Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダンスは愉し 21

2019-02-14 17:21:47 | 日記

 「別にあの人は彼氏じゃ無いんです。」

それに喧嘩した訳じゃ無くて…。と、鈴舞さんはいい淀みました。相手には彼女がいる、という事まで言ってよい物かどうかと迷ったのです。そんな鈴舞さんの答えと狼狽ぶりを真っ直ぐに見て取ると、レジのお兄さんは言いました。

「じゃあ僕が君の彼氏になってもいいわけだ。」

僕と付き合ってみないか?と、如何にも真面目そうな表情で、明るく笑った瞳で語り掛けられると、鈴舞さんは行き成りの事で驚きました。

 最初は断ろうと考えた鈴舞さんでした。目の前の彼が、同じ大学の校内でテキストやノートなどを持って歩いているのを、彼女は何度か目にした事が有るのですが、殆ど知らない相手です。同じ大学の学生なのだという事は分かっていました。ここでアルバイトしているのだろうと前々から思ってはいました。けれど、自分とは無関係な人と今まで思っていた人です。しかも客とレジ係としての会話しかしたことが有りませんでした。

『困ったな。』

そう思いながら、ふと、鈴舞さんの脳裏には大ちゃんの笑顔が浮かびました。『大ちゃんだって彼女がいるんだし、…』この機会に私も思い切って彼氏を作ってみよう。そう思うと、鈴舞さんはふん!とばかりに決意しました。

「お付き合いします。」

と、レジにいる彼に、彼女はハッキリと交際承諾の返事をするのでした。


ダンスは愉し 20

2019-02-14 16:59:41 | 日記

 『オンリーユーか。』

鈴舞さんは歌じゃああるまいしと呟きながら、急に幼馴染の大さんが疎遠になってしまった事が、何となく恨みがましく思われるのですが、彼女だけに誠実なんだと思うと、そんな大さんの事を異性として好ましくも思うのでした。

『まっ、今更勿体なかったかなと思っても仕様が無い。』

そう思う鈴舞さんです。大ちゃんの彼女ってどんな人なんだろう?そうあれこれと幼馴染の彼女の事を想像してみたりするのでした。

 そんな事があってから半月した頃、鈴舞さんは大学の帰り、駅の横にある馴染みのパン屋さんへと入って行きました。大ちゃんとも連立って、少し前まではよく一緒にここでパンを買ったものでした。あの頃はよかったなぁと思うと、彼女は何だかむしゃくしゃしてきます。

 彼女が大さんに言いたい放題言っていた頃は、それなりに大学の学業や人間関係の不満を彼にぶつける事で、よい憂さ晴らしが出来ていたのでした。『しかし今は怒りのぶつける先も無い!』そう思うと『ああ、むしゃくしゃする!』鈴舞さんは目に付いた甘いパンを5、6個、続けざまに無造作にトレイに取りレジへと向かいました。

 「おや、凄い食慾だね。」

太るよ。とレジのお兄さんが明るく朗らかに彼女に声を掛けました。

「何時も一緒の彼氏は?喧嘩でもしたのかな。」

こう尋ねられた鈴舞さんは、意外な質問に驚きの色が隠せませんでした。