散日拾遺

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恋は罪悪/言葉の紳士淑女録 013: 「ゆくりか」系と「ゆくらか」系

2014-05-05 16:08:30 | 日記
2014年5月5日(月)

 「しかし・・・しかし君、恋は罪悪ですよ、解っていますか」
 (『心』100年記念再連載、『先生の遺書』第12回。)

 「先生」の有名な言葉。
 有名というのは違うか。この作品の多くの場面の、さまざまな会話の断片が印象に残っている、その中のひとつである。一般に有名であるかどうかは知らないし、どうでも良い。
 小説は若いうちに多く読んでおくのが良いし、その中のあれこれを後から読み直すのは、たぶん後年の大きな楽しみになる。初めに読んだ時はそんなものかと予告的に受けとめ、後から読む時には体験的に共感し反発する、そんな長いつきあいのできるのが、読むことの功徳である。

***

 再連載の初めの頃に、「ゆくりなく」という言葉が使われており、ひどく懐かしい気がした。「思いがけず」「突然に」という意味であるが、由来は何なのだろう。

 副詞「ゆくりなく」は形容詞「ゆくりなし」の連用形から出ており、この派生(というか、副詞として固定したこと)はわりあい最近起きたらしい。
 「音信も聞かざりける女に、ゆくりなく三崎の町中に行き遇ふて」(眉山)

 いっぽう、「ゆくりなし」に対応する同義の形容動詞として「ゆくりか」があり、この両者の起源は相当古い。
 「さても誰がいひし事を、かくゆくりなくうち出で給ふぞ」(源氏・行幸)
 「ゆくりかに見せ奉りて、おぼしかずまへざらむ時、いかなる嘆きをかせむ」(源氏・明)

 「ゆっくり」という現代語と音は似ているのに、意味はむしろ逆なのだ。「ゆっくり」に近いのは「ゆくらか」の方で、これは「ゆったりしたさま」を表すから本当に「ゆっくり」の先祖かも知れない。こちらはもっと古い。
 「漁(いざ)りするあまの楫の音(かぢのと)ゆくらかに 妹(いも)は心に乗りにけるかも」(万葉・3174)
 万葉らしい、ほっとするような歌だ。
 
 すぐちかくに「ゆくらゆくら」という形容動詞が載っている。「動揺して不安定なさま」を表すと言うから、「ゆらゆら」というような言葉の御先祖さまだろうか。
 「大船のゆくらゆくらに思ひつつ我が寝る夜らは」(万葉・3329)

 たまたまそういう引用なのかもしれないが、先の歌と「船/漁」といった類縁イメージがあり、海そのものの「のたりのたり」する様が思い描かれる。

 え~っと、まとめるとどうなる?

◯ 「ゆくらか」「ゆくらゆくら」という、ゆったり系の言葉。

◯ 「ゆくりか」「ゆくりなし」「ゆくりなく」という、突発系の言葉。

 二系統がある。
 互いに音は近いのに、意味は対照的である。どちらも起源は古く、僕らの感情言語の中にしっくりとなじんだもののように思われる。

Are you here?

2014-05-05 07:13:06 | 日記
Dear Sarah,

We just called you and left a message saying “Happy Birthday, we love you!”

It’s also our anniversary of 24 years as you know. When we look back our family journey, we always realize how we have been blessed in knowing you and enjoying our friendship. You are an important part of our life that can never be replaced by anyone else or anything else.

Take care and have nice days!

Kazuko & Masahiko