いつも参考にさせて頂いているがん情報サイト「オンコロ」-がんと・ひとを・つなぐ-で、おお、ついに出たか!という記事を見つけた。以下、転載させて頂く。
※ ※ ※(転載開始)
抗がん剤副作用による脱毛抑制機器 初承認(2019.5.20 中島 香織)
2019年3月27日、抗がん剤治療に伴う脱毛を抑えるのを目的にした装置が、国内で初めて医療機器として承認された。頭皮を冷やすことで、毛髪をつくる細胞が抗がん剤の影響を受けにくくなる効果が期待される。7月ごろから国内医療機関で使えるようになる見込み。
一般的名称: 冷却療法用器具及び装置
販売名:・Paxman Scalp Cooling システムOrbis ・Paxman Scalp Cooling キャップ
販売元: センチュリーメディカル株式会社
使用目的: 患者の頭皮を冷却する装置であり、固形がんに対する薬物療法を受ける患者の脱毛抑制を目的に使用する
パクリタキセルの重篤な副作用の一つである末梢神経へのしびれの対策として、手足を冷やすことで血流の流れを遅くさせ、抗がん剤が神経にまわりにくいようになるのではないか、以前記事にした。
冷やして予防-抗がん剤の副作用対策-
冷却することで、抗がん剤の副作用である脱毛、しびれが軽減されることが承認されたこととなる。
抗がん剤は、薬のタイプにより脱毛の副作用が顕著にあらわれ、患者にとって最もつらい副作用の一つとされる。抗がん剤投与30分前から投与終了後90分以上まで頭部につけた専用キャップにマイナス4度ほどの冷却液を流し、頭皮を冷やす。血管を縮め、毛包という場所に届く抗がん剤の量を減らすことが狙いだ。
冷却装置は、キャップ1個を接続するOris1と、キャップ2個を接続して2名以上同時に使用可能なOrbis2から構成され、キャップはシリコーン製であり、サイズはS、M、Lの3サイズで構成される。なおキャップには、キャップの保護と結露を防ぐことを目的として、キャップの上から装着するキャップカバーも含まれる。
乳がん患者を対象にした国内の治験では、このシステムを使った30名中8名(26・7%)が、「50%未満の脱毛でウィッグは不要」と2人の医師に判定された。
今回は乳がんを含む固形がん患者に使うことが承認された。
現在国内では、乳がん患者の3割程度にがん薬物療法が施行され、乳がん治療にはアントラサイクリン系抗がん剤またはタキサン系抗がん剤が頻用されている。薬物療法の副作用としては特に脱毛作用の発現率が高く、前述の抗がん剤では62~94%の高度の脱毛を引き起こす。※1
脱毛による外見の変化は、患者にとって大きな精神的負担をもたらし、約半数の患者が最も苦痛な副作用として脱毛を挙げている。※2
また、乳がん患者の8%は、脱毛を回避を優先し、治療効果の劣る抗がん剤を選択するという報告もあり、脱毛回避は患者にとっては治療効果よりも優先される程の深刻な影響を与える問題となっている。※3
本機器はすでに頭痛を抑える目的で承認されていたほか、一部の施設で脱毛抑制の臨床研究などで以前より導入済み。同社はこの機器を使うことに公的保険が適用されるよう求めているが、現時点では患者がいくら払えば使えるかといったことは、残念ながらまだ決まっていない。
大量生産ではないため既成台数が限られ、当面、使えるのは脱毛のケアに熱心に取り組む病院など、限られた施設になることが、今後の問題と予想される。
引用文献:
※1 Yamashita H, et al. (2011) Estrogen receptor-positive breast cancer in Japanese women: trends in incidence, characteristics, and prognosis. Annals of Oncology 22: 1318-1325.
※2 Lemieux J, et al. (2008) Chemotherapy-induced alopecia and effects on quality of life among women with breast cancer: a literature review. Psycho Oncol 17(4): 317-328.
※3 Breed W, et al. (2011) Presentation, impact and prevention of chemotherapy-induced hair loss, scalp cooling potentials and limitations. Expert Rev Dermatol 6(1): 109-125.
参照:
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 審議結果報告書
(転載終了)※ ※ ※
2008年11月からスタートしたタキソテール、2012年9月からスタートしたEC、そして今回2019年3月からスタートしたハラヴェンで、現在3度目の脱毛中である私だ。この後また健康な髪の毛が生えてきて、かつら要らずの生活に戻れるかどうか、今の段階では分からない。少なくとも今の治療を続けていれば、それはあり得ないことだろうし、一旦休薬出来たとしても再び髪の毛が生え揃うことを考えれば、少なくとも無事にあと2年は生き延びなければならないからだ。
脱毛は何度経験してもそのショックは決して小さくならないし、脱毛したくないからこの薬は使いたくない、という患者の気持ちが切実であることも、女性として良く分かる。
がん医療が発達して、ステージⅣ患者の長期生存がそれほど珍しいことではなくなり、治療中にも人前に出て社会生活を続けるようになった。「何を言うか、髪の毛より命が大切だろう」と言われるかもしれないけれど、こうしてアピアランスケアについてこれほど話題にあがるようになったのは、患者の心が「見た目は二の次」と簡単に割り切れるものではないこと、一筋縄ではいかないということの表れだろう。
相変わらずTVドラマ等では脱毛する場面で、眉毛も睫毛もフサフサで目ヂカラは全く衰えずに髪の毛だけとりあえずなくしてみました~みたいな患者役が登場するけれど、実際は決してそんなことはない。髪の毛だけでなく全ての体毛がなくなるという事態をもっと正確に伝えて欲しいと思う。そのことが患者に対してどれほど鏡を見るのを億劫にさせするか、分かる筈だ。
脱毛以外にも、末梢神経障害の痺れや爪のダメージ回避のため、抗がん剤を必要以上に細胞に行き渡らせないためにはめる指先用のフローズングローブの開発や、点滴中に氷を舐めていると口内炎が起きにくくなるとか、“冷やす”という手段は既に実行されてきて、その効果をあげてきたようだ。だからこそ、今回の頭部冷却装置も出るべくして出たものだといえよう。
もっとも、氷を舐めるというのは、実際にやってみたが果たして効果があるのか、同時に比較することが出来ないのでよくわからない、というのが正直なところだが・・・。治療中にお腹が冷えてしまったというのは紛れもない事実だった。
とはいえ、転載した記事によれば、治療現場に広く行き渡るにはまだまだ時間がかかりそうだし、実際どのくらいの自己負担なのかもわからない。あまりに高額であれば、諦めざるを得ない人も出るだろう。けれど、待ちわびた人たちにとっては大きな一歩であるには違いない。
今後、私がこうした恩恵に預かることが出来るかは神のみぞ知るだけれど、細く長くしぶとく粘っていれば、また道が開けるかも、と思うのである。