浄土真宗の「妙なる信者」のことを書いた「妙好人伝」という本があって、その中に「因幡の源左」という実に面白い人物の話がある。因幡(いなば)は、今の鳥取地方をいう。
村の者が飼っている手に負えない荒れ牛がいるのだが、源左に預けると見事によく働くおとなしい牛になったそうだ。
因幡では、牛のことを「デン」と言うらしく、源左も「デンよ、デンよ」と呼びかけていたそうだ。
この話から、我が家の2匹目の犬に「デン」と名付けた。まだ1才半のやんちゃ者である。デンも野良犬の子だったのを引き取った。
さて、昼間の気温が嘘のように下がり、ヒグラシが鳴き出した。木々に囲まれた夕闇迫るテラスで、歳時記片手にビールを飲み始める。
傍には、散歩を終え食事の済んだ2匹の犬が寝そべっている。これをこの世の浄土と呼んでもおかしくはないだろう。比較すべきあの世の浄土など、知らないし知るべくもないのだから。
エノコログサ(犬ころ草)、猫じゃらし、とも