一ヶ月ほど前からガイドベース近くの浜に、翼の折れた飛べないカモメが一羽住んでいる。
歩いて近づくとヨチヨチ浜伝いに逃げだし、さらに近づくと海に入って泳いで逃げようとする。遠くに去ると、再び何事もなかったかのように浜に戻り、砂に身をうずくめる。
夏場北海道あたりにいたカモメは、越冬のため10月半ばくらいから、ここらあたりにやってくる。
で、こいつも仲間と一緒にやってきたが、どこかで羽を傷つけてしまったらしい。
最初、釣り糸が絡んで羽が曲がった状態になっているだけだろうと思ったので、ならばはずしてあげようと先日、捕獲作戦を開始した。一人が浜から歩いて近づいて海におびき寄せ、海にヨチヨチ出てきた途端、カヤックで待ち伏せするオレがサーっと近づき、タモ網で掬い取ってやろうという作戦だ。だが、思ったよりもすばしこく、すぐにカヤックの死角に回られ、あるいはクチバシで必死に抵抗され、悪戦苦闘した。仲間のカモメたちがギャアギャア騒ぐ中、なんとか捕獲して獣医に持っていったが、お手上げ・治療不可だった。
結局、釣り糸が絡んでいたのではなく、左の翼の真ん中からなくなっていたのだった。
ないものはどうしようもない。
せっかくもとの自由に空を飛びまわる姿に戻してやりたかったのに。
かわいそうに。
今のところ栄養状態はいいようだが、これから厳しい冬を迎える。エサはどうするのだろうか。ネコやカラスに襲われやしないだろうか。春までもったとして、仲間はみんな北へと帰ってゆく。今でもはぐれものなのに、そうなると完全に一人ぼっちだ。
野生は厳しいのう。
まあ、たまにイワシでもやりにいくとするか。