「お前が本気なら、お前の事を断る男なんてこの世には居ないぞ。」
「うん、きっと居ないな。」そう兄は太鼓判を押してやるのでした。その言葉に彼女はにっこり笑うと目を輝かせました。「本当?」喜々として兄に問いかけました。「本当にそう思う?、兄さん。」そう繰り返し尋ねてみました。
「まぁ、確かだな。」実際、お前程の美人はこの辺には確かにいないしな、多分近隣はもちろん、全国でもそうは居ないだろう。兄はここぞとばかりに力強く頷いて見せました。
そう太鼓判を押されてみると、彼女はこの近辺で資産家に当たる家より、全国という広い世界の中には、これから先の未来に出会う人達の中には、もっと大きな資産家達がいるような気がして来ました。それは不思議な予感のような物に彼女には思えました。また、先程の兄の可笑しそうな吹き出し方も気になりました。彼女は兄がぷっと吹き出した笑いを確りと耳にとらえていたのです。
『私の悩みは笑われるような小さな事で、ひょっとしたら、あの子の家は実際にはそんなに大した事の無い資産家なのかもしれない。』そう思えて来ました。私が未だ見ていない全国の津々浦々、もっと大きくて広い世界の隅々の何処かに、とても素敵な場所があって…。絵本や写真でしか見た事の無い風光明媚な世界を思い浮かべると、彼女の目にはその夢のような場所が浮かんで来るようでした。
『そこには、きっとあの子の家よりもっともっと大金持ちで、百万長者の様に大きなお城や御殿の様な家に住んでいる人がいるんだわ。そして美人の私に合うようなハンサムな人がいて、王子様の様な生活をしているんだわ。将来、きっと私はそんな男の子に出会って、気に入ってお嫁に貰ってもらえるんだわ。そうすると私はその御殿の様なお家のお姫様になるんだわ。』そう考えると、「大したこと無いな。」彼女は呟きました。
今まで彼女が悩んでいたご近所の資産家の坊ちゃんの笑顔と、彼の家を思い浮かべてみると、自分の夢と現実のギャップに彼女は急にげんなりしました。そこで、彼女は振り向いて年下の従妹を眺めました。