そこで、私は思い切って目を上へと転じてみる事にしました。空の雲、少し灰色にくすんだ雲が薄くなり淡い水色から空色へと青味が増すと、そこには太陽から続く光の矢の先が見え眩く目を突き始めました。側面から私の瞳に入り広がる光は、その発射地点にある目の眩む激しい塊の存在を兆しながら、私が向く空中部分にまだ凛とした眩さで届き、その鏃を大気に解き放ち溶け込んで行きます。
私は覚悟して、恐る恐る日差しの本体に目を向けてみます。その瞬間、てらてらと、煌々と、光を放つ太陽が目に入りました。が、太陽は元々裸眼で凝視するには不可能な光源です。私は目を細めて、先程私の瞳を射た眩しさの正体をこの時確りと確認しました。想像通りそれは太陽だったのです。今春の到来と共に日増しに暖かさが増すと喜んだ、何の変哲もない太陽なのに、今日のこの日にこんな酷い目に遭わされたのだと、その強烈な眩しさに驚愕するのでした。
私は酷い目に遭わされた事で憎々しく、反発しながら怒りを込めて太陽を睨んでみます。が、やはり太陽の光には勝てないのでした。直ぐに直接見る事を止めて視線を落とし、代わりに手を上げて目の高さまで持ってくると、手の甲に当たる太陽の光を眺めてみます。肌に映る光は明るくそして暖かです。これが正にお日様の光なのだと私は感じました。腕を覆う袖を捲り上げると、直接腕にもお日様を当ててみます。直ぐにホカホカとした温もりを光の当たる部分に確かに感じ取る事が出来ました。
『暖かい、お日様ってやっぱりいいな。』
そう感じると、瞬時に私の中の太陽への嫌悪が溶解し、心中湧き上がる温もりは好意へと変換するのでした。日差しが届く明るい所は暖かい。お日様は暖かい。冷たい雪よりよっぽどいいものだ、お日様っていいな。私は太陽が好きだ。大好きだ。そう心底思うのでした。
私は再び目の上に手を翳してお日様を見上げてみました。目を突く光に注意しながらそれとなく太陽を眺めてみます。煌々と輝き、丸く光をその身に纏わりつかせて、薄く朱色を帯び始めているらしい黄金(おうごん)の光。黄金色(こがねいろ)の太陽は黄金(おうごん)の様にこの世の中の宝物だと感じるのでした。