つれづれなるままに

日々の思いついたことやエッセイを綴る

映画「山のあなた」徳市の恋

2008年06月02日 | 芸能
                       映画「山のあなた」

日本映画史上に残る名匠・清水宏監督が1938年に発表した佳編「按摩と女」。
これはある温泉場を舞台に按摩の徳市と、温泉客の美しい女性・三沢美千穂との淡い恋の行方を描いたものだ。
その作品を草なぎ剛の主演で完全カヴァーしたのが「山のあなた 徳市の恋」である。
演出を手掛けたのは気鋭のCMディレクターとして活躍し、映画監督としても「鮫肌男と桃尻女」(98年)、「PARTY7」(00年)など、そのスタイリッシュな映像とユニークなキャラクター造型によって、独自のエンタテインメント世界を作り上げてきた石井克人監督。

新緑の季節。
目の不自由な按摩の徳市(草なぎ剛)と福市が、山の温泉場に向う道を歩いている。
彼らは前を歩く人間の数や性別、どこから来たかをかぎ分けられる鋭い勘の持ち主。
その彼らの横を1台の馬車が駆け抜けていく。
馬車には東京から来た女性・三沢美千穂(マイコ)、大村真太郎(堤真一)、真太郎の甥・研一が乗っていた。
徳市たちが温泉場の按摩宿泊所に落ち着くと、宿屋・鯨屋から呼び出しがかかる。
徳市が療治に向うと、お客は美千穂だった。

撮影場所は、伊豆あたりだろう。
こんなにゆったりとした映像は久し振りに観た。
紫色に色づいた山道のアジサイの花。
川に渡された弓なりの橋が印象に残る。
番傘を差した美千穂が雨の中を進むシーンがいい。
草なぎの徳市役の奮闘がよく出ている。
70年前の映画をカヴァーしたようだが、前作のオリジナル作品も観てみたくなった。

(6月2日記 池内和彦)
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