。またその次のシーンではオオハンゴンソウがハマナスの皿に料理を持ってやり、色々な関係性がありうることを示しているようだ。

最後に少し考えさせられることになったが、アイヌ人との関係、開拓の悲惨さ、炭鉱災害・政策による廃坑、鉄道もどんどん失われていく北海道。展示がすごい、素晴らしいだけでは済まないものがあると思った。

それはそうとして、少なくとも北海道出身の人は必見! だと思う。



今日は大物展覧会2つで疲れた。そろそろ帰りますか(珍しく本屋に行くのを忘れた)。


20200124ギャラリー巡り

2020年01月24日 17時04分20秒 | ART
本日は資料館→札幌デザイナー学院→大通→北海道文化財団アートスペース→富士フイルム→らいらっく→三越→スカイホール→さいとう→ARTスペース201→HUG→STV北2条→STV時計台通→大丸→紀伊国屋の15か所。

■札幌市資料館「専門学校札幌ビジュアルアーツ写真学科 卒業制作作品展」。
谷江俊輔「衰退」:夕張の写真はまあ想像がつくといえばつくのだが、SL館の見る影もない無残な姿には驚いた。

資料館の建物の前ではつららづくりが…、あまり進んでいないようだ。



■札幌デザイナー学院「第29回卒業制作作品展」。
高橋梢太「CHLANDNI EXHIBITION」:さまざまな周波数の音で黒い紙の上に置いた粒子が作る形を表現したもの。周波数によりピッチが変わるのは当然だが、かなり形そのものも違うのがどういう理屈なのやら。
高橋柚帆「オリジナル絵本『よるをゆく』」:いつからこのような夜歩きにときめかなくなったのか(→明け方まで酒を飲むようになってから)。

■アートスペース「寺島デザインポスター展2019「おいしいポスターたち」」。スタイリッシュなポスターが多く、感覚的に一番「美味そう!」となるのは展覧会案内のこれであった。



■ARTスペース201「群青」。
Yasushi Ito「There’s a Place」:雪祭りの写真があるので「あ~あ」と思ったが、函館の大門、立石と思われる写真は素晴らしい雰囲気だ。
長内正志「憶録情」:函館という街も非常に様になるところである(行きたくなった)。
田中季里「(無題?)」:BLUEは別世界への入口なのだろうか。
久藤エリコ「(無題?)」:切り絵が立体作品になっており、どんどん面白くなっている。

創成川の東から見る大通方面。





■STV北2条ビル「北遊ビ きたのくにのかるたとはなふだ」。大通公園で行われるイベントを花札のデザインで表現したもの。



■STV時計台通ビル「北遊ビ きたのくにのかるたとはなふだ」。こちらは北海道各地の美味いものを盛り込んだカルタだ。

 

そういえば、道特会館から南に出たところにあるビルにFree Information Galleryというのがあった。道路に面した入口はシャッターが下りており、ビル内から入る入口は持ち主の会社さんの入口のようでメチャクチャ入りにくい。どういう運営形態なのかなあ。



夕方琴似に戻ると、アイスキャンドルが点灯していた。


20200118ギャラリー巡り

2020年01月18日 16時08分33秒 | ART
本日は三岸→資料館→富士フイルム→三越→SONY→スカイホール→さいとう→ARTスペース→SCARTS→エッセ→紀伊国屋の11か所。

■三岸好太郎美術館「子どもと楽しむmima」。展示されている作品は大体いつも通りだが、クイズや塗り絵など、子供のための工夫がなされている。



伊藤千織「海洋ヲ渡ル蝶」:三岸作品からイメージしたデザインで展示がなされていた。



三岸好太郎「金蓮花」:2016年に千秋庵から寄贈された作品。あまり展示されていない作品のように思う。



三岸好太郎「三人家族」:これも展示されるのは比較的珍しい作品だ。



マールのmimaたんけんすごろくがオジサンにも貰える。



それから北海道のいろいろな施設で「先人カード」というのを配布し始めたらしい。札幌市内で7か所しか配布していないのに、北海道全域で100か所近くで配布しているという、恐ろしく収集のハードルが高いカードだ。これをコンプリートする人はおそらくいるまい。



■三越「アートフェア2020」。
シスレー「ロワン河畔の小屋」:シスレーの作品としてはパッとしない方だと思うが、1億9800万円。うーむ。
三島喜美代「Box Asahi-10」:段ボールが置いてあったので、「いくら何でも酷いな」と思ったら、アサヒビールの段ボールと新聞紙、ビール缶をセラミックで作り出した作品。うーむ、ちょっとすごいぞ。
見崎彰広「扉の前で」:鉛筆画のスーパーリアリズム作品。この分野にちょっとうるさい私も感心しきりだ。

■さいとうギャラリー「New Point VOL.17」。
小川豊「心のひだ」:油彩作品が濃度を高め続けてちょっと限界を感じていたのだが、今回のポップアート的な小品は新しい道を切り開くのではないかと思えるような作品だった。

■SCARTS「ボーダレスアート in スカーツ」。今回は写真多めでご紹介したい。
上ノ大作「SQUARE」:何とも奇妙なちゃぶ台というか。



鉄地河原勝彦「(作品名記録漏れ)」:人の顔というのは面白いものなのだろう。作品名記録漏れというのは、私は大体作品タイトルも写真に収めているのだが、それが無かったものである。もしかすると、そもそも無題なのかもしれない。



阿部淑子「イギリスの町並み」:パッと見てヴラマンクという感じもあるが、私の頭にはなぜかトーマス・マン「魔の山」という言葉が浮き上がって来た。今回の中で私のお勧め作品。



遠藤雛「(作品名記録漏れ)」:とにかく魅力あるミニチュア。ガチャガチャも発売しているそうだ。



ゆうくん「(作品名記録漏れ)」:うーん、引き付けられる。作品紹介に「ビュフェを思い起こさせる」とあった。



高島衣里「(作品名記録漏れ)」:たまごカレーライス、かまぼこ、まろやかジンギスカン、ドライキーマカレー、ウインナーカレー、メロンなど食べ物の名前がずっと綴ってあるノート。もちろんご本人はカレーが好きなのだそうだ。



吉田幸敏「(作品名記録漏れ)」:この色彩感覚はなかなか素晴らしいと思う。



吉野隆幸「BO・謨」:お祭りワッショイのにぎやかな感じ。


今年2回目の東京(2)

2020年01月13日 16時07分48秒 | ART
世界貿易センタービルから大門駅に移動し、六本木へ。前回東京に来た時には閉館していた国立新美術館へ行こう。

■国立新美術館「ブダペスト ヨーロッパとハンガリーの美術400年」。今一つ有名どころがないせいか、ほぼ混雑していない。最初の方こそちょっと人が詰まっていたが、後半は自由に気持ちよく見ることのできる状態だった。展示はテーマ別にドイツとネーデルラント→イタリア→ヴェネツィア→オランダとコレクションが展示されている。

エル・グレコ「聖小ヤコブ(男性の頭部の習作)」:エル・グレコの作品は何か違うよね。
ペドロ・ヌニェス・デ・ビリャビセンシオ「リンゴがこぼれた籠」:犬にまとわりつかれてリンゴをこぼした少年の白い足が目立つ。そういう趣味の人向けかもしれないと思ってしまう。
フランチェスコ・フォスキ「水車小屋の前に人物のいる冬の川の風景」:冬の風景は何となく共感できる。霧のかかった少々幻想味のある絵画だ。

ルカ・デッラ・ロッビア「キリストと聖トマス」:テラコッタ製でキリストの頭部がないところが残念だ。
ヴィクトル・カイザー「過ぎ越しの祭りの宴」:レリーフで石灰岩に掘っているせいか、線がくっきりと浮き出している。
レオンハルト・ケルン「三美神」:シナノキを使った作品だが、西欧で木彫は珍しいのではないか?

フランツ・クサーヴァー・メッサーシュミット「性格表現の頭像 あくびをする人」:妙にリアルなハゲおやじの彫刻。
フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー「ウィーンのマクダレーネングリュントの物乞いの少年」:あどけない風を装っている少年。こちらに金を求めて手を伸ばしている。その隣の作品では子供が宝石遊びをしており、貧富の差がツラい。
ムンカーチ・ミハーイ「パリの室内(本を読む女性)」:部屋の描写は荒っぽいけど、女性が魅力的。

ギュスターヴ・ドレ「白いショールをまとった若い女性」:ドレってこういう絵を描くのかと思わせる、大きな目をしたアニメ調の女性。あえて目をぼかしている。
シニェイ・メルシェ・パール「ヒバリ」:ヌードの女性が空のヒバリを見上げる作品。女神を描いたわけではないこの作品はやはり非難されたとのこと。ここにもう一人のマネがいた。
ムンカーチ・ミハーイ「フランツ・リストの肖像」:伝統的な肖像画で、リストはズォーダー大帝っぽい顔をしている。

ムンカーチ・ミハーイ「「村の英雄」のための習作(テーブルに寄り掛かる二人の若者)」:古典主義かと思ったミハーイだが、この作品はパンクチュアルな筆跡が残り、近代的リアリズムを感じる。
ムンカーチ・ミハーイ「ほこりっぽい道II」:今度は空気を描いており、ここにターナーがいたと言っておこう。
メドニャーンスキ・ラースロー「岩山のある水辺の風景」:もう少しで抽象画が生まれそう。

アデルスティーン・ノーマン「ノルウェーのフィヨルド」:強い光でフィヨルドを描き、これはセガンティーニ的だ。
ジュール・ジョゼフ・ルフェーヴル「オンディーヌ」:この女性美はアングルの「泉」に近いか。
アルノルト・ベックリン「村の鍛冶屋を訪れるケンタウロス」:ケンタウロスが蹄の蹄鉄を直しに来るというのもユーモラスだが、カラフルな作品で少々意外だ。

レオ・プッツ「牧歌」:水面のモヤモヤしたところは、ムンク入ってます。
リップル=ローナイ・ヨージェフ「赤ワインを飲む私の父とピアチェク伯父さん」:ナビ派の作品で、なんとも童話的で好感が持てる。
ボルトニク・シャーンドル「6人の人物のコンポジション」:20世紀に入った作品も展示されている。これは茶色の男が3人、青い男が3人、幾何学的で前衛っぽい作品。

ブダペストにまつわる美術の400年を追ってくることになったが、やはり同時代の他国の作品や美術の傾向に近いものもあり、当然、様々な情報が入っていたということだろう。ある種の平行進化のような感覚も受けた。



ここから青山墓地の中を歩いて根津美術館へ移動。今回は道に迷わなかったせいか、歩いて15分くらいかなあ。東京の都心は地理さえわかれば、実はいろいろな所に歩いて行けるような気がする。しかも、今の季節は暑くないので、そんなにつらくない。



■根津美術館「<対>で見る絵画」。
狩野山雪「梟鶏図」:梟は上目づかい、鶏は悪い目をしたユーモラスな作品。
宮川長春「見立那須与一図」:船に乗る御簾の影の女性など、実に細やかな描写。
「吉野龍田図屏風」:桜を水の泡ほど大量に描き、紅葉は葉の一部を白抜きにしてバランスをとった作品。



春木南冥「三夕図」:ほぼ水墨ながら、ほんのり水の青、木々の緑が素晴らしい。
「掃象図」:洗われている象が目を細めて喜んでいるかのようだ。

展示室5では「百椿図」というすごい作品も展示されているが、それ以外にも子年にちなんだ、面白い作品が出ている。

円山応挙「鼠宝尽図」:黒目の鼠が可愛い。
河鍋暁斎「鼠獅子舞図」:2匹が獅子舞を、もう1匹がお囃子の音楽を鳴らしている。背景に大黒天の大きな袋が描かれており、暁斎の筆は切れがいい。
「鼠短檠」:油灯篭の皿に自動的に鼠の口から油が落ちるようになっている細工物。

さらにここから、太田記念美術館に歩いて向かう。途中、信じられない人出に出くわすが、そうか、地下鉄の明治神宮前駅の近くに、明治神宮があるのか(←当たり前だ!)。いやー、単なる駅名だと思っているから、気が付かなかったよ(←バカ?)。

■太田記念美術館「開館40周年記念 肉筆浮世絵名品展 歌麿・北斎・応為」。なかなか素晴らしい展覧会。これが700円で見ることができていいのか。

奥村政信「案文の遊女」:客に手紙を書くために、物語を読んで表現の勉強をしているらしい、なかなか素敵な作品。
鈴木春信「二世瀬川菊之丞図」:細い画面になよっと、カラフルな女性を描いた作品。
水野廬朝「向島桜下二美人図」:1450石の旗本だったらしく、高い絵の具を使っているらしい。確かにピンク色の着物は見たことがないかも。

歌川豊広「観桜酒宴図」:あでやかでのんびりとした宴の様子。
歌川国貞「七代目市川團十郎の暫」:ある種の突飛さがすごい。いわゆるKISSみたいなものか。
葛飾北斎「源氏物語図」:カラフルで華やか。凄味がある。

河鍋暁斎「達磨耳かき図」:女性に耳かきをされニヤケそうな、何とかニヒルにとどまっているような達磨である。
菱川師宣「不破名護屋敵討絵巻」:さりげなく、二人の首が吹っ飛んでいるなど、すごい画。
葛飾北斎「雨中の虎」:ギメ美術館の「龍図」と対の作品だという名作。

葛飾応為「吉原格子先之図」:まさに光と影を描き出した作品。吉原の闇を描くのは女性の応為ならではというところもあるだろうか。想像していたのよりかなり小さい作品(A4くらい)だが、迫力がありちょっと驚いた。



これで本日の美術館巡りは終了。

新春小樽(1)

2020年01月11日 17時00分45秒 | ART
小樽に到着。小樽駅では「GLASS ART GALLARY」が開催されている。



木村直樹「こおりゆきだるま」。



新渡戸悠介「ゆきだるもんすたー」。



川田由香里「まちがいさがし」。ひとつだけ違う雪だるまがいるそうだ。



廣川雅恵「雪だるまのチェス」。



■産業会館「文化庁メディア芸術祭小樽展」。昔はこの建物に産業会館という掲示があったような気がするんだけどなあ。



1階から建物に入ると、展覧会をやっているという掲示の類はまったく見当たらない。小樽の名産などが展示されているが、ここに人は集まるのだろうか?(ちょっと広いスペースで麻雀教室か大会のようなものをやっており、そこは満員だった)。



どうやら会場は2階らしいのだが、階段にも案内などは何もない。



趣のある照明を見ながら階段を昇る。



どうやら歩道橋直結の2階入口には、会場案内があるようだ。



近森基「KAGE-table」:テーブルにある影は実は映像で、左下のトゲの影がちょっと歪んでいるのが分かると思う。



近森基「In The Woods」:影絵で作った森の風景。自分もこの影絵に参加すると、センサーが人を検知して、木の枝や動物などを登場させるインタラクティブ作品。キリギリスか?



猪がこっちにやって来た。



映像作品が多いので、その手のものを苦手とする私は程々で会場を出た。もう少しちゃんと展覧会をやっていることを分かるようにしてほしいものである。あまつさえ、1階の入口には4月から2階ホールの貸し出しが休止になるという張り紙さえあるではないか。



商店街を通り、次の会場へ。途中の喫茶店には「モヤモヤさまあ~ず2」の番組に登場したという張り紙があった。そういえば札幌・小樽訪問の回を録画してまだ見ていない。



■三番庫会場「文化庁メディア芸術祭小樽展」。いわゆる運河プラザである。
チームラボ「百年海図巻アニメーションのジオラマ」。海の一日と満ち引きを表現した作品。

まさしく琳派である。



画面右手から岩が現れる。



やがて潮が満ち、暗くなってきた。



朝焼けの光だろうか。



児玉幸子「モルフォタワー」:磁力を帯びた流体が形作る造形にはかなり引き込まれる。おそらく塔の形をした部分に小さな穴があり、そこから磁性流体(液状)が押し出され、磁力と重力、粘性でいろいろな形をとるのだと思う。



次の作品は作品名・作家名の記録を漏らしてしまった。回転するリングに光を当てると人物像が浮き上がる仕組みだ。



これは作品ではなく、運河プラザのワイングラスタワー。



■市立小樽美術館「小樽・芸術家の現在シリーズ 風土」。
Kit-A「Phoenix~不死鳥」:ガラスケース内のインスタレーション展示。未来文明の生命体が滅び去った文明(我々の事)の遺物を発見したという設定で、融けたロードコーンが展示されている。展示解説も未来の言葉ということで読めないのだが、ロードコーンには原子力マークがついており、おそらく、原子力発電所の暴走でロードコーンが融けたということのようだ。未来文明の主たちはどうやらこれを「神殿跡」だと勘違いをしているようで、これから発掘調査をするべきだといったことが記載されている。

阿部典英「ユキミザケ・サカサツララ」:木の枝の上に帽子のような雪が乗っているものと、地面から生える透明の棒(サカサツララ)が展示されている。初回発表は1983年の北海道立近代美術館「北方のイメージ-北海道の美術'83」とのことだが、北海道の風土を的確に表現した作品だ。
渡辺行夫「Power of Plant I」:オオイタドリを使って作った作品。人が頭に壁をつけて前のめりになっているような造形が面白い。



美術館3階の一原有徳記念ホール前には渡辺行夫「鼎立する形態・小」が展示されていた。



■市立小樽文学館「没後20年 井尻正二展」。いったい誰なのと思って展示を見てみたが、小樽市出身の古生物学者、地理学者だそうだ。彼の全著作物(論文以外)が展示されるなど、充実した展示だった。



この後、喫茶コーナーで烏龍茶を頂いて休憩してから夜の街に繰り出す。

20200111ギャラリー巡り

2020年01月11日 14時59分46秒 | ART
本日は大通→富士フイルム→三越→スカイホール→さいとう→道新→SCARTS→大丸→小樽に向かい、小樽駅→小樽市産業会館→三番庫→小樽美術館→小樽文学館の13か所。

■大通美術館「楢原武正展」。ド迫力の展示が新年一発目の楽しみである。美術館の右奥の壁には黒く塗った木などを立てかけた展示。正面奥の壁には黒い段ボールなどの隙間から赤い下地が見える。印象としては炭鉱住宅を思わせるような感じか。私が子供の頃はまだ、外側が単なる板張りの家も結構あったことを思い出す。

会場にいた楢原さんに「毎年、新年楽しみにうかがっています」とご挨拶して、美術館を出た。大通の雪祭り会場は雪像作成が始まっている。今年は雪が少ないので、運んでくるのに手間がかかるだろう。



札幌市の中心部の通りには雪もほとんどなく、日が差すと春のようにすら感じられる。



■スカイホール「第25回みなもの会新春展 CO-OP中央文化教室日本画40周年 みなもの会帯広25周年」。
岡崎岩雄「夷酋列像イコトイ」:エレベータ前に展示されていた作品。かなり上手い。



■SCARTS「乙女電芸部と札幌の冬を考えよう!展」。
「雪量カウンター」:積極的に雪かきをしたくなるようにスコップにカウンターを取り付け、ポイント化を考えたもの。さらにGPSで雪かきする区画を判別し、場所によって(ご老人の住む家の前など)、ポイントが加重されるというアイディアである。きっとこのスコップだけを振ってポイントをかせぐヤツがいるので、雪がのっていることを判断するための重量センサーか何かが必要になってくるだろう。



これまで気が付いていなかったのだが、市民プラザの一角に「「旧王子サーモン館」のレンガ」というのが展示されていた。



■大丸画廊「大丸絵画市」。
一原有徳「無題」:そこそこ大きなモノタイプが33万円で販売されていた。ちょっと欲しい。

この後、いしかりライナーで小樽へと向かう。手稲までは結構な混雑。海が見えてくると、観光客らしい人が写真を撮って盛り上がっていた。小樽については別項で。

新年一発目の東京(7)

2020年01月05日 15時58分18秒 | ART
昼食を食べ終わって、午後の美術館巡りへ。

■三菱一号館美術館「印象派からその先へ-」。
エドガー・ドガ「踊り子たち(ピンクと緑)」:バレリーナのチュチュがピンクと緑のグラデーションになっているのだが、その色合いがいい。それからポーズの押さえ方が実にうまいのである。



メアリー・カサット「マリー=ルイーズ・デュラン=リュエルの肖像」:少々鼻の大きい女の子であるが、ファニーで可愛らしい姿をざっと早いタッチで描いたいい作品。
ジョルジュ・ルオー「バラの髪飾りの女」:肩上の部分を描いたルオーによくある構図の作品だが、女性の顔は珍しいように思う。

モーリス・ド・ヴラマンク「セーヌ川の岸辺」:緑と赤と黒の絵画。鮮やかな色彩がフォーヴの特徴を示しており、こんな作品を描くんだヴラマンク、と思った。
モーリス・ド・ヴラマンク「大きな花瓶の花」:ヴラマンクといえば「陰鬱」というイメージだったのだが、これも華やかな色使い。へえー。
モーリス・ド・ヴラマンク「村はずれの橋」:もろにセザンヌ調。これは佐伯のことを言えんぞ。

アンリ・ルソー「工場のある町」:工場の煙突から煙が上がっているところを描いているのだが、工場そのものは木でほとんど隠れているという謎の作品。
ジョルジュ・ブラック「洋梨のある静物(テーブル)」:梨と梨を置いてあるテーブルの両方が黄色のまだら文様で描かれている。楕円のキャンバス全体を描いている静物でうまく分割している印象だ。
パブロ・ピカソ「フォンテーヌブローの風景」:木が変な生き物のように見え、さすがピカソという感じがする。

パブロ・ピカソ「女の肖像(マリー=テレーズ・ワルテル)」:多分、描かれているのは若くて小粋なイイ女である(顔はめちゃくちゃなのだが)。
モイーズ・キスリング「背中を向けた裸婦」:キスリングのオリエンタルテイスト(なのか?)はいいよね。今年は札幌で展覧会もあるとのことで、楽しみである。

全体的に優しい作品をコレクションしている感がある。中ではヴラマンクのイメージが一新されたところが収穫だっただろうか。


→撮影できるのは、複製パネルである。



丸の内には彫刻が多く設置されているが、これは初めて見たような気がする、草間彌生「われは南瓜2013」。



ちょっと歩いて、もう一か所美術館へ。

■出光美術館「やきもの入門」。
「深鉢型土器(火炎土器)」:縁の透かし彫りが相当複雑。壊れるリスクを負ってまでこういう形を作りたかったということか。
「埴輪 弓を引く兵士」:これも弓を引く手や、弓の造形が壊れたりしただろうに。
「朱彩壺形土器」:弥生時代後期の土器だが、縄文の気風が残る関東・千葉で作られたのだとか。確かに鋸歯文というのが、縄文にも見える。

「須恵器長頸壺」:古墳時代後期のものだが、自然釉(灰釉)がかかっており、色彩の変化が出ている。
「灰釉短頸壺」:これは緑釉がかかっている。壺全体に均一にかかっていることから、ある程度意図的に作成しているものらしい。
「三彩練上手枕」:濃茶と薄い茶の土を練り上げ、さらに緑と褐色の釉薬で三彩にしたもの。中国唐時代のものだが、凝っている。

「油滴白覆輪天目」:油滴がくっきり出た作品。縁の白と全体の黒のバランスも見どころ。
「盆栽図屏風」:様々な鉢と植物の盆栽を描いた屏風。趣味性が強い。
「色絵松竹梅鳥文輪花皿」:柿右衛門の作品とそれをモデルにしてマイセン窯で作った2点が並んでいる。マイセンの絵付けには余白が感じられないが、色彩の明確さがある。

富本憲吉「色絵金銀彩羊歯文角瓶」:富本は「模様から模様を作るべからず」と言って、身近な風景や植物のスケッチから文を作っていたとのこと。
板谷波山「天目茶碗 銘命乞い」:夕焼けのようなグラデーションが素晴らしい。ただし、波山が失敗だとして壊そうとしたのを、出光佐三が譲り受けたため、こういう銘になったらしい。
ルオー「シエールの思い出」:別室のルオー展示。カラフルで迫力のある山を描いた作品で、宗教臭さがないのでいい。



これで美術館巡りは終了だ。休憩コーナーで冷たいお茶を飲んで、歩いてホテルに戻る。しばし休憩してから、夜の街に繰り出すか。

新年一発目の東京(5)

2020年01月05日 11時56分50秒 | ART
身支度をして、9時半ころに出発。銀座から六本木に向かう。



まずは国立新美術館だ…、と思ったら、人気がなく、年始は1月8日からなんだって…。いや、そりゃ予想もしなかったな。





やむを得ず歩いて森ビルへ。



■森アーツセンターギャラリー「天空ノ鉄道物語」。親子連れが続々と訪れて、この後、混雑しそうなこちらから見ていこう。



北海道の昔の国鉄路線図。さぞかし乗りごたえがあっただろう。



北海道関係の資料を写真に収める。撮影は動画以外ほぼ全部可能であった。



北斗星のヘッドマーク。



窓からは東京タワーとスカイツリーが同時に見える。



映像展示コーナーにあった、昔懐かしい駅舎の椅子。



「電車でGO!!」はちょっとやってみたかったが、子供たちに譲ろう。



なかなか古めの券売機。



かなり見どころがあったが、やっぱり地域性の偏り(関東中心)はあるかも。

■森美術館「未来と芸術展」。こちらも相当見ごたえがあった。科学が招く未来は決して心地よいものだけではないが、ビジョンを提示して考えていく意味合いはあると思う。



ミハエル・ハンスマイヤー「ムカルナスの変異」:イスラーム建築のパターンをコンピュータシミュレーションでデザインしたもの。



OPEN MEALS「SUSHI SINGULARITY」:原材料をミックスして、3Dプリンターで寿司を作って食べさせるという発想。



左からウニ、マグロ、イカの3点。



8種類のメニューが提示されていたが、美味しそうに見えてきた。



マチュー・ケルビーニ「倫理的自動運転車」:自動運転が実用化される時代だが、何を優先するかによって選択される危機回避の手段が異なるという考え方を提示したものだ。大きく分けて、倫理重視か運転者の安全重視か、総コスト重視かが選択可能になる。事故がおきそうになる相手もスクールバス、酔っ払いの歩行者、サイクリスト、トランプ大統領が登場する。



運転している中で事故の可能性が高まると、情報収集を行い、周囲の状況や人にまつわる情報を収集する。



相手がトランプ大統領だったため、総コスト重視シナリオでは、運転しているあなたが障害物に突っ込むべきだという判断がされた。



こんな結果にあなたは納得できるだろうか? というのがこの作品の問題提起である。

やくしまるえつこ「わたしは人類」:人類滅亡後に向けて微生物のDNAを記憶媒体にして音楽を残すという発想の作品。やけにポップな音楽が流れており、人類が滅んだあと、これを聞くものは次に進化してきた生物だろうか。はたまた宇宙人であろうか。



ダン・K・チェン「末期医療ロボット」:死期が迫った患者の腕をさすり、死ぬのを看取ってくれるロボット。私が死ぬときにはこいつのもう少し良いやつに見守られそうな気がする。



マイク・タイカ「私たちと彼ら」:AIで作り出された架空の人物肖像とツイートを組み合わせたインスタレーション。



メモ・アクテン「深い瞑想:60分で見る、ほとんど「すべて」の略史」:美しい風景写真が写っているが、これは写真共有サイトの写真をもとに人工知能が作り出した架空の風景なのである。もう、何が本物かは分からない時代が来ているようだ。



かなり疲れて、最後に3階にあるA/Dギャラリーで古賀崇洋の「凸Unevenness凹」という展覧会を見た。


新年一発目の東京(2)

2020年01月04日 16時00分49秒 | ART
■国立西洋美術館「ハプスブルグ展」。かなりの混雑だったので、一部の展示はスキップしたが…

ジョルジョーネ「青年の肖像」:これは近代の人物画だな(実際は1500年代初頭)。
ディエゴ・ベラスケス「スペイン国王フェリペ4世の肖像」:あのフェリペ顔である。
ディエゴ・ベラスケス「青いドレスの王女マルガリータ・テレサ」:あのベラスケスレース(遠くから見るとレースだが、近くで見ると白いグチャグチャ)を堪能できる。



ファン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソ「緑のドレスの王女マルガリータ・テレサ」:ベラスケスの作品を模してかなり上手いのだが、あのレースの表現は無理か。
ヤン・トマス「神聖ローマ皇帝レオポルト1世と皇妃マルガリータ・テレサの宮中晩餐会」:U字テーブルに大勢の人が生き生きと描かれている。
カルロ・ドルチ「オーストリア大公女クラウディア・フェリツィタス」:これは現代風の人物画。現代の作家が古典風に描いたようにも見える。

バルトロメオ・マンフレーディ「キリスト捕縛」:事件に迫る臨場感があり、フォーカス・フライデー的(古い?)な感じすらある。
ヤン・ブリューゲル(父)、ハンス・ロッテンハマー「エジプト逃避途上の休息」:木の枝葉の部分、陰影による立体感表現が素晴らしい。
ヤン・ブリューゲル(父)「堕罪の場面のある楽園の風景」:リンゴがこれ見よがしに楽園にあるんだけど、やっぱりキリスト教の神様、おかしくない?

マルティン・ファン・メイテンス(子)「皇妃マリア・テレジア」:ド迫力の女帝に文句言えず。これに比べると隣にあったヨーゼフ2世の肖像など、線が細すぎて頼りにならぬわ。
マリー・ルイーズ・エリザベト・ヴィジェ=ルブラン「フランス王妃マリー・アントワネット」:ある意味、パーフェクトな肖像画。レースも細かく隅々まで行き届いている。
ヨハン・ゾファニー「7歳のオーストリア大公フランツ」:ちょっとスーパーリアルが入っている。

カルロ・ドルチ「聖母子」:これは上手い。理想のマリア様だ。
ベルトルト・リッパイ「バート・イシュルのオーストリア=ハンガリー二重帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世とセルビア王アレクサンダル」:1891年の作だが、この時代になると馬車に乗る皇帝を人々が道の上から見下ろしているんだよなあ。



この後、常設展を高速で見て回る。途中に「内藤コレクション展 ゴシック写本の小宇宙」というのがあり、目が痛くなるが結構面白かった。

「ファクシミリ版ランベス黙示録」。





駅に戻るときに上野の森美術館「ゴッホ展」の前を通ったが、券を購入してから待ち時間50分の案内板があった。日本人、どれだけゴッホ好きか知らないが、これはさすがにキツい。

上野から竹橋に移動する。

■東京国立近代美術館「窓をめぐるアートと建築の旅 窓展」。窓展というのは興味深いね。ある種「四角形展」ともいえるのではないだろうか。

ウジェーヌ・アジェ「紳士服店」:「窓」が生まれる条件って、いろいろあるよね。ここに出てくるのはショウ・ウインドウなのだが、これには当然、商業(広告)という概念が必要である。さらには素材としてのガラスが容易に手に入る必要もあるし、北国の人間としては暖房がちゃんとしていないと、窓を大きく作ろうという気はしないと思う。

茂田井武「到着早々働くこととなりぬ/コック場は半分地下にありて往来の人馬、ただ足のみ見ゆ」:半地下のコック場で働く作者。牢獄のようでもあるが、なぜか色彩は明るい。
パウル・クレー「破壊された村」:建物が傾いているが、破壊された感は薄く、色合いが楽しい。
パウル・クレー「花ひらく木をめぐる抽象」:カラーのモザイクタイルのような作品だが、手で描いたアナログな感じがいい。味がある。

撮影可能な作品もあった。ピエール・ボナール「静物、開いた窓、トルーヴィル」。



アンリ・マティス「待つ」。



展示の途中でちょっとした受付のようなところがあり、そこに入るときには以下の振る舞いをしなければならないというのが、西京人(小沢剛、陳劭雄、ギムホンソック)「第3章:ようこそ西京に-西京入国管理局」という作品であった。私は一応、大きく手を広げてニッコリ笑ってみた。



入国時の説明ビデオも見る。



ローマン・シグネール「よろい戸」:扉の横にある扇風機がまわると戸がとじ、向こう側にある扇風機がまわると戸が開くというバカバカしい作品。



常設展で河原温「物置小屋の中の出来事」。



草間彌生「天上よりの啓示」。



丸山直文「Gorden 1」。



赤瀬川原平「架空の事実」。



■同工芸館「所蔵作品展 パッション20 今みておきたい工芸の想い」。工芸館は金沢に移転するため、あちこちに「さらば」という記述がある。



小名木陽一「赤い手ぶくろ」:大きな作品が目を引いた。


2019年のアート(作品部門)

2019年12月30日 08時35分57秒 | ART
続いて、2019年で気になった作品を列挙する。5行ごとの空行は単に少し見やすくするためのものである。また、順番は上の方が見た時期が後になっているはず。

生頼範義「HOPE MY WAY」
橋本宣彩他「鳥取池田家11代図」
島根県立古代出雲歴史博物館「日本最多358本の銅剣」
島根県立古代出雲歴史博物館「銅鐸」
島根県立古代出雲歴史博物館「日本最多16本の銅矛」

エドゥアール・マネ「フォリー=ベルジェールのバー」
カラヴァッジョ「聖アガピトゥスの殉教」
「孔雀明王像」
「婦女遊楽図屏風(松浦屏風)」
塩田千春「集積・目的地を求めて」

TAKASHI「湖上の山脈」
東山魁夷「唐招提寺御影堂障壁画 山雲」
東山魁夷「唐招提寺御影堂障壁画 濤声」
ナイジェル・コーク「セイレーン」
伴百合野「拘束の歴史II」

ジョン・エヴァレット・ミレイ「滝」
エドワード・バーン=ジョーンズ「赦しの樹」
東寺「降三世明王立像」
岩佐又兵衛「小栗判官絵巻」
伝土佐光則「源氏物語図画帖」

鈴木隆「雪の風」
ムンク「絶望」
千葉蒼玄「鎮魂と復活 オーロラ(昇天)」

さて、この中から、今年のベスト5は以下に決定。

■エドゥアール・マネ「フォリー=ベルジェールのバー」
バー好きの私にはたまらない作品。この画を正面先頭で見るために並んでいる間、バーカウンターで順番待ちをしているような気になって来た。そして、つまらなそうに酒を作っているこの女性をどうにかして笑わせたい。そんな妄想の浮かぶ名作。

■カラヴァッジョ「聖アガピトゥスの殉教」
西洋の「慧可断臂図」か! 衝撃のシーンを画にとどめた。

■塩田千春「集積・目的地を求めて」
素晴らしい展覧会の中でも、最も気にいった作品。私の中で「旅」(いや、それを含めた人生なのか)と言えば、この作品になるだろう。

■ジョン・エヴァレット・ミレイ「滝」
ラファエル前派展から、宝物のような精密な小品を選定。

■エドワード・バーン=ジョーンズ「赦しの樹」
こちらもラファエル前派展から、悪夢のような大作を選定。いやー、恐怖映画のエンディングだってば。

2019年のアート(展覧会部門)

2019年12月30日 08時16分00秒 | ART
さて、恒例の1年を振り返るアート関係の記事。まずは2019年で気になった展覧会を列挙する。5行ごとの空行は単に少し見やすくするためのものである。また、順番は上の方が時期が後になっているはず。

道新ギャラリー「王朝継ぎ紙研究会 北海道初作品展 よみがえる平安の和紙装飾」
北のモンパルナス「松本五郎・菱谷良一 無二の親友展」
松涛美術館「日本・東洋 美のたからばこ」
プラニスホール「生頼範義展」
鳥取県立博物館「殿様の愛した禅 黄檗文化とその名宝」

島根県立古代出雲歴史博物館「常設展」
東京国立博物館「文化財よ、永遠に」
北海道立近代美術館「カラヴァッジョ展」
αプラザ札幌「写真家 北山輝泰 作品展 TRAVELLER ~世界の星~」
東京都現代美術館「MOTコレクション ただいま/はじめまして 第2期」

東京都美術館「コートールド美術館展」
SCARTS「鈴木康広 雪の消息|残像の庭」
東京都美術館「伊庭靖子展 まなざしのあわい」
札幌芸術の森美術館「テオ・ヤンセン展」
北海道大学総合博物館「SPレコード鑑賞会」

横浜美術館「原三渓の美術 伝説の大コレクション」
サントリー美術館「遊びの流儀 遊楽図の系譜」
森美術館「塩田千春展 魂がふるえる」
東京ステーションギャラリー「メスキータ」
東京国立博物館「奈良大和四寺のみほとけ」

市立小樽文学館「いまプロレタリア芸術が面白い! 知られざる昭和の大衆文化運動」
小樽市民ギャラリー「小樽写真研究会 堂堂展Vol.28 企画展Deep 張碓 銭函 見晴 星野 桂岡 春香」
江別セラミックアートセンター「小森忍・河井寛次郎・濱田庄司-陶磁器研究とそれぞれの開花-」
北海道立近代美術館「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」
北海道立帯広美術館「タグチ・アートコレクション 球体のパレット」

大丸美術画廊「野原邦彦空想スイマー」
札幌芸術の森美術館「砂澤ビッキ 風」
小樽芸術村「浮世絵コレクション展第1期 小林清親「光線画」を中心に」
ギャラリーエッセ「大嶋美樹絵自選展~其処は此処ですII~」
MOAアートホール北海道「藤林峰夫 木版画作品展」

パナソニック汐留美術館「ギュスターヴ・モロー展」
三菱一号館美術館「ラファエル前派の軌跡」
東京国立近代美術館「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」
東京国立博物館「国宝東寺 空海と仏像曼荼羅」
東京国立博物館「両陛下と文化交流 日本美を伝える」

SCARTSスタジオ「川上りえ個展 Landscape Will 2019」
SCARTSコート+スタジオ「Nameless landscape」
ギャラリーレタラ「鈴木隆展」
北海道立近代美術館「生誕70年・没後40年記念 深井克美展」
CAI02「伊藤隆介ゴーストワールド」

MOA美術館「リニューアル3周年記念名品展第1部 国宝「紅白梅図屏風」」
ヴァンジ彫刻庭園美術館「常設展」
静岡市立芹沢銈介美術館「芹沢銈介の収集ー世界の仮面と衣装ー」
札幌市資料館「李征穆 The reflection of Naked Face」
SCARTSコート「ワビサビはどこから来たのか? ワビサビは何者か? ワビサビはどこへ行くのか?」

大通美術館「大地/開墾2019 楢原武正展」
東京都美術館「ムンク展」
三菱一号館美術館「フィリップス・コレクション展 A MODERN VISION」

さて、これらの中から、今年のベスト5を選定してみた。

■島根県立古代出雲歴史博物館「常設展」
銅剣、銅鐸、銅矛と圧倒的な物量。衝撃の大量国宝に遥か昔の出雲を思うのであった。

■東京都美術館「伊庭靖子展 まなざしのあわい」
絵画の何たるかを考えさせる展覧会。動画で立体視をさせる映像は非常に興味深かった。

■森美術館「塩田千春展 魂がふるえる」
何と言っても今年のナンバーワンと言ってしまって良いだろう。緻密な構成力と鑑賞者の様々な感情をかき立てる情緒的な部分が両立している展覧会である。正直な所、作者の方をよく知らずに何となく行ったので、幸運だったと思う。

■東京国立博物館「国宝東寺 空海と仏像曼荼羅」
東寺で曼荼羅勢ぞろいを見たことがあるのだが、明るくて、仏像を全方向から見られるというありがたみ(と同時に少し感じる味気無さ)がある。

■静岡市立芹沢銈介美術館「芹沢銈介の収集ー世界の仮面と衣装ー」
展覧会というか、美術館として素晴らしかった。コレクションの物量もあるし、芹沢のデザインセンスはかなり好きだ。