散日拾遺

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万葉秀歌 002 ー やまごしの・かぜをときじみ(1・6 軍王)

2019-04-08 13:53:10 | 日記

2019年4月8日(月)

  山越(ごし)の風を時じみ寝る夜おちず家なる妹をかけて偲(しぬ)びつ[巻1・6]

 これも反歌、長歌は下記:

 讃岐国安益群(あやのこおり)に幸(いでま)しし時、軍王(いくさのおほきみ)、山を見て作れる歌

  霞立つ 長き春日の 暮れにける わづきも知らず むらきもの 心を痛み ぬえこ鳥 うらなけをれば 玉だすき 懸けのよろしく 遠つ神 わが大君の 行幸(いでまし)の、山越す風の 獨をる わが衣手に 朝夕(あさよひ)に 還らひぬれば ますらをと 思へる吾も 草まくら 旅にしあれば 思ひやる たづきを知らに 網の浦の 海(あま)をとめらが 焼く盬の 思ひぞ焼くる わが下ごころ

[巻1・5]

 原注に「日本書紀を検(けみ)するに、讃岐国に幸いししことなし(中略)伊豫の温湯の宮に幸しきといへり、疑はくはこの便より幸ししか」とある。

 「寝る夜おちず」は毎晩欠かさず、「かけて」は心にかけての意、と茂吉先生丁寧に解説。そして「『山越の風』は山を越して来る風の意だが、これなども正岡子規が嘗て注意した如く緊密で巧みな云い方で、この句があるために、一首が具体的に緊まって来た」と記す。

 具体的に緊まってきた・・・子規と茂吉に通じる要諦か。「山越」を玩味するうえで、「朝日かげ にほへる山に照る月の 飽かざる君を山越に置きて」[4・495]が参考になるという。風を吹きよこす山越えの彼方に「君/妹」が待つということか。

Ω

 

 


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