ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2019.5.25 乳がん患者さんのための瞑想ヨーガ5月クラス無事終了

2019-05-25 19:14:56 | ASHARE (アシェア)
 今日は ASHAREさん主催の瞑想ヨーガクラスの日。回を重ねて今日で12回目になる。当初お知らせしていた5月開催日は、治療後の体調不良の恐れから2週間遅れにして頂いた。申し訳なく思うとともに、それだけにより満足して頂けるクラスにしたい、と強く思う。
 先週は、台風顔負けの土砂降りの日があったと思ったら、昨日からは急に暑くなり、5月だというのに2日連続で真夏日である。こういう気圧の変動が激しい季節は健康な人でも体調を崩しやすいシーズンだ。
 晴れ女の面目を保って、今日もピーカンの青空である。地元では最高気温が33度になるという予報を聞き、遠方からもいらして頂く方もおられるので、参加してくださる皆さんの体調が心配になる。

 普段と同じ時間に起床。朝食の準備をしていると夫が起きてきて、一緒に朝食を摂り、大荷物を自転車かごに載せて最寄り駅まで送ってくれた。前回は会場まで同行してもらうという過保護状態だったが、今回は自信がついたので大丈夫と断った。かくいう夫は昼過ぎから都心で仕事があり、それを終えた後、羽田から最終便で庄内に発ち、明日、叔母の葬儀に出席することになっている。
 同行してもらい、大きなキャリーケースを引きずったまま(某国大統領の訪日でコインロッカーはどこも封鎖だという。)昼まで時間潰しをしてもらうにはあまりに申し訳ない。
 結果として無事に準特急の席を確保出来、レッスンプランを見直しながら、今日のクラスの組み立てをおさらいして過ごすことが出来た。

 それにしても朝から暑い。日傘を差していても強烈な日差しだ。無理はしないで階段の上り下りは避け、平坦な道をスタスタと歩く。会場に入り、スタッフの方たちにご挨拶して身支度。ガネーシャのラグとマットを敷いて着替えを済ませたら、準備OKである。空調が効いている部屋はひんやりしているけれど、それでも歩いてきたせいか汗が滲んでいる。ここでスタッフの皆さんから冷え冷えの汗拭きコットンが配られる。首筋にあてると、すーっといい香りに癒されて汗が退いていく。

 今回は、初参加の方が4名(うち一組はお母様とお嬢さんのペア、初めての2世代参加である。)と2回目以上の方たちが11名と伺っていたが、体調不良で3名の方がキャンセル、キャンセル待ちでいらした方がおられて、結果として13名とスタッフ2名の参加で予定通り15名様の開催になった。

 定刻前には、素敵なかりゆしウエアをお召しの代表のAさんからのお話、Hさんからもお年頃の眼に関するエピソード等楽しいお話しがあった後、Tさんからは、先日私がブログで話題にした抗がん剤中の頭部冷却機器の具体的なお話しも伺えた。少し遅れて来られた方も揃って、全員集合。クラスがスタートした。

 いつものように、初めましての方への「ようこそ」、そして回を重ねて参加されている方、遠方からもご参加頂いている方へのお礼の言葉からスタートする。 
 自己紹介等のアイスブレイキングタイムは、既に繰り返し聞いてくださっている方が大半だが、初めての方たちがおられることもあり、繰り返す。現状で3月からハーセプチン、パージェタ、ハラヴェンの3剤併用治療の副作用に相変わらず悩まされているが、今は3週間で一番元気なこと、ゼローダによる手足症候群は軽快したが、保護の意味も兼ねているとともに、末梢神経障害で針を刺されるようなチクチクした痛みがあることから、相変わらず手袋も五本指の靴下も手放せないことをお話しする。
 サバイバー歴、瞑想ヨーガとの出会い等にも触れた後、聖音、オーム(ॐ)の音を皆で唱え、その余韻を感じながら今日もクラススタートだ。

 今日もヨーガスートラの最初の一節「ヨーガは心の動きを鎮めるものです」をサンスクリット語でご紹介する。幾多のヨーガの智慧の中から、私が最もお伝えしたいこともお話しして、このクラスの間中、ご自身の呼吸に集中して頂くようにお願いするのはいつものとおり。「はじめのマントラ」の歌詞カードを使い、皆で唱える。 3回目になったけれど、変調もあり、なかなか発音するのに難しいフレーズも多々ある。それでもとにかく声を出して瞑想ヨーガに触れ、少しずつでも慣れて頂くことが大切だ。
 
 マントラ付きの2つの動きを始める前に、簡単に身体ほぐしタイムでヨガらしいアーサナをいくつかご紹介する。まずは気持ちよくシャヴァーサナが取れるように、キャットとカウのポーズで背中を解し、ローランジで足の付け根を伸ばしてから、ヒバリのポーズで胸を開き、前向きな気持ちになって頂く。チャイルドポーズでお休みした後は、長座になって捩じりのポーズ。身体が少し汗ばんできたところで、ウオーミングアップタイムを続ける。

 毎回練習している2つの動きに入る。大空と大地と、その間にある全てのものに感謝と尊敬を表す動きである帰命敬禮。上半身を反って胸を開き大空への挨拶をした後は、前に倒れて両手の甲と額をマットにすりつけて大地への挨拶。前後の動きは集中力を高めてくれる。気持ち良く声を出しながら「聖き者よ、尊き者よ・・・」という意味のマントラを唱え、自分の呼吸を観察しながら“今この瞬間”に集中して頂く。

 続いて五体投地。右足、左足、両足の3つの動きで1セットになるが、爪先で立ったり、中腰になったり、体幹が整わないとふらつきやすい。膝を痛めている方はストップである。このクラスでは一番のピークポーズとなる立ちポーズが唯一ある。足の裏の痺れを感じている私も1回よろめいてしまった。自分が痛みを感じたり、無理だと思った時は、くれぐれも無理はしないで、痛気持ちいいところで止めること、それを超えて痛かったり、きついと感じる時にはお休みしてマントラだけ唱えてくださいとお願いしたので、それをきちんと守ってくださるのは初参加のÅさん。

 1つ1つの動きに合わせたマントラがスタジオ内に共鳴する。一人ひとりの声は違うものであるのに、溶け合うと絶妙なバランスで、余韻を部屋に満たしていく。今ここに集中し、愛に満ちて純粋な自分自身を呼び起こしてくれる力のあるマントラを唱えることで、スタジオ内はいつのまにか穏やかで幸福な空間になっていき、私自身が癒されているのを実感する。

 様子を見ながら3セットはきついかな、と感じたので3つの動きを2セット繰り返しておしまいにする。
 今日も私がずっと続けている、ASHAREの代表お2人も今ではやらないと気持ち悪いところまで到達しました、と仰る朝のルーティンヨガの簡単な3つの動きをお伝えする。騙されたと思ってどうぞ3週間続けてみてくださいね、必ず変わります!と今日もしつこくお薦めする。

 タイムキーピングが上手くいき、後半に。最近の天候不良や今日の暑さを思い、自律神経の乱れで不調を感じている方が多いのでは、ということで、片鼻呼吸(スカ・プールヴァカ)にトライした。スッキリしたような皆さんのお顔を見て、嬉しくなる。その後、基本に戻って腹式呼吸から完全呼吸法の復習をして頂く。キャンドルライトを灯して頂き、部屋の電気を落とす。オレンジ色の光が揺らぐのを見ていると、とても幸せで有難い気持ちが湧いてくる。楽な姿勢で10分ほど座り、10分間シャヴァーサナ(安らぎのポーズ)の時間を取って、眠って頂いて大丈夫ですからね、とゆっくりお休み頂く。
 
 シヴァのキールタンを歌い、りんを鳴らしてゆっくりと目覚めて頂く。皆さんいつのまにか瞑想がとても上手になっておられ、穏やかで、優しいお顔はまるで菩薩像のように美しい。ああ、今日もこうしてシャーンティの状態にたどり着けて良かった、とほっと胸をなでおろす。 

 残り時間は20分弱。キールタンを唄ってクラスの締めの時間となる。
 今日も皆さんがすぐに口ずさめるようにハレルヤを3回歌う。初参加以外の方たちはすっかりお手の物だし、初めての方も難なく唄っておられる。少しだけ時間があったので、オーマニパドメフーンのキールタンも歌い、少しだけ掛け合いをしてクラス終了の時間になった。スタジオ内の美しい音の余韻を噛み締め、お礼の言葉が自然に漏れる。

 こうして令和最初のクラスを無事終えることが出来た。
 次回は7月6日。8月以降も休薬週にあてて3週間おき、もしくは6週間おきで定期的にお目にかかれたらと思っています、と締める。
 少し喋りすぎたか会場撤収の時間までそれほど時間がなくなり、ご質問があればランチタイムで、とご挨拶してお開きとした。

 今日のお楽しみアロマプレゼントは「これからいよいよ梅雨時期。活躍間違いなしの虫よけスプレーと人気のリラックス安眠アロマグッズをお土産にチョイスしました♪」ということで、天然成分100パーセントの「身体に優しいアロマ虫よけスプレー」、天然ヒマラヤ岩塩で身体を温め甘いベルガモットと相性抜群ラベンダーの香り「グッスリ安眠アロマバスソルト」、お馴染み欲張りブレンド「女王様のティータイム」ハーブティの3点セットが配られる。自然に笑顔になる。

 お着替えを済ませたら、皆でレストランへ移動。次のご予定等がありランチタイムはご一緒出来なかった方はお一人だけで、事務局のTさんも加わって総勢16名だ。

 今日も先月同様、同じ棟の中華レストランだったが、混んでいて大きなテーブルが確保出来ず、4人テーブルが4つという形になった。毎回いらして頂くお二人のNさん、初めて参加のEさんと同じテーブルを囲んだ。色々な話に花が咲いてしまい、別のテーブルの皆さんにはろくにご挨拶に伺えず申し訳なかった。それでも初めて参加された方からポジティヴな感想を頂けて、今後の励みになる。

 そんなわけで、今日は残念ながら自己紹介タイムがなかったけれど、初参加の方たちはしっかり記憶させて頂けた。もちろん何度も参加してくださる方たちから伺ったお話しは頭に入っているので、もうすっかりフレンドリーである。
 あっという間に1時間半が経過し、お開きの時間になる。事務局スタッフのTさんに今後の日程について確認をし、皆さんと一緒に駅方面に向かった。それにしても暑い。5月とは思えない真夏のような暑さである。
 
 今日は寄り道せずにターミナル駅から一番早い準特急に座れ、家路についた。夫も無事仕事を終え、空港に到着して夕食を済ませたようだ。息子からは夕方千葉であった地震を心配して大丈夫?というLINEが入ったが、ちょうど外を歩いていたので、全く気付かずじまい。

 帰宅してもまだまだ日が高いので、洗濯機を回して、たっぷりの洗濯物を干した。心地よく疲れており、これから満たされた気持ちのまま一人で適当な夕食タイム。明日はメンテナンスに努めよう。そして水曜日にやって来る第5クールの治療まで残り僅かな体調の良い数日を貪欲に楽しもうと思う。


(追記)ASHAREさんの活動レポートに取り上げて頂きました。

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2019.5.24 いくつになっても・・・母とひねもす

2019-05-24 23:24:10 | 日記

 休薬週の週末。ようやく体調が本調子に回復してきた。ここから次の治療日までの数日は、今までの半月間の不調の日々を取り戻すべく、あれやこれやと予定が目白押しである。

 今日は1日休暇を頂いて、少し遅めの母の日贈り物デーとした。1月に我が遺影を撮影し直したことはこのブログで書いた。その時は、美顔器を使ったエイジングケア付きのヘアメイク撮影プランで臨んだ。さすがにプロのヘアメイクアップアーティストの手にかかるとそれなりに整えて頂けて、すっかり気分よく写真室を後にしたのだった。

 今回、母の日に因んで頭皮やフェイシャルケアを含んだ同様のプランがあったので、母に是非やってみたら、と提案した。写真室でヘアメイクをして写真を撮ってもらうなんて、そんな仰々しいこと・・・、と最初は少し躊躇していたけれど、遺影とハッキリ言わなくとも、いざという時にちゃんとした写真がないのは、と気になっていたのも事実のようだった。まあ、それに遺影を準備するとその分長生きする、というのは実の娘が実証済みでもある。

 このプラン、肌映りの良いビューティーライティングによるポートレート撮影がなかなか好評なようで、思い通りの時間に予約が撮れず、オープン同時の一番乗り枠しか空きがなかった。
 先着した私がターミナル駅で母をピックアップして、百貨店の写真室に向かった。受付を済ませ、ヘアメイクの方にご挨拶をして、早速お仕度開始である。まずは頭皮のマッサージからスタート。ああ、私もやってほしいくらいである。

 お支度まで1時間ほどかかります、ということだったので、別の階で30分ほど用事を済ませて戻ると、もう仕上げの段階だった。普段殆どノーメイクの母だが、ちゃんとお化粧するとわが母ながらびっくりするほど綺麗になった。ああ、普段からもっと構えばいいのになあとしみじみ思う。自分でもお化粧の威力に驚いたようで、嬉し恥ずかしといったところ。いくつになっても、鏡を見て自分が綺麗になっていれば嬉しいものである。 

 グレイヘアをふんわり立ち上げたセットが終わり、マスカラまでバッチリして頂き、いざ写真室へ移動。カメラマンさんは、私が1月に撮って頂いた時と同じ女性だった。ご挨拶すると、覚えていてくださって「似ていらっしゃいますね。」とのこと。ヘアメイクさんから「お母様には直接伺わなかったのですが、おいくつですか?」と問われ、「85です」と答えると、そんなお歳には見えません、と驚いていらした。

 最初はかなり緊張気味で、笑顔がひきつった感じだったけれど、丁寧に気持ちを解してくださり、だんだん自然な笑顔も出るようになり、とても素敵な大満足のポートレートが撮れた。
 4ポーズ数枚ずつの候補が残り、一枚一枚大画面を見ながらセレクトタイム。1枚はプリントして頂き、もう1枚はデータで頂くことにした。仕上がりは1か月後。7月生まれの母へのちょっと早い誕生日プレゼントになる。

 最後の会計まで含めると約2時間が経過。そのままレストラン街に移動してランチにした。お昼ちょっと前だったけれど、早くもどこのお店も列が出来ていて、平日とはいえ金曜日、混んでいるのにびっくり。
 少し待って和食のレストランに入る。GWの時の関西旅行の写真を渡し、お喋りをしながらゆっくりランチタイムを楽しんだ。あの時は本当によく歩いて頑張ったので、病気(直腸がん)も治って随分元気を取り戻してきたな、と自信がついたところで今回の腎臓がん発覚。今でも信じられないそう。
実はまだ帯状疱疹も完治していないようでカロナールを飲んでいたが、ぱっと見、特に今日は綺麗にヘアメイクをしているので、ダブルキャンサーを抱えているとは思えない。

 疲れたようならこのまま帰ってもいいけれど、と言ってみたが、まだ歩けるし、大丈夫と言うので少しウインドウショッピングを。結局、母のものは何も買わず、息子の夏用ワイシャツを探すのがメインになってしまった。
 小一時間歩いたところで、撮影プランの特典である‘レストランのティータイムスイーツワゴンサービス’へ。少し早めにレストランに到着すると、写真室で私たちの次に待っていた母娘連れが同じように座って待っていた。私たちの隣の女性グループも同じ利用チケットを持っていて皆で顔を見合わせてしまった。
 5種類のケーキやプリンをお皿一杯に盛り合わせて頂き、紅茶と一緒に美味しく頂いた。

 そんなわけで、今日は通院付き添い以外で母とひねもす過ごす金曜日になった。夕方、電車が混む前に特急に座ったのを見届けて、私も次の準特急で帰宅した。一日空調が効いた涼しいというよりもちょっと寒いくらいの快適な空間にいたので、暑さが全く気にならなかったけれど、最寄り駅に到着して本当に暑かったことに驚いた。明日もまた同じような高温になるという。5月の真夏日は身体に堪えそうだ。

 明日は瞑想ヨーガの5月クラスの日。レッスンプランも確認し、支度も済ませた。
 夫は昨夜、故郷に住む叔母(義父の妹)が亡くなったという知らせで、明日最終便で庄内に向かい、告別式と初七日の法要に出るため、2泊してくることになった。珍しく一人の休薬週の土日である。

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2019.5.23 3,500日!

2019-05-23 20:43:45 | 日記

 今朝、何気なくブログの編集頁をチェックしたら、「ブログ開設から3,500日」とあった。
 そういえば2009年10月27日に開設したので、あと半年足らずで10年になる。165日経過すればちょうど3,650日というわけだ。

 3,500日の間に記事の数、2,696である。
 ご訪問くださった方は3,500日の間で延べ1,427,412人、閲覧して頂いた頁は4,653,320頁である。
 単純に割り返せば日々400人超の方たちが1,300頁を超える閲覧をしてくださっていることになる。

 思えば遠くへ来たものだと思う。
 継続は力なり、に見合ったものになっているかどうかは別として、ここまで細く長くしぶとく書き続けられるとは、最初に患者会で「再発患者の治療日記」を書き始めた時にはゆめゆめ思わなかった。

 性懲りもなく、10月のブログ開設記念日には毎年「祝!○周年」という記事を書き続けているが、あと半年足らず、10周年の記事を書くことがまんざら夢ではなくなってきていることを素直に慶びたい。

 そして、これからもマイペースで歩んでいきたい。たとえゆっくりでも休みながらでも、題名に込めた想い、ロッキングチェアに揺られるように。のんびりと、私らしく。

 これからもどうぞ宜しくお願いいたします。
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2019.5.22 待ちに待ったものがついに!

2019-05-22 20:50:54 | 日記

いつも参考にさせて頂いているがん情報サイト「オンコロ」-がんと・ひとを・つなぐ-で、おお、ついに出たか!という記事を見つけた。以下、転載させて頂く。

※   ※  ※(転載開始)

抗がん剤副作用による脱毛抑制機器 初承認(2019.5.20 中島 香織)

 2019年3月27日、抗がん剤治療に伴う脱毛を抑えるのを目的にした装置が、国内で初めて医療機器として承認された。頭皮を冷やすことで、毛髪をつくる細胞が抗がん剤の影響を受けにくくなる効果が期待される。7月ごろから国内医療機関で使えるようになる見込み。

一般的名称: 冷却療法用器具及び装置
販売名:・Paxman Scalp Cooling システムOrbis ・Paxman Scalp Cooling キャップ
販売元: センチュリーメディカル株式会社
使用目的: 患者の頭皮を冷却する装置であり、固形がんに対する薬物療法を受ける患者の脱毛抑制を目的に使用する

 パクリタキセルの重篤な副作用の一つである末梢神経へのしびれの対策として、手足を冷やすことで血流の流れを遅くさせ、抗がん剤が神経にまわりにくいようになるのではないか、以前記事にした。

冷やして予防-抗がん剤の副作用対策-
 冷却することで、抗がん剤の副作用である脱毛、しびれが軽減されることが承認されたこととなる。
 抗がん剤は、薬のタイプにより脱毛の副作用が顕著にあらわれ、患者にとって最もつらい副作用の一つとされる。抗がん剤投与30分前から投与終了後90分以上まで頭部につけた専用キャップにマイナス4度ほどの冷却液を流し、頭皮を冷やす。血管を縮め、毛包という場所に届く抗がん剤の量を減らすことが狙いだ。
 冷却装置は、キャップ1個を接続するOris1と、キャップ2個を接続して2名以上同時に使用可能なOrbis2から構成され、キャップはシリコーン製であり、サイズはS、M、Lの3サイズで構成される。なおキャップには、キャップの保護と結露を防ぐことを目的として、キャップの上から装着するキャップカバーも含まれる。

 乳がん患者を対象にした国内の治験では、このシステムを使った30名中8名(26・7%)が、「50%未満の脱毛でウィッグは不要」と2人の医師に判定された。
 今回は乳がんを含む固形がん患者に使うことが承認された。
 現在国内では、乳がん患者の3割程度にがん薬物療法が施行され、乳がん治療にはアントラサイクリン系抗がん剤またはタキサン系抗がん剤が頻用されている。薬物療法の副作用としては特に脱毛作用の発現率が高く、前述の抗がん剤では62~94%の高度の脱毛を引き起こす。※1
 脱毛による外見の変化は、患者にとって大きな精神的負担をもたらし、約半数の患者が最も苦痛な副作用として脱毛を挙げている。※2
 また、乳がん患者の8%は、脱毛を回避を優先し、治療効果の劣る抗がん剤を選択するという報告もあり、脱毛回避は患者にとっては治療効果よりも優先される程の深刻な影響を与える問題となっている。※3
 本機器はすでに頭痛を抑える目的で承認されていたほか、一部の施設で脱毛抑制の臨床研究などで以前より導入済み。同社はこの機器を使うことに公的保険が適用されるよう求めているが、現時点では患者がいくら払えば使えるかといったことは、残念ながらまだ決まっていない。
 大量生産ではないため既成台数が限られ、当面、使えるのは脱毛のケアに熱心に取り組む病院など、限られた施設になることが、今後の問題と予想される。

引用文献
※1 Yamashita H, et al. (2011) Estrogen receptor-positive breast cancer in Japanese women: trends in incidence, characteristics, and prognosis. Annals of Oncology 22: 1318-1325.
※2 Lemieux J, et al. (2008) Chemotherapy-induced alopecia and effects on quality of life among women with breast cancer: a literature review. Psycho Oncol 17(4): 317-328.
※3 Breed W, et al. (2011) Presentation, impact and prevention of chemotherapy-induced hair loss, scalp cooling potentials and limitations. Expert Rev Dermatol 6(1): 109-125.

参照
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 審議結果報告書

(転載終了)※  ※  ※

 2008年11月からスタートしたタキソテール、2012年9月からスタートしたEC、そして今回2019年3月からスタートしたハラヴェンで、現在3度目の脱毛中である私だ。この後また健康な髪の毛が生えてきて、かつら要らずの生活に戻れるかどうか、今の段階では分からない。少なくとも今の治療を続けていれば、それはあり得ないことだろうし、一旦休薬出来たとしても再び髪の毛が生え揃うことを考えれば、少なくとも無事にあと2年は生き延びなければならないからだ。

 脱毛は何度経験してもそのショックは決して小さくならないし、脱毛したくないからこの薬は使いたくない、という患者の気持ちが切実であることも、女性として良く分かる。
 がん医療が発達して、ステージⅣ患者の長期生存がそれほど珍しいことではなくなり、治療中にも人前に出て社会生活を続けるようになった。「何を言うか、髪の毛より命が大切だろう」と言われるかもしれないけれど、こうしてアピアランスケアについてこれほど話題にあがるようになったのは、患者の心が「見た目は二の次」と簡単に割り切れるものではないこと、一筋縄ではいかないということの表れだろう。

 相変わらずTVドラマ等では脱毛する場面で、眉毛も睫毛もフサフサで目ヂカラは全く衰えずに髪の毛だけとりあえずなくしてみました~みたいな患者役が登場するけれど、実際は決してそんなことはない。髪の毛だけでなく全ての体毛がなくなるという事態をもっと正確に伝えて欲しいと思う。そのことが患者に対してどれほど鏡を見るのを億劫にさせするか、分かる筈だ。

 脱毛以外にも、末梢神経障害の痺れや爪のダメージ回避のため、抗がん剤を必要以上に細胞に行き渡らせないためにはめる指先用のフローズングローブの開発や、点滴中に氷を舐めていると口内炎が起きにくくなるとか、“冷やす”という手段は既に実行されてきて、その効果をあげてきたようだ。だからこそ、今回の頭部冷却装置も出るべくして出たものだといえよう。
 もっとも、氷を舐めるというのは、実際にやってみたが果たして効果があるのか、同時に比較することが出来ないのでよくわからない、というのが正直なところだが・・・。治療中にお腹が冷えてしまったというのは紛れもない事実だった。

 とはいえ、転載した記事によれば、治療現場に広く行き渡るにはまだまだ時間がかかりそうだし、実際どのくらいの自己負担なのかもわからない。あまりに高額であれば、諦めざるを得ない人も出るだろう。けれど、待ちわびた人たちにとっては大きな一歩であるには違いない。
 今後、私がこうした恩恵に預かることが出来るかは神のみぞ知るだけれど、細く長くしぶとく粘っていれば、また道が開けるかも、と思うのである。
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2019.5.21 不安は他人(ひと)の言葉で解消できない

2019-05-21 20:44:29 | 日記

 今朝の連続テレビ小説で、自分の将来の不安を口にする主人公に対して言ったマダムの言葉に唸った。
「不安を誰かの言葉で解消するのはよくないわ。その不安と戦わないと」という激励の言葉だ。
 本当にそうである。自分の不安と戦えるのはほかでもない、自分だけ。どうしても乗り越えなければいけないのは自分の心、気持ちなのである。
 とはいえ、人は弱い生き物だから、どうしたって不安は口にしてしまうもの。そんな時、こんな言葉で寄り添いつつしっかり激励できたら素敵だと思った。

 今日のお昼は、朝から続くとんでもない土砂降りの中、後輩に誘われて学内レストランでランチをともにした。仕事上で色々悩む立場とお年頃である。
 今を遡る20年以上前、私も部下というものを持つ身になり、色々悩みは尽きなかった。見るとやるとは大違い。乳児であった息子の子育てもあり、一杯一杯の頃だった。
 けれど、誰もが通り、誰もが自分で乗り越えていく道である。
 代わってあげることは出来ないけれど、自分の時はこうだったよ、という経験を話すことは出来る。それを自分のものとして、自らの血や肉に換えていくのは本人次第。
 自分だけじゃないってわかってよかったです、という言葉をもらって少しは役に立てたのな、と思うとともに、彼女の後姿にエールを送った。

 さて、自分の不安とどう戦うか(という言葉は余り好きではないので、)いや、折り合いをつけるか。

 今回は気持ち悪さが軽減した後、酷い下痢にも見回れず、普通に食事を摂れる日に戻れてほっとしている。この休薬週でしっかり体重も筋肉も戻さなければ。
 で、今、気になるのは手指のピリピリとした痛みから派生した握力の低下。右の利き手に力が入らなくなっている。ぎゅっと握れない。握りが甘い。これまで10年以上にわたり色々な薬を使っているので、健康だった頃に比べて握力はかなり低下している。

 ペットボトルの蓋も開けられないことがままある。自転車のブレーキも握れないし、転んだら骨転移で大変なことになるかも・・・ということで自転車に乗るのも止めた。いよいよ本格的に末梢神経障害が出てきたのかもしれない。足裏は手足症候群の時のような皮膚の痛みはないが、ピリピリした痺れがある。けれど、PCが使えなくなったら、と手の方が心配だ。

 末梢神経障害(末梢性ニューロパチー)の主な自覚症状として上げられているものには「手や足がピリピリとしびれる、手や足がジンジンと痛む、手や足の感覚がなくなる、手や足に力がはいらない、ものがつかみづらい、歩行時につまずくことが多い、椅子から立ち上がれない、階段を上れないなど」である。

 患者仲間から、足に力が入らなくなって杖が手放せなくなったという話も聞く。
 次回の治療日の相談事は決まりである。不安は一つ一つ自分で解決していかなければ、始まらない。
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