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無縁坂(文京区)
東京大学付属病院の前の小さな門を出て、左に折れると上野不忍池へ坂道がある。これが森鴎外の小説「雁」にも出てくる「無縁坂」である。
坂の上に無縁寺があった。元和2年(1616)今の講安寺が湯島天神下より移転、開山上人も同じ境内に無縁寺と名づけた庵を建てる。正保2年(1645)無縁寺は坂下の称仰院、法界寺は坂上側の講安寺となる。
松平備後守・榊原・前田の武家屋敷に囲まれた坂なので、武縁坂とも記されている。
講安寺土蔵造りの講安寺
外壁が漆喰(しっくい)で何度も塗り込められた土蔵造りの本堂。火事に悩んだ人たちの防火対策の知恵である。寺伝によると宝永5年(1708)の建造。
東京都の地名通常坂の表示は木柱に坂の名と由来を書いてあるが、無縁坂はまるでこの坂が文化財であるような立派な表示である。