1658回 「有るような無いような」
中秋の名月を書き逃してしまいました。でも、家族でちゃんとお月見はしましたよ。望遠鏡で覗くと、月の表面の模様がくっきりと見えて、…実は味気なくなってしまいました。殺風景と...
今年の名月はずいぶん早くに過ぎましたね。
ぽやっとしている内に、味わうことなく過ぎてしまいました。
当然のように月見団子を買ったり、賞味したり、全くなく過ぎてしまいました。
あとは明日のお彼岸に、お供えのおはぎなど作るぐらいです。
この時期のおはぎというと、思い出すのが里芋を入れた郷土食「○○餅」、里の祖母が作ってくれました。
丁度里へ遊びに行っていた時の事です。
この時期のこの土地の名物だからと、祖母が私に作ってあげるというので、特にどうと思う事も無く食べる事が好きな私はうんうん、といった調子でした。
そこでふと祖母曰く、
「おはぎに里芋が入っているって、嫌じゃない?」
ちょっと、内心思い当たるものがありながら、「そんな事ないけど」
と答えた私でした。
「美味しいよね」
「おいしい、美味しい」
二人でそんなことを言いながら、
「御餅に里芋を混ぜるのが嫌だという人がいたものだから」と祖母。
これも何となく合点がいく私でしたが、黙っていました。
「美味しいよね」
「美味しい、美味しい」
そんな話の流れで、ふと私も
「お祖母ちゃんは、その御餅好きなの?」
ここで、祖母も黙
「美味しいよね」
「美味しい、美味しい」
間があって、祖母曰く
「本当はあんた好きじゃないんじゃない?」
「好きか聞いたら黙っていただろ。」
この問いかけには、苦しい思いがするのでした。
「お祖母ちゃんだって、本当は好きじゃないんじゃない?」
黙
「なんでそんなことを、美味しいでしょ?」
「美味しい、美味しい」
「美味しい…」
段々と、言葉少なになって行く祖母と孫。
そして、祖母は「この土地のこの時期の名物だから」
と、背を向けるとおはぎの準備にかかるのでした。
苦しい問いと答え、世の中には付き合いというものがあるものです。
過去も、来年も、再来年も…そうでしょうね。