散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
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名も知らぬ人の厚意と信念と

2019-07-01 17:57:31 | 日記
2019年7月1日(月)
 さほど混んでもいないし、さほど疲れてもおらず、先ほど『今昔物語』の第一分冊は読み終えちゃったので、吊革につかまってスマホの詰め碁に興じていたら、GP2900に進んだところで。
 左の肩先を誰かにポンと叩かれた。目を挙げると、出口に向かう乗客の中の若い女性が僕の背後を指さしている。何だろうとふり返りまた視線を戻したら、女性の表情がちょっと変わってそのまま降りていった。さらにホームから窓越しににっこり微笑む。顔見知りだったろうかと、こちらも見つめながら記憶を走査するが思い当たらない。もの言いたげな微笑みを残して行ってしまった。
 何だ?
 しばらく考えめぐらしてたどりついた推測、「後ろの席が空いてますよ」と教えてくれたのだね、きっと。あるいは、自分が座っていた席が、今空いたところだからと。ふり返ったときにはもう誰かが座っていたので、それで表情が残念そうに変わったのか。ということは、これって「席を譲られた」に準ずる体験?
 あ~あ
 いずれこの日が来るのではあるが今日の身供は好調快調、疲れなんか微塵もなしに詰め碁に熱中していたのだよ。溜池山王でも空席はあったが座らなかったのだよ。それなのに、ああ、それなのに、それなのに
 そんなにクタビレて見えるかな、年とって見えるかな、来る日も来る日も座席を譲るチャンスを狙いこそすれ、譲ってもらおうとはついぞ願ったことがなかったのに。
 あ~あ

 それにしてもあの女性、気軽に肩を叩くのやら、指で背後を示す仕草やら、見ず知らずの男に正面からにっこり微笑む表情やら、日本人とりわけ東京人離れしている。海外在住歴のある、とりわけアメリカあたりに住み慣れた御仁でもあろうか。
 ちょっと話してみたかったな。あんな人にニコポンしてもらえるなら、譲られ体験も悪くないかも。まだこの先20年は不要だけれど。

***

 コメントありがとうございます。あなたの小さな玉手箱には何が入っているのでしょう?うっかり開けたらどーんと年とっちゃう魔法の煙ではないでしょうね。

> 私の伯母も10代にして原爆で亡くなりました。
> 平和を実現するために…
> 圧力や脅しではなく、カール・ロジャーズが行った国と国が徹底して意見や感情を自由に表出し合うことが出来ればいいなと考えています。

 ロジャーズにそんな言説や事績があったとは知りませんでした。貴重な御教示をありがとうございます。
 ロジャーズについては、技法としての「来談者中心療法」がモラルの土台から切り離されてもちこまれ、和魂洋才よろしく日本型傾聴の上部構造を飾っているように感じます。けれども、時には土台をこそ問うてみたい。「キリスト教の軛を捨てて心理学に投じた」式の薄っぺらい理解で足れりとするのではなくて。

 あなたの信念が、生活の場で実りをもたらす明日でありますように。

Ω