散日拾遺

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力をためる/形の力

2019-07-13 20:46:22 | 日記
2019年7月9日(火)
 代休を活用して、Sさんと半日の囲碁三昧。二局目の途中で許可をもらって盤面をパチリ。次は黒の手番(85手目)である。勝敗はいつだって下駄を履くまで分からないが、そのことではなく日頃打ちたいと思う碁が、珍しくも打てているのが嬉しくて。
 後日別の人に写真を見せたら、「どっちのこと?黒は白8子を取り込んでいるけれど、見えてる地は白の方が多いんじゃないの?」と不得要領。そう見えるかな。自分の目がおかしいかな。 

 

 黒石が歓喜していると僕には見える。全局的にしっかりした形で外に回り、8子を取りこんだ部分に鉄壁の厚みができているのがとりわけ嬉しい。逆にその部分で10子ぐらい取られているとしても、この厚みならたっぷりおつりが来るだろう。後は厚みにためた力を生かして、収穫を挙げつつ追い込んでいく、追い込みを可能にするのがしっかりした良い形である。
 そうか、本当に打ちたいのは、成り行きではなく計画的な捨て石によって、こんな好形を築く碁なのだった。それができれば高段の芸、まだまだそこには届かない。

***

 素人遊びとプロの芸を一緒にしては申し訳なく、畑も違うことながらふと目にとまったので。
 大相撲名古屋場所、東小結の阿炎(あび)は期待の大器だが、このままではどんなものか。見ていてどこかおかしいと思うのはナゼだろうか。4日目の横綱鶴竜戦で、ああそうかと気がついた。



 突っ張りの威力に目を奪われて注目が上半身に向かいがちだが、相撲の強さはかかって下半身にある。足の形に注目したい。向かって左、鶴竜は足裏全体が土俵にぴったり付き、腰を落として下からあてがっている。土俵をしっかり踏まえ、そこにためた力が腕まで自然に伝わっていく。対する阿炎はつま先だって腰が高く、上半身から前のめりに突っ込んでいる。見た目ほどの力が腕にもこもらない。


 相撲の稽古の基本は、四股とテッポウ、そしてすり足である。白鵬がこの基本動作に驚くほどの時間をかけること、よく知られている。いつもすり足、どこでもすり足、つま先立ちで前のめりに突進するという発想は相撲にない。何だかヘンに見えたのはそこだったようだ。
 阿炎の師匠錣山(しころやま)親方は元つっぱり名人の関脇寺尾、きっと修正が入るに違いない。それまでの間、この上の活躍はちょっと難しいかなと素人雀のサエズリ、他人様のことはよく見えるのである。

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