一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2990  踏みしめる土の弾力ふきのとう   蠍

2023年03月07日 | 

 春は「苦味」と言われる。山菜の独活、蕗、楤の芽、土筆、蕨、芹、薇、三葉、筍、などには、苦味のもとになるポリフェノールやミネラルが豊富に含まれていて、体内に溜まっていた不要な熱や水分を軽減し、気分の興奮を落ち着けてくれ、新陳代謝を促進し、胃腸の働きを促すのである。

 さて、休眠していた草木は、春になって一斉に動き出す。芽や花が動き出すには、まず根から水や養分を吸い上げる。堆肥や根や霜柱によって浮き上がった柔らかい土は、更に盛り上がり弾力を増すのである。

 蕗は、日本原産で全国の山野に自生している。蕗の花である蕗の薹が咲いた後に、地下茎から葉が伸びる。花も葉もそして茎も食べられる春の山菜である。

ヤシャブシ(夜叉五倍子)

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2989  第488回 多留男会 二月

2023年03月05日 | 岩戸句会

踏みしめる土の弾力ふきのとう     蠍

手のひらに豆腐切る朝春隣       〃

      

春立てり波の潮目に吹く風に      吟

あんぱんのおへその上の桜かな     〃

 

カツカツと春風を行くハイヒール    心

春めくや貧乏ゆすり見せており 

 

料峭や幕府黒松魚付林         マープル 

屋台の枘コツンと嵌める梅三分     〃

 

真夜中に氷柱は牙を研ぐらしい     さくら

生国はどの辺ですか山の独活     

 

しほらしき薄氷なすがまま光り     黒薔薇 

ぽつんと人影小路に余寒かな

 

一羽来て一羽出て行く巣箱かな     伊豆山人

陽の当たるベンチをえらぶ梅見処   

 

マフラー巻くリボン結びのお地蔵さん  豊狂

春時雨日曜朝のヴィヴァルディー 

  

梅咲いた秒針コトリと動いた      ルパン

定置網後光差しけり春の湾 

 

春がすみピンクに染めて綿菓子に    吠冲

マスクとれいいえ私は花粉症      〃

          

早春の馬込百坂風の音         淡泊

早春の池上梅園老夫婦         〃

 

冬桜友美しく身罷れり         おぼこ

夫を看るそれも幸せ春隣

 

春寒の静かなる海眺めつつ       コトリ

満開のマンサク見上げ背伸びする   

 

梅咲かば香りほどけて鳥の声      信天翁

春の雪窓辺に踊り過ぎ行きぬ    

 

春麗富士の笠雲追いかけて       翠風

青空と河津桜の朝湯舟       

 

春浅き吹く風の色空の色        流水

吹く風に背を向けて行く浅き春    

 

その喧嘩櫟が買った春一番       釣舟

そろそろと高足蜘蛛の春動く     

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2988  老犬の屁の臭過ぎる四温かな  釣舟

2023年03月04日 | 

 老いてゆく12才の犬を見るのは悲しい。車が大好きなデンちゃんで、どこへ行くにも必ず連れて行くが、楽々乗れていた車に乗れず、ドスンと尻もちを付いてしまう。今までなかった下痢が増えた、などである。とんでもなく臭いおならもその一つ。但し、食欲が変わらないのが唯一の救いです。

 句会にこの句を出したら、「デンちゃんが可哀そう」と言われてしまいました。黙っていたけれど、「本当に可哀そうと思っているのは、面倒を見ている私だと思うよ」四温という季語に「デンちゃん、今日は暖かくて良かったね」という思いを表したつもりだったけれど、逆に、非情の飼い主と思われたようである。

 

 

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2987  梅探るこの世に独り遺されて  佳津子

2023年02月23日 | 

 地球上に80億の人々が住んでおり、イヌやネコなど様々なぺっトも相当いる。自然界には野生の小鳥達や動植物もいるのに、この世に作者は一人取り遺されたという。

 「都会の孤独」という言葉がある。沢山の人々がいても、孤独感はなくならない。フランス語の「デラシネ」「根無し草」は都会の孤独と似ている。「ひとりぼっち」より「おひとりさま」の方が孤独を享受している感じもする。

 父母すでに亡く、元々兄弟姉妹もなく、子孫はなく、そして最愛の夫も亡くし天涯孤独となりました。まして、親しい友人もいないとなれば正に天涯孤独である。

 しかし、作者はどうやら孤独感はないようである。つまり、「今日という日の探梅を楽しんでおります。運よく健康に恵まれ、俳句仲間に恵まれ、おひとり様を楽しんでおります」そんな感じの句ではないだろうか。

節分で鬼にさせられたデンちゃんです。散らばった豆を大喜びでせっせと食べています。

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2986  山雀の糞の一滴初景色  釣舟

2023年02月13日 | 新年

 ヒマワリ(向日葵)の種を餌台に置いて、もう20年以上経つだろうか。ヒマワリを食べるのは、ヤマガラ(山雀)、シジュウカラ(四十雀)、イカル(鵤、桑鳲)キジバト(雉鳩)などである。

 ヤマガラ、シジュウカラは、くわえて行って近くの安全な枝で殻を割って中の種を食べる。イカルは、その場で口の中で殻を割って食べ、殻は器の中に残すから、全て食べきることはできない。キジバトは、殻ごと丸呑みする。

 メジロ(目白)、ヒヨドリ(鵯)は、ヒマワリを決して食べようとしない。ミカンやリンゴなど果物好きなのだ。いずれにしても、鳥によって肉食、魚食、種食、果実食など食性は様々。食性によって、くちばしの形も様々なのだ。

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2985  初詣明るい方へ歩き出す   コトリ

2023年02月11日 | 新年

 この2月は、新型コロナのパンデミックは4年目に入った。ロシアのウクライナ軍事侵攻も1年を迎え、長期化している。地球温暖化も留まることを知らず、多くの暗いニュースが幅を利かせている。

 核兵器からの脅威のみならず、気候変動による環境破壊や生命科学の負の側面による脅威なども考慮して、針の動きが決定されている、世界終末時計。原子力科学者会報の表紙を飾っているその世界終末時計が、今年最短の90秒前と発表された。

 さて、ほとんどの神社の境内には、杜(森)がある。本殿などの建物は、杜に守られるように囲まれている。この句の「明るい方」とは、初詣を終えて木立のない参道の明るさを言っているのかもしれない。

 しかし、作者は希望を失っていないようだ。「最後まで希望を失わないように」というメッセ―ジを私達に投げかけている、と解釈すべきだろう。

ナズナ(薺)ハコベ(繁縷)スズシロ(大根)に、コマツナ、ショカツサイ、クレソン、ルッコラを加えて七草にしました。

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2984  戻らざる遠くの人も冬籠り  さくら

2023年02月09日 | 

「冬籠り」とは、寒さの厳しい冬を、土の中などに潜って、じっとしたまま過ごすこという。 又、寝て過ごすことを「冬眠」というが、これも冬籠りである。人間も冬は家に籠りがちになるから、人間にも適用する。

さて、「戻らざる遠くの人」とは、誰であろうか。今では会うこともなくなった遠くに住む、懐かしい身内や友人のことかもしれない。又、座敷や仏壇に飾っている写真の、今は亡き人々、父や母のことかもしれない。いずれにしても、家に籠って、過去現在未来の様々なことに思いを馳せているのであろう。

フキノトウ(蕗の薹)

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2983  冬の月泣かないための赤ワイン   黒薔薇

2023年02月08日 | 

 人は悲(哀)しくて泣く、怒って泣く、悔しくて泣く、淋(寂)しくて泣く、そして嬉しくて泣く、何かに感動して泣く。この句の場合、どれだろうか。又、月を見ているのだから屋外だろうか室内だろうか。はっきりしていないから、それは、読者に委ねられている。・・・などと考えていたら、以下の作者の自句自解が送られてきた。

 『月を表す言葉には、宵闇、月影、薄月、良夜、偃月、臘月、月華、月桂等々多くの呼び名がある。二十四節気の大寒を迎えての冬の月の高度は高く、寒さも一入厳しく湿度が低いために空気の透明度が高く、月は冴え冴えと見え、真夜中には真上近くになる。

 冬の月の光は、物悲しく侘しい気持ちにさせる。寂寥感、涙する気持ちが湧く。この気持ちは、誰もがもつのだろうか?感情はコントロールできるのか。感情にとらわれないことの一つに無心になりたいと思うことだと・・・ソファーで楽曲を聴きながらボルドーの赤ワインで、平穏な一日に感謝』(黒薔薇、自句自解)

スイセン(水仙)

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2982  第317回 1月 岩戸句会

2023年02月07日 | 岩戸句会

初鏡たしかにこれは祖母の顔     吟

ひょうきんな綽名のまゝの初便り   〃

 

冬の月泣かないための赤ワイン    黒薔薇

大寒や真っ赤なビーツスープ美味

        

初詣明るい方へ歩き出す       コトリ

食べないの寒の山雀餌隠す       〃

 

戻らざる遠くの人も冬ごもり     さくら

雑煮椀具は串刺しが博多流      〃

 

熱燗をグっと飲み干し出す答え    流水

雪嶺の朝日をかえす赤き富士     〃

 

寒椿美しきまま落ちまする      おぼこ

老人が老犬を引く冬の坂

 

寒雀枯萱足場ぶらんこに       豊狂

餅焦がし顔火照すどんど焼 

   

保険証ポインセチアのわきに出す   伊豆山人

松かざり一週間の寿命かな       〃

 

寒波きし故郷の山凛として      信天翁

夕暮の畑道哀し虎落笛        〃

 

バルザックの彫像重き黒マント    マープル 

孫娘より化粧の手解き女正月 

    

冬空に一羽のカラス見張りおり    心

初明りスマホに届くうさぎ年     〃

 

初出航鴎達追いかけてきた      翠風

朝風呂や河津桜が二輪咲き      〃

 

八重の香につつまれ迎える初明り  吠冲

双六やまた振り出しで戦前に     〃

 

ゴミ箱に正月飾り虎の絵馬      ルパン

初日の出大仏様の眼の如し

       

メモ忘れスーパーうろつく夜寒かな  蠍

一字一句心をこめて寒中見舞

    

枇杷の花咲いて受粉の手を求む    淡白

銀杏の樹裸に成りて月を載す

 

山雀の糞の一滴初景色        釣舟

凸凹の沖雲に穴初日の出       〃

 

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2981  初鏡たしかにこれは祖母の顔   吟

2023年02月05日 | 新年

 この句、鏡に映った顔がよく似ている程度の話ではなく、作者の祖母の顔そのものだと言っている。つまり祖母と驚くほどよく似ている、というのだ。

 ここには、多分複雑な想いがあるだろう。ああ、私はこんなに年取ってしまった、という老いに対する悲哀。一方、優しかった大好きだった、今は亡き祖母への恋慕、そんな初鏡だったのだ。又似ているのが母でないことも、気にかかるところ。作者の心は分からないが、それで良かったのか、それとも悲しんだのだろうか。

 さて、ものの見方には、共通点を探す見方と相違点を探す見方がある。日本人は、生まれて間もない赤ん坊を見て「あら、おばあさんにそっくりね」などと、よくお世辞というかご挨拶のように言う。

 一方、瓜二つの双子の兄弟を見て、AちゃんとBちゃんの区別がつかないのはよく見ていない他人だからで、違いの分かる母親が間違えることはあり得ない。

 つまり、共通点を探すのは易しくて、相違点を探すのが難しい。ワインの世界ソムリエコンテストで優勝することができるのは、違いが分かる味覚があるからなのだ。

フキノトウ(蕗の薹)

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2980  山茶花の垣の穴より猫の顔    豊狂  

2022年12月18日 | 

「サザンカ」は、「山茶花」と書くが、音読みの「さんさか」が「さんざか」となり、訛って「さざんか」となったそうである。チャノキ(茶の木)と同じツバキ科ツバキ属で、童謡「たきび」にあるように、「山茶花」は寒さに強いイメージがあるが、元種は四国九州が北限で、寒さに強いのは改良された園芸品種なのだそうである。

 確かに山茶花は、生け垣によく使われる。この句、猫が山茶花の垣根の穴から、ふと顔を出した瞬間をとらえた。跳び出さず、警戒して周りを窺っている様子が、とてもユーモラスである。

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2979  古都を行くツィード黒の冬帽子   心

2022年12月01日 | 

 一口に古都と言っても色々ある。日本では奈良、京都。しかし、世界に目を広げると、最も古い古都は、例えば、四大文明のエジプトのメンフィス・ヘリオポリスなど。メソポタミアのバビロン。インダスのモヘンジョダロ。中国の黄河西安近郊の仰韶。インカのクスコやマチュ・ピチュ。マヤのマヤパンやチチェン・イツァ。

 ギリシャのアテネやイタリアのローマ、スペインのトレド、フランスのナント、イギリスのチェスター、スコットランドのエディンバラ等々他にも沢山あるだろう。

 さて、本来のツイードとは、スコットランド、ツイード川流域で作られた毛織物をいうらしい。現在では、機械織もあるし、染色も様々。従って作者が、スコットランドのエディンバラやグラスゴー辺りを旅した時の句と想像するのも楽しいではないか。

 しかしながら個人的には、全くツィードとは縁なく暮らしてきた。残念至極である。

 

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2978  深秋や耐心とだけ亡母の文  おぼこ

2022年11月28日 | 

(しんしゅうや たいしんとだけ ははのふみ)

 冬がそこまで来ている晩秋の頃、外では木枯が吹き枯葉が舞っている。既に家族も寝入ったのであろう。ようやく一人の時間が訪れた。久し振りに押し入れから文箱を出し、蓋を開ける。亡き母の歳に近づいた作者。結婚したての作者に宛てた亡き母の手紙を開く。唯々娘の幸せを願う母の手紙を読む。何度も何度も読んだのであろう。涙の染みがあるかもしれない。

そこには、「耐心」としか書かれていない。

 「耐心」を広辞苑で調べると、載っていない。つまり、あくまで中国語のようである。辛抱強さ、根気良さをいうらしい。よく私達が使う「忍耐」に意味が近いと思うが、「耐心」の方がはるかに優れた言葉だ。

日本に「耐心」という言葉が定着しなかった理由を問いたい。

 

キチジョウソウ(吉祥草)、キチジョウラン(吉祥蘭)、カンノウソウ(観音草)とも

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2977   第314回 10月 岩戸句会  

2022年11月22日 | 

ワグネルと白茶のかほり秋うらら   吠沖 

村神様ぽっちゃり気味の菊人形

 

山脈が包むくらしや秋の暮      さくら

道草の子らは物知りバッタ追う

 

労いのことば互いに十三夜      おぼこ

深秋や耐心とだけ亡母の文

  

倒れたるかかしに案山子指を差す   流水

振り向けば道の向こうに秋の声

 

赤とんぼくるくる頭まわしおり    ルパン

廃校は三年後とか霜降りる

    

波しぶき白く躍りて秋の川      信天翁

友来たり栗飯炊きて和む夕

 

漆黒の毛髪曼荼羅冷まじや      マープル

黒子のように同居の蜘蛛いる十三夜 

 

この富士は北斎ブルー秋の暮     吟

大花野仔犬も我も内弁慶

 

帯祭り富士の笠雲秋の暮       翠風

秋風蓬莱橋天女渡り

 

順天に病も駅伝も任せとけ      伊豆山人

蘭の花背伸びしながら秋をゆく

 

十三夜家族のみ知る隠し鍵      蠍

主なき庭に届けり十三夜

 

夜半の秋古書洋楽美酒少し      黒薔薇  

老し蝶日のあるうちに静かに舞う

 

秋祭り笛と太鼓に神宿る       淡泊

ハナミズキ実も葉も染めて日が暮れる

 

メロンパン臍曲がり屋の十三夜    豊狂

悪筆を個性と自慢豆名月

 

末っ子も古希を過ぎたり芋を掘る   釣舟

試し呑む今年の梅酒十三夜

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2976  道草の子らは物知りバッタ追う  さくら

2022年11月21日 | 

 新型コロナの影響で、ステイホームや家庭学習が増える中、年代別子供用図鑑がバカ売れしているという。動物、昆虫、魚、恐竜、地球、宇宙、星座、飼育栽培、多肉植物など多種多様である。ほとんどにDVDが付いている。場所を取らない電子書籍版もあるから至れり尽くせりである。

 図鑑に嵌った子供たちは、大人顔負けの知識を持ち、親などはとてもついて行けないという。そういう豆博士の中から、将来の動物博士や宇宙工学博士が、きっと生まれるに違いない。

 さてこの句、作者のお孫さんだろうか。学校からなかなか帰って来ないと思ったら、最近昆虫図鑑に嵌っていて、野原で昆虫採集に駆け回っていたのかもしれない。きっとすこやかに育っているのだ。

トウガラシ(唐辛子)

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