一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

2208  新緑や名もなき家事に暮れにけり  洋子  

2021年06月03日 | 

 「名もなき仕事」「名もなき家事」という言葉がある。職場や家庭で誰かがやらなければならないけれども、つまらなくてくだらない、取るに足らない仕事のことである。

 昔読んだ、カミュの「シシフォスの神話」か「星のギリシャ神話」の中に、悪行を重ねた神様(それでもやっぱり神様、というのが面白い)がゼウスの勘気に触れ、罰を受ける話がある。

 悪たれの神シシフォス(シーシュポス)は、大きな石を高い山の頂上まで押し上げるが、上げ終えた途端に大石は麓まで転げ落ちる。そして、その大石を再び山頂に上げて・・・・を永遠に続ける罰なのだ。神様は死なないのだから、正に永遠にである。

 しかしよく考えてみると、この罰は神話の中だけの話ではなく、私達人間の活動とよく似ている。例えば、お母さんが夫や子供のために毎日食事を作るが、あっという間に器だけが残り、洗って片付けねばならない炊事。洗濯、掃除などその繰り返しである「名もなき家事」。お父さんが会社に行って働くのも、どんな職業でも生きている限り、同じことの繰り返しなのである「名もなき仕事」しかし、人間は、いつか死ぬのだから、いつか止める時が来るのが、救いだ。

ホタルブクロ(蛍袋)

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