2017年10月7日(土)-9日(月)
土曜の昼の便で羽田から松山へ移動。案の定、空港は迎えの車であふれ、両親は駐車場入り口の渋滞で足止めを食っている。離陸の遅れを引きずって着陸も15分遅れ、遅れた同士が第2駐車場北東隅で行きあわせた。
折しも松山は秋祭り、家まで40分ほどの車移動の間、至る所に幟(のぼり)が立ち、空き地ごとに神輿を囲んで半被姿の地元の衆が集っている。幟の最後は我が家のすぐ下、辻の内の人々が昭和62/3年に奉献したものとある。
いつも通り、家まわりの手伝いや草刈りをするつもりで帰ったが、「秋の祭りに働く人はおらんよ」と両親が笑った。なるほど、お盆でももう少し生活音があったと思うぐらい、村の空気が静まりかえっている。半島のチュソク、この島里の秋祭り、千里を覆う浩天の気が、ひときわ高い十月初旬。
翌朝は早くから神輿を先導する鐘のシャンシャンが、近くなり遠くなりして一帯を練り歩いている。下の道を通っていくのを眺め、座敷で横になったらたちまち眠ってしまった。何が違うのか分からないが田舎の家の眠りは甘くて深い。疲れの砂が波打ち際で海水に崩れていくようで、背中が畳に張りついたきり動こうとしない。
手の届くところにある本から、『異類婚姻譚』(本谷有希子の芥川賞受賞作, 2015)と『キリスト教への道』(加賀乙彦の講演録, 1988)を指先で引き寄せ、読んでは眠りを繰り返すうちに一日が暮れた。体が動かない状態でたまたま手の届くところに置かれてなければ、どちらも読みはしなかったはずである。
二本の幟の間に、傾く月と電線の烏 ー 2017年10月9日(月)午前8時頃撮影
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