滴りて摩崖仏顔黒くしぬ 鞠
洛陽のやわらか色の夏椿
弥次郎兵衛今日は入梅か真夏日か 歩智
ジャズバンド梅雨前線押し返し
夏の川草舟追いしはぐれ雲 鯨児
明早し星もバタバタ店じまい
琺瑯質の卵を拾う青葉闇 薪
苺ソフトクリーム斜塔のように捧げ来る
百年を生きてみようかカブト虫 凛
カタツムリ世界は日の出を待っている
男には内緒の話しカンナ燃ゆ 洋子
くちなしの闇をつらぬき匂いけり
カルピスや氷解けて仲直り 光子
製氷機カランカランと弾き出し
スキップの少女の首輪うまごやし 稱子
コロナ禍や打つか打たぬか五月闇
クローバーロト6の抽選日 炎火
蕺(どく)草(だみ)やワクチンの跡疼きおり
痩せたかと勘違わせる古水着 沙会
今日も又氷のれんの店の奥
梅雨深む空黒ければ海黒し パピ
夏来る六十代は若手なり
接種済み出かけたくなる梅雨晴間 さくら
目つむれば在所の山河かき氷 〃
女子校の中庭埋める白詰草 豊春
梅雨の駅群に際立つノーマスク
風により完熟梅が路地に落ち 余白
父の日を祝して鳴ける猫がいる
梅雨空の野鳥と共に南無唱え 黄玉
涼しげやスイカ金魚に氷水
早苗田のさざなみ静か朝日揺る イヨ
あじさいや色冴え渡り雨止まず
手の平に青き光の恋蛍 雲水
大ミサ曲毛虫も垂れて聞いてをり
ジャーマンアイリス