FPの家で暮らす

ストレスフリーなFPの家で ひとり暮らし満喫

大沢在昌『らんぼう』

2018-09-10 16:02:36 | 本・映画・音楽の感想

娘がおもしろいとツイートしていたので、読んでみた。
実際すっごくおもしろかった。
ひとつの大きな事件を追う長編ではなく、短編の連作だ。
犯人も巨大な陰謀を企む大物なんかじゃなく、やくざやチンピラ。
そのくずどもを逮捕するというより、コテンパンにのしてしまう。
日本の刑事とは思えないはみ出しっぷりは、いっそ痛快。

リーサル・ウェポンのコンビ、リッグスとマータフでは、
暴走するリッグスをマータフが止めようとして振り回されているが、
この小説では、小柄で喧嘩っ早いリッグスと
大柄でやはり気の短いリッグスがコンビを組んで、
暴れる際には意気投合しているって感じ。
息の合ったこのコンビは、もう誰にも止められない。

坂口憲二と哀川翔でテレビドラマ化されたそうだが、
凶暴さが足りないような……


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たまきちひろ『ビットコイン投資 やってみました!』

2018-02-01 13:59:54 | 本・映画・音楽の感想

仮想通貨初心者向けの本、2冊目。これはまんが。

著者が仮想通貨をはじめた自分の体験を描いている。
理論的な話はごく少なく、相場の上下変動に喜んだりあせったりする
初心者にありがちな短期的視野を長期的視野にするべきと説く。
経験から来ているので、どういう対応を取るべきか、すごくわかりやすい。

離婚したうえに、本業のまんががスランプで収入減、
貯金の残高を見ると1年くらいで底を突くという状況で、
ビットコインに出会った著者。
「幸せは気持ちの持ちよう以前に、一定のお金がなければ成り立ちません!!」
仮想通貨を離れたそんなコメントにも説得力がある。

この本が出たのは昨年末だが、その最後に
「2018年はハッキング元年」と予測されている。
そして、つい先日コインチェックのハッキングが起きた。
皮肉なのは、コインチェックのCEO大塚雄介氏がこの本の監修者で
まえがきも書いているということだ。

最終的に、著者は200万円の元手を、1年で1800万円に増やした。
さて、今年はどういう動きが来るのだろうか。



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坂井 希久子『ほかほか蕗ごはん』

2018-01-25 14:40:58 | 本・映画・音楽の感想

江戸の町の片隅の小さな居酒屋ぜんや。美貌の女将が作るうまい料理と
店の雰囲気に惹かれて集う人々。小さな悩み事を抱えた客の話を聞きはするが、
女将が解決法を示すわけではない。ただ、話を聞いてもらった客たちは
心が軽くなって帰っていき、いつしかそれぞれの問題はほぐれていく。

一番の常連は武家の次男坊ながらまったく武士らしくない林只次郎だ。
うぐいすがいい声で鳴くように飼育する鳴きつけを生業としていて、
貧乏旗本である林家の家計を支えている。その彼が預かった大事なうぐいすを
猫に食べられてしまって、もうだめだ、と絶望していたとき、
鳥の糞買いの又三に、「話しているうちに、気鬱がスッと消えちまう。
失せ物や難問も、ひとりでに片づいちまうと評判」の女将がいると
連れて行かれたのが居酒屋ぜんやだった。

取り立てて大きな事件が起きるわけでもないが、ぜんやの空気が心地よく
集う人たちも気持ちよく、どんどん読み進んでしまう。
もちろん料理の描写もとてもおいしそう!

読んでいるうち、この女将と、まんが『絶滅酒場』のママが妙にしっくり重なった。
時代小説らしくない居酒屋ぜんや、絶滅した生物たちが集う絶滅酒場、
どちらもその雰囲気の中に身を置いてみたくなる店だ。



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知念 実希人『優しい死神の飼い方』

2017-04-11 15:46:24 | 本・映画・音楽の感想

ディーヴァー作品のような入り組んだ迷路の奥にまた迷路というミステリを
いくつも読んだあとにこういう〝ファンタジックミステリー〟に取りかかったら、
シンプルすぎるかに見えて、読み始めた当初、拍子抜けしてしまったのだけど、
どうしてどうして、なかなかに侮れない謎解きが隠れていたのだった。

ホスピスに改装された古い洋館は、7年前に未解決の殺人事件が起きたという
曰く付きだった。そこの入院患者たちは皆それぞれ断ち切りがたい
この世への未練を持っており、そのままでは地縛霊になること必至。
そこで彼らの未練を解消すべく、死後の魂を天井に導く死神の「私」が
ゴールデンレトリバーの姿で降臨してくる。

入院患者の皆がかつてこの洋館や洋館の住人に関わりがあったというのは
出来すぎの感があるが、これはミステリというよりは、ファンタジーなのだ。
しかも、ファンタジーでありながら、戦争中に端を発するできごとから
それゆえに起きた7年前の殺人事件まですべてをきちんと解き明かしてみせる。

クライマックスには全員で戦うという攻防シーンまであり、いくら探しても
見つからなかった捜し物は最後、思わぬところで見つかる。

ホスピスという場所柄、登場人物たちは次の春を見ることはないのだが、
心温まる読後感だった。

高貴な霊的存在が、犬の姿になったことで、地上の肉体的歓びを知り、
シュークリームに首ったけというのが、なんともカワイイ。

何ヵ月か前に、同作者の『仮面病棟』を読んだが、わたしはこれの方が
はるかに好きだ。



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ジェフリー・ディーヴァー『獣たちの庭園』

2017-03-21 12:44:05 | 本・映画・音楽の感想

ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライム・シリーズにすっかりはまって
シリーズを読み進んでいるのだが、全部読み終えてしまうのが惜しくて
間に他の作品も読んでいる。キャサリン・ダンス・シリーズは
リンカーンがたまに捜査協力で登場するという楽しみだけでなく、
ダンス自身が魅力的なこともあって、今ではこっちのファンでもある。
また、本家イアン・フレミングの007シリーズは未読だが、
ディーヴァーの『007白紙委任状』のボンドは、映画のイメージとは
ちょっと違うものの、きらいじゃない。もちろんディーヴァーらしい
どんでん返しは映画の007以上のものがある。

今回、ディーヴァー作品ではやや異色な『獣たちの庭園』を読んだ。
舞台は第二次世界大戦前のベルリン。ナチスの高官暗殺の指令を受けて
アメリカ人殺し屋ポールがオリンピックのアメリカ選手団に混じって入国するのだ。

ベルリンに入ってからは、たった3日の間に起きることなのだが、
その中身の濃密なことといったらない。文庫本にして600ページ超。
暗殺というミッション自体、簡単なことではないのに、それに加えて
さまざまなアクシデントやら陰謀やらがポールの前に立ちはだかる。
別の容疑でドイツの警察に追われる事態にまでなってしまうのだ。

この小説がおもしろかったのは、暗殺者の視点からだけでなく、
ポールを追う刑事警察(クリポ)の警視の視点からもきっちり
描かれている点で、この警視コールが『逃亡者』でキンブルを追う
トミー・リーに負けないくらい鋭く有能かつ愛すべき人物で、
わたしはポールよりむしろこっちに感情移入して応援してしまったほどだ。

ヒットラー政権下のドイツは、ユダヤ人にとって暮しにくかっただろうことは
想像に難くないが、一般のドイツ市民にとってもかなり窮屈な社会だったと
これを読んでよくわかる。警察機構に属してはいるものの、内心では
ヒットラーに批判的なコール警視にとっても状況はきついものだった。
しかも、SSやゲシュタポに見下されているクリポには十分な情報が
来ないし、検屍や指紋照合も後回し、捜査に必要な人員までゲシュタポに
駆り出されて、コール警視は部下ひとりのみで孤軍奮闘するしかない。

ともあれ、事態は二転三転し、3日の間にドイツ人の恋人ばかりか
親友まで得たポールは、ミッションを完遂して無事国に戻れるのかどうか?
結末は予想外のものだったが、温かな気持ちになること請け合い。



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