2023年6月4日(日)
項を分けておこう。
茅ヶ崎へ向かう電車が辻堂駅に停車したとき、ホームから聞き慣れたメロディが流れてきた。『浜辺の歌』である。帰途にもまた聞こえたから間違いない。
2016年(平成28年)12月から行われていることだそうで、下記に仔細が記されている。歌人で作詞家の林古渓が、幼い頃に辻堂東海岸を歩いた思い出をもとに歌詞を作ったとされるのが根拠とある。
https://tujidounotami.jimdofree.com/%E8%BE%BB%E5%A0%82%E9%A7%85%E9%96%8B%E8%A8%AD100%E5%91%A8%E5%B9%B4%E4%BA%8B%E6%A5%AD/%E8%BE%BB%E5%A0%82%E9%A7%85%E7%99%BA%E8%BB%8A%EF%BE%8D%EF%BE%9E%EF%BE%99%E6%B5%9C%E8%BE%BA%E3%81%AE%E6%AD%8C/
『浜辺の歌』
作詩:林古渓 作曲:成田為三
大正5年(1916年)
あした浜辺をさまよえば
昔のことぞ偲ばるる
風の音よ 雲のさまよ
寄する波も かいの色も
昔のことぞ偲ばるる
風の音よ 雲のさまよ
寄する波も かいの色も
ゆうべ浜辺をもとおれば
昔の人ぞ偲ばるる
寄する波よ かえす波よ
月の色も 星のかげも
昔の人ぞ偲ばるる
寄する波よ かえす波よ
月の色も 星のかげも
***
そういえば、「もとおる」という言葉は自分の辞書になかった。下記を見れば「さまよう」とよく呼応する言葉のようである。
①から②への転意はわかりやすいが、③、④とひっくり返るのは不思議で面白い。
もとお・る、もとほる【回・徘徊・繞】〘自ラ四〙
出典 精選版 日本国語大辞典精選版
① まわる。めぐる。徘徊する。
※古事記(712)中・歌謡
※古事記(712)中・歌謡
「神風の 伊勢の海の 大石に 這ひ廻(もとほ)ろふ 細螺の い這ひ母登富理(モトホリ) 撃ちてし止まむ」
② (曲がる意から)まっすぐでない行ないをする。曲がったことをする。
※成唯識論寛仁四年点(1020)六
※成唯識論寛仁四年点(1020)六
「忿と恨とを先と為、追ひ触ればひ、暴(し)ひ熱(あつ)かひ、很(ひすかし)まに戻(モトホル)を以て性と為」
③ 思うようにはこぶ。思うように自在に動く。自由になる。
※上杉家文書‐天正一〇年(1582)(三・四月頃)上杉景勝自筆書状
「人躰衆にふにふにて、もとをらす、のひのひにて口惜迄候」
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一
「もとおらぬ三味線鳴らしてゐやう程に、主は笑止がる顔して」
④ 役に立つ。
※滑稽本・早変胸機関(1810)
「もとをらねへことをいったっても始まらねへはなし合だから」
Ω