2018年8月29日(水)
「考えてみれば解ることですよね。妬む気持ちを前向きなパワーに昇華できないのは、大概、男性だというのに。」
湊かなえ『ベストフレンド』
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男の嫉妬は、女のそれよりはるかに怖くてタチが悪い、よくよく気をつけなさいというのが母の教えの中にあった。思いあたることが確かにいくつか、人生の中であったようだ。体格のことを絡めて辛辣に論じた誰かのエッセイも記憶にあるが、これは書かずにおく。
「嫉み」と「羨み」、第10の戒め(貪るな)については既に書き散らしてきたが、一度まとめておかないといけない。重要な参考書の晦渋が悩みの種である。
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「勉強もスポーツも楽器の腕前も容姿も、すべて人並みな自分に、生まれてきた意味などあるのだろうかと、夜中に無性に泣きたくなったこともあります。」
湊かなえ『罪深き女』
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「すべて人並み以下の自分」とあるなら、すんなり読み過ごせるところである。「人並み」は無意味?ほんとうに?
筆がすべったか、確信的にか、後者であろう。人並みでは満足しない、誰も彼もが人並み以上を求める ~ 遠く目指すのではなく、性急に要求するパラドックスが現実となり、「人並みの幸せ」というよく聞かれたフレーズは気がつけば死語である。「人並み」では幸せになり得ない。アジア学院の留学生の頭上にまた「?」の並ぶことだ。
「妬み」が解消不能にもなるわけである。
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