
よく「ツアーではなく自分で海に出たいから、カヤックレンタルできないか?」という質問も頂くことがあります。
結論から先に言いますと、アイランドストリームではカヤックレンタルはやっていません。前回の記事で「これから自分自身で海に出ようとする人も、アイランドストリームとして、そして個人として、応援しています」と書きましたが、それはあくまでも自艇を持って海に出る方についてのお話です。
理由とすれば何点かあるのですが、
1:借りる方のカヤッカーとしてのレベルを判定しかねる。
2:安全管理しきれない。
3:責任の所在が曖昧になる。
というところになるでしょうか?
まず①のレベルに関してですが、これはもう一緒に漕いでじっくりその人の漕ぎを見なければ、判断できません(いや、面識もないのにただ貸してくれとおっしゃる時点で、もう判断できるのですが)。自己申告で、電話やメールで「10年のキャリアがあります」「ロールできます」とおっしゃったところで、それが本当がどうか分かりかねますし、むしろえてしてその逆で、実際に漕いでみたら非常に心許ないというケースも、数多く見てきています。見栄をはっておっしゃる方もいる。また、漕ぐスキルはそこそこあっても「ナヴィゲーション能力」がまるでなく、自分でコース取りができない方も多いものです。そんな方は、こちらが「レンタルできます」と看板を掲げるやいなや、「別にスキルやナヴィゲーションが拙くても大丈夫なんだここのフィールドは」「ぼくのスキルでも行けるほど楽勝なんだ」と誤解してしまう可能性もあります。しかし、ガイドなしで、特に自分で海に出る場合、自分自身で海を読み、気象を読み、地形を読んで進まなければならないのですから、ナヴィゲーションや状況判断の能力が不可欠となるわけです。最低限、マップケースとデッキコンパスは用意する必要があるのですが、気軽に「レンタルさせてくれ」という方で、マップとデッキコンパスを持参された方を見たことがありません。それを渡したとしても使い方が分からない。やはりそういう人はツアーに参加されることをお勧めします。
ツアーの場合、こちらが全部判断するので、ナヴィゲーションできなくても一定の漕ぐ能力さえあればいいのですが、レンタルの場合、こちらが終始見ているわけではないので、まずいコース取りや状況判断をされて何か起こったとしても、どうしようもありません。レスキューもできません。なので、②の安全管理がしきれないということになっていまいます。
そして③の責任の所在の件ですが、これは個人主義が発達した欧米の場合、借りて何らかの事故やトラブルがあっても貸した方の責任は問われることはありません。完全に自己責任の世界です。しかしそこまで個人主義が発達せず、アウトドア文化も成熟しきっていない日本の場合、やはり貸した方の責任も問われます。また世相、世論の論調も貸した方が悪になります。・・・このように書くと責任を回避したいように聞こえるかもしれませんがそうではなく、やはりその所在が曖昧なまま貸す方も借りる方も、気持ちよくやりとりできないところがあるわけですね。むしろ、お客さんは「知らず」に、借りて漕ぎたいという一心で「貸してください」と言うわけで、邪心がないのかもしれません。それを、色んなリスクを知っているこちらが「どうぞ、ご自由に漕いでください」と簡単に貸すわけには、いかないわけです。まず何より個人的に、そういう気にはなれない。友達や家族がそう言ってきたらどうするか、と考えるとわかりやすい。
もし自分で海に出るならば、自分が船長。
これがシーカヤック、海の掟。
しかしレンタルとなると、それが曖昧になる。
それ以前に,その意識を持って海に出る人は少ない。
ガイド付きではなく、自分で海に出たい場合、やはり自艇を持つことですね。自艇を持つと意識が変わります。まず自分が船長になります。そして誰のせいにもできず、全ては「自分の責任」であるという実感が湧きます。
やはりその意識を持たなきゃ。
そこから本当の面白さが分かってきますし、そこで初めて海は色んなことを語りかけてきてくれます。
そして私たちも、海の仲間として心から迎え入れることになるわけです。
もちろんガイドツアーではカヤックをレンタルするという形になりますが、ここで言っているのはツアーではなく、ただ艇だけレンタルして自分で漕ぐということについて言っていますので誤解なく。
ガイドツアーに参加するか、
もしくは自艇で海に出るか
そのどちらかしかないと思っておいた方がいいでしょう。
遊びはケチると、最終的には、自分自身にケチがつきます。