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「赫夜」と「怒る富士」

2025-03-05 13:45:39 | 本・映画・音楽の感想

図書館で借りてきた澤田瞳子の「赫夜」を開いたとき、おやっと思った。
そこにあったのは、どう見ても直筆サインだったからだ。


図書館の本に直筆サインだなんて……
でも、ためつすがめつ眺めてみても、とても印刷とは思えない。

パラパラめくって、最後のページを見てわかった。
これはやはり直筆だった。
発行書籍すべてに著者がサインを入れているのだそう。

理由は――
ネットでサイン本が高値で転売されているのを憂い、
本の平等性、文化の平等性を守るためにとのこと。

前代未聞の試みだそうだが、大変な労力だったと思う。

この「赫夜」は、平安時代の富士山の延暦大噴火を描いている。
たまたま去年には、江戸時代の宝永大噴火を描いた新田次郎の「怒る富士」を読んだ。
どちらも甲乙つけがたい良作だった。

それにつけても思うのは、今富士山の噴火が起きれば、これらの比ではない複合災害になるだろうということだ。
田畑が火山灰や溶岩で埋まり、雨で流れた火山灰で埋まった河川が氾濫する。
それだけでも地域の人々の暮らしは大打撃を受ける。
しかし、少し離れた江戸や、遠く離れた平安京では特に困ってはいなかった。

今は違う。
この時代にはない電気、ガス、水道、鉄道、電話等々のインフラ。
それらの恩恵を受けて送れている快適な暮らしが、たちまち立ち行かなくなってしまう。
航空機だって飛べなくなると聞いた。
首都機能が麻痺し、影響は全国に及ぶだろう。

目下、近いうちに起きると注意喚起されているのは東南海地震だ。
だが、富士山の活動はこれらの地震の前後25年以内に起きており、明らかな関連性があるという。
だとしたら、富士山噴火もいつ起きてもおかしくない。

今このときも、さまざまな災害が各地で起きている。
それでも、われわれは「赫夜」の登場人物たちのように、生きていくしかないのだ。

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