散日拾遺

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かづけられる

2018-08-01 07:52:35 | 日記

2018年7月31日(火)

 「かづけられる」という言葉は郡山時代に患者さんから教わった。

 「オレは何もしていねえのに、かづけられて・・・」

 「濡れ衣を着せられた?」

 「そうなんです。」

 事実に関するものだったか、被害妄想の文脈で語られたのだったかは記憶にない。現代の「標準語」では使われないが、調べてみれば案の定、由緒正しい古語である。

【被(かづ)く】

・ 他動詞四段活用

① 頭にかぶる「いよいよ御衣ひきーーきて伏し給へり」(源氏・葵)

② 禄として衣服をいただく、それを肩にかける「雪の降りしきたるにーーきて参るもをかしう見ゆ」(枕)

③ いただく「朝には星をーーき、秤竿に心玉をなし」(永代蔵)

④ 身に引き受ける、押しつけられる「闇にても人はかしこく、老いたるすがたをーーかず」(五人女)

・ 他動詞下二段活用

① 頭にかぶらせる「まとゐする身に散りかかる紅葉ばは風のーーくる錦なりけり」(伊勢集)

② 禄として与える「郎党までに物ーーけり」(土佐)

③ かこつける、転嫁する、なすりつける「さて病にーーけて御供申して」(三体詩抄)

新選古語辞典改訂新版(小学館)

 下二段活用の③、最後のものがそれと見える。もっとも、例文は「病気のせいにして、病気を口実にして」ぐらいの感じで、「人に濡れ衣を着せる」というどぎつさとは、やや距離が感じられる。

 今の郡山の若い人たちが使うかどうかは定かでないが、むしろ「標準語」に取り戻してみたい用法である。

 東京は今日からまた35℃。

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